第37話:散光の精霊ダンテ
ドリフターズギルド入口のゲートを潜る。
ふむ、正面が依頼受付所だったな。
眼鏡のクールビューティーなお姉さんに会釈だけしておく。
左手にある階段の下が『初心者の館』か。
何でも研究者の集まりだという。
どーして『初心者の館』って名前なのか知らんけど、専門的な情報が得られるかもしれないな。
食べ物を差し入れするといいらしいので、ここは後日だ。
「ユー様、まずは奥の食堂にいるというオレンジ髪の精霊にコンタクトを取るんですよね?」
「そーだね。冒険者希望という話だしな」
仲間になってくれればこんなに嬉しいことはない。
右手奥お店ゾーンへ歩を進める。
朝だからか、あんまり人の数は多くない。
精霊連れだからだろう、少し驚いたような顔をする人もいる。
まあ気にしない。
精霊のお披露目も目的の一つだからね。
お店ゾーンを通り過ぎて食堂へ。
オレンジ髪の目立つ男がこちらを見る。
この子が問題の精霊だな?
比較的細面で切れ長の目、おお、イケメンじゃないか。
早速話しかけてみる。
「君、精霊だよね? こんな人間ばかりのところ、居づらくない?」
「ユーは……『精霊の友』か!」
「ねえ、『精霊の友』ってのは何なの? この前も苔の洞窟で、ウツツにそー呼ばれた気がするけど」
「『精霊の友』とは、精霊と心通わすことのできる人間のことですぜ」
「ベリーレアね。少なくとも今、このギルド内には他にいないね」
要するに精霊親和性の高い人間に対する、精霊側の呼び名ってことか。
でもこれってレアなのか?
灰の民は皆そうだけどなあ。
「あたしは人呼んで美少女精霊使いのユーラシアだよ」
「誰も呼んでいませんよ」
「これから呼ばれるんだったか。こっちの白い子が眩草の精霊クララ、そっちのごついのが剛石の精霊アトムね。まだ冒険者になって一三日目なんだ」
「ミーは、散光の精霊ダンテね」
「で、ダンテはどうしてギルドに?」
「心のままワールドを見て回りたくてね。もう、田舎にすっこんでるのはコリゴリね」
「よーくわかるぜ! あっしもそうだった。何かできねえのかって、いつもいつも思っていやした」
アトムが腕組みをして頷いている。
あたしも同じだ。
日常に変化や刺激をもたらすことのできる力が欲しかったから、チュートリアルルーム行きの転送魔法陣に身を委ねた。
しかし精霊にも案外そーゆー子が多いのか?
「冒険者を気取って飛び出してきたはいいが、まあ、ナイフ一つ満足に装備できない身ではベリーディフィカルトでね」
「どこからギルドに来たの?」
「アイドントノーね。マジックサークルね」
つまりどっかの『アトラスの冒険者』のギルド行き転送魔法陣を踏んだということらしい。
アナウンスがあるんだから、転送されちゃったのは自業自得だろ。
でもあんな怪しげな魔法陣に好んで入るのは、ダンテも変化に飢えてたんだろうなあ。
「事情はわかった。自己アピールよろしくお願いしまーす」
「ソーサリーにはちょっと自信があるね」
ほう、攻撃魔法が得意ってことか。
だから冒険者やりたいみたいなことを考えたんだろうな。
うちのパーティーに足りない属性だ。
いいぞいいぞ。
「あたし達の仲間にならない?」
「それはヤブサカでないね。でもユー達の事情くらい知りたいね」
クララと二人で冒険者を始めたこと。
人間を仲間に加える気がないこと。
トラップに引っかかってたアトムを助け、仲間にしたこと。
精霊でも使える装備品パワーカードのこと。
「『アトラスの冒険者』……パワーカード……インタレスティングだね。うん、ミーもパーティーに加えてよ」
精霊ゲットだぜ!
やったね!
「よし、今からあんたも仲間だ。よろしく、ダンテ」
握手を交わし、テーブルを囲んで腰掛ける。
一番知りたかったことについて聞いてみた。
「ダンテはどんな魔法が得意なの?」
「ファイア、アイス、サンダーね」
「マジかよ、三系統も?」
つまり最低でも『火魔法』『氷魔法』『雷魔法』の固有能力を持っているということか。
クララともアトムとも得意な魔法属性が被らないのはラッキーだ。
クララが驚き、感嘆の声を上げる。
「とても心強いですねえ。戦術のバリエーションがかなり豊富になります」
あたしらのパーティーに足りなかったのは攻撃魔法だ。
ダンテが全体攻撃魔法でも覚えてくれれば強力な武器になる。
「そーだ、これに手を当ててみてくれる?」
使えるものは使ってみないと。
先ほど手に入れたギルドカードを起動し、パネルに手を触れさせる。
「ふむふむ、魔法力と最大マジックポイントがかなり高い。典型的な魔法使いタイプだな」
ギルカでは固有能力までは表示されないのか。
あれ、敏捷性はあたしより高いんじゃね?
先制で攻撃魔法を撃てるのはいいな。
一方で攻撃力・防御力・最大ヒットポイントが低い。
どう見ても後衛魔法職だな。
攻撃力は必要ないとして、防御力・最大ヒットポイントの低さはうまくカバーしないといけない。
もっともフォーメーション的にダンテは最後衛になるだろうから、そう攻撃食らったりはしないだろうけど。
一通りスペックを確認したところで、アトムが切り出す。
「姐御、これからの方針どうしやす?」
「どうもこうも。とにかく素材集めてパワーカードの数を揃えないことには、身動き取れないでしょ」
次のクエスト頼みだわ。
クララがコクコク頷いている。
「素材? ああ、ミーが今まで集めた素材とアイテムがメニーメニーあるね。これらをプレゼントするね」
ダンテが足元に置いてあった大きな麻袋をよこした。
中を見ると、素材だけでもかなりの数があるじゃないか!
「いいの? こんなにもらっちゃって」
「モチロンね」
「これならパワーカードを引き換えできやすぜ!」
「新しい素材もあります。おそらく今までになかったカードも交換対象になると思いますよ」
「でもまだダンテは一枚もパワーカード持ってないんでしょ? じゃあダンテをまず、強化しないとね」
家に戻ったら各自のカードを再編成して、足りない分をアルアさん家で引き換えだな。
いや、アルアさんとこで交換できるようになったカードを確認してから、編成を考える方がいいか。
「よし、じゃあ今日はあと依頼受付所と各種お店を覗いて、いい時間になったら御飯食べて帰ろう」
「「「賛成!」」」
戦闘メンバー四人が揃いました。
段々冒険者らしくなっていきます。




