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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第36話:角帽の受付ポロックさん

「こんにちは、ニューフェイスだね? ここはドリフターズギルド。『アトラスの冒険者』のための、交流と情報交換の場さ。台から降りてくれるかな? そいつが転送座標になってるんだよ」

「こんにちはー。ようやくギルドに到着だよ。やったぜ!」


 あたしが台から降りるとすぐクララが、次いでアトムが転移してきた。

 角帽の大男が興奮気味だ。


「おお、精霊か? 『精霊使い』が冒険者になったと聞いてはいたが、君のことだったのか。チャーミングな女の子とは知らなかったよ」


 嫌だなあ、チャーミングだなんて。

 本当のことをわざわざ言わなくても。

 できればもっと大きな声でお願いします。


「もうすぐあたしなんかよりすごい子が来るよ。『スキルハッカー』の固有能力を持つ子」


 角帽の男はちょっと驚いたようだ。


「ほう? 『スキルハッカー』の能力者が入ったことを知ってるのか。ギルドは初めてなんだろう? チャーミングなだけじゃなくて情報収集能力がすごいね」


 謎のチャーミング押しだなあ。

 美しさは罪。


「たまたまチュートリアルルームで会ったの。あたしより一つ年下の男の子だよ」

「そうか、ありがとう。俺はギルドの総合受付を務めているポロックだ。よろしくね」

「あたしはユーラシア。こちらがクララとアトムね。よろしく」

「ちょっとこちらへ来てくれるかな? 何、簡単な身元の照会さ。このパネルに掌を開いて当ててくれるかい?」


 言われた通りに手を置く。

 ぺたっとな。

 チュートリアルルームにあった能力を見る装置と同じものかな?

 やはり文字が浮かんでくる。


「はい、ユーラシア・ライムさん、確認しました。正式に『アトラスの冒険者』として登録します。こちらのカード持ってってね」


 正式に登録ってことは、今まで見習いだったのか。

 知らなかったぞ?


 もらったカードを弄りまわして眺める。

 パワーカードより少し大きいけどよく似てるな。

 あ、ブーンって唸って文字が出てきた。

 魔道の装置っぽいが?


「もう使いこなしてるのか。やるなあ」

「天性の才能が発揮されてしまったみたい」


 ポロックさんが苦笑する。


「これはギルドカード。略してギルカって皆呼んでいるよ。『アトラスの冒険者』の身分証であると同時に、ステータス値やレベルなども表示する。近くにいる他の冒険者との連携にも使える優れものなんだ。説明いらなかったみたいだけど、登録者であるユーラシアさんの魔力で起動する。細かい使い方は、メニューのマニュアルって欄から確認してね」


 便利なものがあるんだな。

 所持者の魔力で起動するところなど、仕組みまでパワーカードに似ている。

 ルーツは同じものなのかもしれない。


「これって仲間の能力は確認できないの?」

「所持者が起動して持ったまま、確認したい人にカードの真ん中を触らせれば見られるよ」


 ほうほう、あとでやってみよ。


「さて、ギルド内部の説明をしようか。入口正面が依頼窓口だ。直接冒険者を指定していないクエストを取り扱っているよ。アイテムを調達してくれとか魔物を倒してくれとか、そういう内容が多いかな。例えば調達だと、完全にこなせば店で売るより高い報酬がもらえるし、経験値にもなる。詳しいことは窓口で聞いてね」


 依頼をこなせるならお得ってことだな。


「左の階段下は『初心者の館』って呼ばれてる。本当は研究者の集まりなんだけど、皆暇してるから、話しかけりゃ色々ためになることを教えてくれるよ。それと……食べ物を差し入れると大歓迎してくれる人がいる。これ、豆知識ね」


 急に真顔になったポロックさんがおかしい。

 ひょっとして大事な情報なのかな?

 今度食べ物持ってきてみようか。


「入って右側は、武器・防具、消費アイテム、スキルなど各種のお店になっている。買い取りは専門店があるからそちらでね。面白いところでは掘り出し物屋ってのがある。いつも出店してるわけじゃないが、ほとんど市場に出ないようなものを売ってる時があるから狙い目だよ」


 パワーカードを売ってるなら買いたいところだが、まあムリか。

 アイテム買い取りは頻繁に使うかも。

 掘り出し物屋かあ……ビンボーな内は多分用がない。


「最後に一番右奥。酒場兼食堂になってるよ。冒険者の寛ぎの場所であり、情報交換の場でもある。精霊使いの君には無用だろうけど、仲間探しもだな。それから……これは秘密なんだが」


 ポロックさんが声を潜めて耳打ちしてくる。


「食堂のメニューにある『鶏の香草炙り焼き』、あれ実はニワトリじゃなくて洞窟コウモリなんだ。絶品だよ」

「おおう、何げに今日一番重要な情報だったな。ポロックさん、ありがとう」

「ハハハ。ところで君達どこからここへ来たのかな?」

「ドワーフのアルアさん家の近くの転移石碑からだよ」

「ああ、なるほど。精霊使いだものな。パワーカード工房のクエストが回されてたのか。ということは、ホームからギルドへ直接繋がる転送魔法陣は持ってないのかな?」

「ないの。ここへ来る度にアルアさんに迷惑かけるのが、ひっじょーに心苦しいなと思ってたところで」


 ひょっとして海岸に行けば次の『地図の石板』が来てたのかな?

 でも確実にギルドに来たかったし。

 何かを取り出し、いたずらっぽく笑うポロックさん。


「そんなあなたにこれ、ギルドへの『地図の石板』!」

「まあすごい、でもお高いんでしょう?」

「何と! 実はタダなんです!」


 しばし笑い合い、石板を受け取った。


「これで主な説明は終わりかな。ここで一つ、依頼があるんだ」

「依頼? 何だろ?」


 内部の見物しようと思ったのに、いきなりじゃないか。


「奥の食堂に精霊がいる。どうも冒険者希望らしいんだが、ユーラシアさんみたいな特殊な能力持ちでもないと、なかなか精霊と腹を割って話すなんてできないだろう? ちょっと雰囲気が悪くてね、何とかしてもらいたいんだ」


 冒険者希望の精霊だってよ。

 あたしはアトムに向かってニッとした。


「うん、任せて」

「助かる。オレンジ髪で、外見はほぼノーマル人と変わらないやつだ。クエスト扱いにしておくからね。依頼料は出ないが、ボーナス経験値は色つけとくよ」

「経験値は大好物でーす」


 そのオレンジ髪の精霊と話をするのが最初にやるべきことだな。

 アトムに続いてまた仲間が増えちゃう?

 うまくいくといいなあ。

 もうギルドはいいところだと見切った。

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