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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第39話:最強の攻撃魔法を格安で買ってみた

 ドリフターズギルドのお店ゾーンにある、最後の店の前に立つ。

 この店を最後にしたのは理由がある。

 おそらく濃いのだ、店主のキャラが。


 ぞろっとした紫のローブに同色のつば広の帽子。

 ジュエルズアミュレットであろう、二重にかけたネックレスと数個の指輪。

 背中側の壁に大きくて頑丈そうな杖が立てかけてある。

 そしてどういうわけだか、店主は机に顔を伏せている。


「ニワトコの杖ですね、大魔法使いに好まれる木です」


 クララがそっと教えてくれた。

 大魔法使いか、ふーむ?


「たのもう!」

「ふあっ?」


 やはり寝ていたか。

 突っ伏していた店主が飛び起きる。

 薄緑の前髪は変な跳ね方してるし頬っぺたに横シワついてるし、顎のあたりまでよだれでガビガビだぞ。

 本来魔女らしさを強調すべき真っ赤な口紅も、幼女のいたずらみたいにべろーんとなってるし。


 こんなところに店出すくらいだから、結構な年齢なのかもしれない。

 が、丸顔の童顔なので、一〇歳以下と言われても違和感なく信じちゃうわ。


「ここは何のお店かな?」

「わ、私が作ったオリジナルスキルを売ってるの。特に魔法とか。でもお客さんあまり来なくて……」

「へー、オリジナルのスキルか」


 クララが小さな目を見開いて驚いている。

 あたしもアレクからの聞きかじりだが、オリジナルの魔法がすごいことはわかる。

 ケイオスワードの組み立てを理解することすら、並みの魔法使いには困難だという。

 オリジナルのスキルを作るなんて、どれほどの研鑽が必要だろうか?

 しかも冒険者相手に売るからには、大掛かりな仕掛けが必要なく即座に効果の出る、効率のいいスキルのはずだ。

 そんなことできる魔道士なんて、多分世界に何人もいないぞ?


「お客さんが来ないのは看板がないからじゃない?」

「そ、そっかぁ」


 初めてそこに気付いたようだ。

 大丈夫かな、この人。


「で? どんなスキルを売ってるの?」

「今、世界最強の攻撃魔法を、たったの一〇〇〇ゴールドで御奉仕提供中なの。どう、覚えていかない?」

「どーして最強の攻撃魔法が『ファイアーボール』と同じ値段なんだよ! おっかしいだろ!」

「だ、だって売れないんだもの……」

「今までに一つも?」

「今までに一つも」


 おかしいな?

 ギルドが認めてるから、ここに店を構えてるんでしょ?

 世界最強は大げさにしても、丸っきりインチキなんてことはないだろう。

 威力のある魔法が格安なのにどーして売れないんだ?


「その魔法について、話聞かせてくれる?」

「う、うん。魔力を凝縮させて、限界に達したところで弾けさせる無属性魔法なの。射程がすごく長くて、見かけは爆発のように見える」


 理屈は『マジックボム』に似てるな。

 問題なさそうなんだけど?


「威力は低レベルの者が使っても宮殿を吹き飛ばすくらい」

「え?」


 大真面目で言ってるみたいだな。

 ヤバくね?

 ダンジョンで使ったら崩れちゃうよね?

 フィールドでも普通の間合いだと味方全員巻き込むんじゃ?

 売れない理由は理解した。


「使用コストが、残りマジックポイント全てとヒットポイントのほとんど」


 ひどい、一発撃ったらお終いか。

 探索してアイテムや素材を回収するのがメインの冒険者にはまるで不必要だ。

 いや、誰にとっても不必要な気もするけど。


「習得条件は三系統以上の魔法が使える固有能力」

「そんなもん売れるかっ! ほとんど誰も覚えられんわ!」

「ええっ! お願い、買ってくれないと次の魔法を開発できないの!」

「よし、買った!」

「「「「え?」」」」


 スキル屋さんとうちの精霊達の声がハモった。


「い、いいの?」

「効果にウソ偽りはないんでしょ?」

「ないけど……」

「じゃあ買う」


 あたしはキッパリと宣言した。

 ボソボソとアトムが聞いてくる。


「姐御、何か考えがおありで?」

「強いて言えばロマンだから?」

「そうなのっ! 魔法はアートでロマンでドリームなのっ!」


 ものすごく食いついてきたわ。

 何だこの人。


「い、いえ、実用性がないってことはないのよ? ほら、ボス戦のとどめとか」

「言い訳はいらんとゆーのに。この際実用性はどうでもいいわ。うちのパーティーは最大最強の魔法を使える、それでいい。格好いい」


 クララが笑いながらこそっと言う。


「ユー様はネタ大好きですよね」

「ネタゆーな。大好物だけれども」


 というかこの手の超大技は、実際に使う機会がなくても、使えるというだけで脅しにも抑止力にもなる。

 持ってて損にはならないと踏んだ。

 一〇〇〇ゴールドだしな。


「本当にありがとおおおお!」

「いいのいいの、これで魔法開発続けられるんでしょ? よかったね」


 何でたった一〇〇〇ゴールド程度のことで、魔法の開発が続けられる続けられんの話になるのか。

 サッパリわけがわからん。

 この人一種の天才なんだろうな。

 ネジぶっ飛んでるけど。

 だとしたら今後どんな魔法を生み出すのか、興味があるじゃないか。


「覚えられるのは、オレンジの子ね? これ、どうぞ。『デトネートストライク』のスキルスクロールよ」


 ダンテが受け取り、封を切って開く。

 魔力が高まってダンテに宿った。


「これでいいわ。試し撃ちするときは、人のいない場所で空に放つとかにしてね。くれぐれも場所に気をつけて」

「うん、わかった。さて、御飯食べて帰ろうか」

「あ、ちょっと待って」


 スキル屋さんに呼び止められる。

 何かモジモジしてるぞ?


「おめでとうございますっ! あなた達は、この先私の開発するスキルを買う権利を獲得いたしましたっ!」

「ずうずうしくね?」


 いや、今みたいなノリは嫌いじゃないけど。


「あ、あのね? 私も気が乗らない仕事はしたくないの。あなた達は初めて私のスキルを買ってくれたから……だから……」

「初めてなのかよ」


 つまりこういうことか。


「だから近い将来、世界を股にかけた活躍で聖女となり、吟遊詩人に賛美されて伝説となるあたし達のために、ぜひスキルを作りたいということだね?」

「え……?」


 あたしは年齢不詳の魔女をじっと見つめ、微笑む。


「次も期待している。あんたの比類ない才能が、あたし達が習得するに相応しいスキルを完成させることを」

「わがっだあああ、がんばゆうううう!」

「あたしの名はユーラシア、覚えておいてね」

「わだじはペペ」


 はいはい、泣かない泣かない。

 じゃあね、またね。

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