第35話:ドリフターズギルドへ行ってみる
「いただきまーす」
夕食のメインは、庭の作物に干し肉・卵・ステータスアップの薬草を加えた具だくさんスープなり。
おかわりもたっぷり。
今日はかなり頑張ったから、お腹減っちゃったんだよ。
アトムが嬉しそうに言う。
「いやあ、具体的にパワーカードが手に入る道筋が見えるとコーフンすんなあ」
「まあねえ」
アトムはパワーカードを求めてダンジョンに入ったくらいだもんな。
いや、実はあたしもワクワクしてるんだよ。
まだ交換のできないパワーカードの中にだって、魅力的なのがたくさんあるし。
「これでふつーに冒険者やっていけば、手持ちのパワーカードを増やせることが確定だね。装備についての不安が、ようやく完全に解消されました。おめでとう!」
「交換限定一枚のカードの中には、信じられないような効果のものもありましたよ。おそらく製作にレア素材が必要なものと思われますけれども」
レア素材が手に入るかは運もあるだろう。
しかし地道に素材を集めてさえいれば、少なくともパワーカードの装備枠一杯までは強くなれる。
大分気が楽になったなー。
「いろんなクエストへ行けばいろんな素材が手に入って、いろんなカードをゲットすることができやすぜ」
「とにかくクエストだ!」
クエストこなせば当然レベルアップで強くなれるしな。
願ったりかなったりだ。
クララがしみじみと言う。
「アルアさんでもパワーカードでわからないことがあるんですねえ」
「わけのわからんほどすんごいカードもあるかもしれないね。逆に素性の怪しいカードは気をつけないと」
「気をつけるとは、どういうことで?」
「装備するとバッドステートがつく、起動をオフにできない呪いのカードなんてのがもしあったらどうする?」
「げ、くわばらくわばら」
装備者も製作者も少ないパワーカードに、そんなもんがあるとは思えないけどな。
「あたしはアルアさんの婆ちゃんのカード、見てみたいなあ。あの何事も笑い飛ばしそうなアルアさんに発想がおかしいと言わしめたくらいだからね。相当ぶっ飛んだカードなんだろうねえ」
「ユー様はネタっぽいの大好きですよね」
「あはは。ネタ大好きだよ。でもあたしの好きなのはコクがあってキレがある、かつまろやかなネタだよ」
「何でやすか、それ?」
いいね、アトムの固有能力(笑)はツッコミかな。
才能があるなら花開かせてあげるのが美少女精霊使いの使命。
面白おかしくやっていこうよ。
……私がエンタメ成分ばかりで構成されているわけじゃないよ、念のため。
「さて、明日は例の転移石碑からギルドに行きまーす。多分人間が多くて、聞き込みやアイテムの売買がメインになると思う。あんた達精霊にはツラいだろうけど、あたしについて来てくれればいいからね」
「はい」「ようがす」
あたしは灰の民だからピンとこないが、普通は精霊って滅多に見るものじゃないらしい。
でもギルドの職員や他の冒険者達も、精霊を見慣れて欲しいんだよねえ。
ギルドにはしょっちゅう行くことになると思うから、互いの理解のために。
ギルドと言うからには、まさか危険のある場所じゃあるまい。
とにかく情報が欲しいので、楽しく情報交換できれば願ったりかなったり。
まだまだ新米冒険者にはわからんことが多い。
明日はあたしがうまく立ち回らないとな。
「ごちそうさまっ。あたしもう寝るね」
「おやすみなさい」「おやすみなせえやし」
今日は張り切って働いた。
安心できる材料もできた。
今晩はいい夢が見られそうだ。
◇
――――――――――一三日目。
フイィィーンシュパパパッ。
アルアさん家にやって来た。
「おっはよーございまーす! お邪魔してごめんなさい。ドリフターズギルドへ行ってきまーす!」
「あいよ、アンタは元気だね。行っておいで」
アルアさんに一言断ってから出かける。
ギルドへはこれからもちょくちょく世話になるだろーに、一々他人の家を経由しなければならないのは何とかならんものか。
気まずいだろーが。
戦闘を避けて、急ぎ転移石碑のところまで来た。
大きな黒い平石に文様が描かれており、やはり魔力を感じる。
「あっ、この術式はおそらく族長が組んだものですよ」
「デス爺が?」
見ただけでわかるんだ?
さすがクララ。
灰の民族長であるデス爺は、ドーラ大陸一の転移術師でもある。
ここまで出張してきて転移石碑を設置したのか。
いや、コルム兄はデス爺の紹介でアルアさんに弟子入りしてるんだったな。
デス爺とアルアさんの親交はかなり深いみたい。
「周辺から魔力を取り入れて活用することに関しては、『アトラスの冒険者』の転送魔法陣と同じですね」
デス爺が転移術のオーソリティであることは知ってたが、こんな恒久的な装置も作れるんだな。
『アトラスの冒険者』は遠隔で転送魔法陣設置したり、理解を超えたテクノロジーを見せてくるけど、この転移石碑は全然わからんことはない。
多分埋まってるところから吸い上げた魔力を利用して、転移のエネルギーにしてるんでしょ?
アトムが感心したように言う。
「姐御、この石メチャクチャ硬いやつですぜ。こいつをこんだけ加工できるのはてえしたもんだ」
「加工はきっとアルアさんの担当だろうな」
「それに基部のところの根のような構造。魔力を集めるためだと思いやすが、地脈と細かく通じていやす」
大地の魔力を利用するのはデス爺の技術じゃないだろう。
だって灰の民の村にこんな便利設備なんかないもん。
とゆーことはこの転移石碑設置にはデス爺の転移術に加え、おそらくはドワーフ(多分アルアさん)の石工技術と、誰か知らないけど大地の魔力活用についての知識を持ってる人の協力が、最低でもあったわけか。
「ふーん、ドーラの技術もバカにできないじゃないの。ねえ?」
「そうですねえ」
「ところでこれ、どうすれば起動するのかな?」
「文様の真ん中に触れればいいと思います」
転送は一人ずつということか。
「じゃあ、あたしから行くね」
「はーい」「うーす」
転移石碑の真ん中に触れる。
ククククッ。
何だろう、多くの輪に包まれるような?
転送魔法陣の時の上下がわからなくなる感覚はない。
視界が白くぼやけていき、見知らぬ建物の中に降り立つ。
と、大きな角帽が目を引く、にこやかな笑顔の男が話しかけてくる。




