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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第40話:アンとセリカ

「鶏の香草炙り焼きを定食で四つ、ミントティーも四つ」


 キャラの濃い見た目幼女店主ペペさんの構えるオリジナルスキル屋で最強魔法『デトネートストライク』を購入したあと、食堂に戻ってきた。

 そろそろお昼だからね。

 色々あってお腹がすいてしまった。

 角帽のギルド総合受付ポロックさんのアドバイスに従って、絶品だという鶏の香草炙り焼きを注文する。


「あいよっ。精霊使いのお姉ちゃん、ギルドの食堂は初めてだろ? 枝豆と揚げポテトの盛り合わせ、サービスしとくよ」

「ありがとう、大将愛してる!」


 やーサービスいいな。

 照れ笑いする食堂の大将が教えてくれる。


「今はまだ時間が早めだから人少ないけどな、夜になるとベテラン冒険者が多く来る。いろんな話が聞けるぜ」


 酒場を兼ねてるんだったっけな。

 あたしは夜は早く寝る派だけど、機会があったら夜も来てみよう。

 席に料理来たぞ。


「新しき仲間、ダンテの加入にかんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」


 さすが冒険者相手の食堂、お値段手頃でボリュームも多い。

 ギルド楽しくていいところだなー。

 でも人嫌いの精霊達にとってはどうだったろう?


「あんた達、疲れなかった?」

「大丈夫ですよ」

「喋ってたのはほぼ姐御でやすし」

「ノープロブレムね。一人でいた時よりグッドタイムね」

「そーか、よかった。あっ、炙り焼きの骨付き肉美味っ!」


 食べ進めながら、何となくダンテの話になった。

 ダンテは魔物のあまり強くない、おそらくは西方の自由開拓民集落の多い地区あたりにいた精霊らしい。

 時には得意の魔法で魔物を狩りつつ旅してる内に、どこぞの『アトラスの冒険者』の転送魔法陣を見つけ、ギルドまで来たようだ。


 ダンテもおかしなことやっとる。

 わけもわからず怪しい魔法陣なんか踏むな。


「バット、換金するのにも人間とネゴシエートしなきゃいけないし、行き詰まってたね」

「まーわかる」


 精霊のコミュ障にも困ったもんだ。

 いや、あたしとは普通に話せるし、コミュ障とは違うのか?


「これからはあたしがいるから、喋る役は任せなさい」

「オーケーボス、よろしくね」


 おいこらアトム、ボス呼びに反応すんな。

 姐御呼びだって大概なんだぞ。


「先ほどのスキル屋さんですけれども」

「うん。クララはどう思う?」

「大変な異才だと思います。単なるスキルのアレンジではなく、聞いたこともないような魔法を独力で作成するなんて考えられないです」

「クララから見てもヤバい人か」


 クララは魔法を構成するケイオスワードの文法がある程度わかる子だ。

 転送魔法陣や転移石碑を見て、理屈を理解できるほど。

 そのクララをして、あの見た目幼女魔道士ペペさんの魔法作成はあり得んらしい。


「一番考えられんのは、その最強魔法のお値段が『ファイアーボール』と同じってことだよなー」

「効果は期待できるんでやすかね?」

「期待できないことは確定なんじゃなかったっけ? ま、ともかく海で試し撃ちしてみようよ」

「オーケー、ボス」


 スキル屋ペペさんのキャラには今後も要注目。


「ふいーごちそうさまっ!」


 食べ終わってまったりしてた頃、隣のテーブルの話が漏れ聞こえてくる。

 いや、あたしと同じくらいの年齢の女の子二人組だから、目立ってはいたのだ。

 聞き耳を立ててみる。


「……お姿がわからないのは……」

「……勇者様……きっと凛々しい……」

「……才能……『スキルハッカー』……」


 スキルハッカー?


「何の話?」

「「えっ、誰っ?」」


 面白そうだから割り込んでみた。

 ジスイスマイコミュニケーションメソッド。

 価値観は全てに優先する。


「あたしは精霊使いユーラシア一五歳だよ。以後よろしく。今『スキルハッカー』って単語が聞こえたからさ。話に混ぜてよ」

「「う、うん」」


 背の高い赤毛ショートの、革の胸当てを装備した一見中性的な女の子がアーチャーのアン。

 白魔法も使えるそうな。

 黒毛三つ編みの小柄な子がセリカ。

 濃い緑のとんがり帽とローブ姿のいかにもな魔法使いで、雷と氷の二系統を使えるとのこと。

 後衛二人のコンビって珍しいな。


「二人とも一四歳なんだ。若くない?」


 つってもあたしと一歳しか変わらんけど。

 アンが言う。


「わたし達は同じ村カトマスの出で、一四歳で成人なんだ。レイノス外町で『アトラスの冒険者』を募集してることは、村に出入りしてた商人に聞いて知ってたから」


 セリカが続ける。


「我らは冒険者たるべくレイノスを目指し、ドリフターズギルドに至ったのです」

「レイノスも言われてるほど面倒な町じゃないしな、特に外町は」


 ギルドってレイノスに近いのか。

 港町レイノスから西へ強歩一日弱、自由開拓民集落群への街道の基点となる村カトマス。

 土地柄から護衛や魔物退治など、冒険者の需要が多いのだそうだ。

 自然と村には武術を身につけさせたり、魔法を使える者を尊んだりする習慣ができた。

 二人は魔法の才能からかなり期待されていたらしい。


「自分で目指して『アトラスの冒険者』になる手段もあるのか。知らなかったよ。あれ? じゃあ『地図の石板』はどうなるの?」


 アンとセリカが顔を見合わせ、悔しそうに言う。


「わたし達はパーティーメンバーにはなれても、正式な『アトラスの冒険者』にはなれないんだ……」

「他の冒険者の好意で臨時にパーティーに入れてもらい、糊口をしのいでおりますが、やはり主は選びたく……」

「最近、冒険者候補に二人のとんでもない固有能力の持ち主が入ったという噂が流れたのだ。『精霊使い』と『スキルハッカー』、『精霊使い』とはユーラシアさんのことだな? 女性だとは知らなかったが」

「うん」


 まあ一目瞭然だ。

 名乗ったし。


「精霊使い様は精霊をパーティーメンバーにするだろうと言われていたんだ」

「合ってるけど、そーゆー情報って結構気になるもん?」


 チュートリアルルームからか、あるいは獣人冒険者ゲレゲレさんが喋ったんだろう。


「だからスキルハッカー様に仲間にしていただこうと……」

「してもらえばいいじゃん」

「「えっ?」」


 何驚いてるんだよ。

 全然問題ないだろーが。


「し、しかし、そんなすごい固有能力持ちにわたし達なんかが釣り合うか……」

「我らなどごく平凡な……」


 いやいや、一四歳で魔法使えてバリバリ戦えるあんたらは十分ツワモノだから。

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