第33話:交換ポイント無限増殖?
「ふおおおおお?」
「驚きでやすぜ」
「衝撃的です……」
外に出たあたし達は、アルアさんの家が岩壁に掘られたものだと知りビックリした。
おそらく最初は小さな横穴程度のものだったんじゃないか。
縦横に拡張して今の規模になったのだろう。
そーいや中は結構明るかったぞ?
どうやってるのか知らないが、明かり取り用の窓穴がたくさん開けられていたのだ。
ドワーフの石工技術マジすげーな。
「これほどの技術で作られたパワーカードもかなり期待できやすぜ」
「おお、それもそーだ」
実際石工技術とパワーカード製作技術がどれほど関係しているかは知らない。
でも見た目にわかるほどすごい技術持ってる人が作ったパワーカードとなると、メッチャワクワクしちゃうわ。
「さて、素材を集めて『逃げ足サンダル』用の交換ポイントを得るのが最優先だね」
先に転移石碑を探し、ギルドへ行く手もありな気はする。
が、クエストを残したままというのも気が進まない。
レベルを上げて強くなるというのが、当初の重要な目的だからだ。
せっかくここには回復魔法陣がある。
魔物を倒して経験値稼いで素材を採取して……待てよ、素材?
「ねえクララ。スライム爺さんが確か、『スライムスキン』を卸値で売ってくれるって言ってたよね?」
「はい、あっ!」
クララも気付いたらしい。
『スライムスキン』は素材の一種。
爺さんのところで『スライムスキン』を卸値で仕入れ、アルアさんに同額で売ったなら、ノーコストノーリスクで交換ポイントを無限増殖できるということに!
スライム爺さんとのやり取りを知らないアトムが、わけわからなそうな顔をしている。
「どういうこってす?」
「その問いに対して簡潔に答えよう。あたし達の時代が来たってことよ!」
◇
……と思っていた時代がありました。
急ぎ一旦ホームに戻ってスライム牧場を訪れ、爺さんに『スライムスキン』あるだけ売ってくれと交渉したところ、それはできないと。
何でえ?
「こんな山奥まで買いつけに来てくれる、馴染みの業者がおるのじゃ。無下にするのは商売の信義に悖るわ。あるだけ売れというのはできない相談じゃ」
「まーでもわかる。残念だけど当然か」
「しかし何故、お主らが多くの『スライムスキン』を欲しがるのじゃ?」
「実は……」
かくかくしかじか。
交換ポイント無限増殖がどうのこうの。
「おお、パワーカードは現在でも作られておったか。よかったのう。で、素材なら何でもよいのじゃな? ならば……」
スライム爺さんは後ろの戸棚をゴソゴソし、箱を二つ私達の目の前に差し出した。
「ワシがコツコツ拾い集めた素材じゃ。通常の買い取り価格で売ってやろう。素材ならば『スライムスキン』でなくてもよいのじゃろ?」
「やたっ! ありがたいでーす! クララ、値段わかる?」
コクコク頷くクララ。
どうやらありふれた通常素材ばかりらしい。
「それから『スライムスキン』も一五個までなら卸値で売るがどうか?」
「もちろん買いまーす!」
最初の予定とは違ったが、計四〇個以上の素材を手に入れたので良しとしよう。
まあ生産限界もあるし、無限ポイント増殖はさすがにムリとわかっちゃいたが。
「仲間が増えたようじゃの?」
「うん。精霊で、前衛を任せられるんだ」
「冒険者として一番楽しい時期じゃの」
そーなのかな?
あたしはこの先ずっと楽しい気がしてるけど。
「また来るがよい。『スライムスキン』一五個は取り置きしておいてやるでな。一ヶ月以上経てば渡せるぞ」
「えーと、じゃあよろしくお願いしまーす。一月経ったら取りに来るね」
歯の少なくなった口を開け、にこっと微笑むスライム爺さん。
あまり人の来ない場所だろうし、あたしみたいな美少女がまた来るとゆーのは嬉しいんだろう。
爺さんに別れを告げ、転移の玉でホームに戻る。
「姐御、これでカードのクエストは完了できやすね」
「クエスト完了の前に、アルアさんところの外で少し戦ってみようか。様子見とギルドへの転移石碑の位置の確認を兼ねてね」
再びアルアさんの家へ飛び、外の平原で経験値稼ぎとアイテム採取にいそしむ。
そういえば苔洞窟クエスト完了のボーナスでアトムのレベルが六になり、バトルスキル『透明拘束』を覚えていた。
あれから戦闘は初なので使わせてみたが、通常攻撃よりやや攻撃力の高い斬撃技だな。
しかも敵単体の攻撃力と魔法力を下げるという付加効果がある。
強敵の火力を下げることのできる、使い勝手の良いスキルだ。
もっとも与えるダメージは『マジックボム』の方がずっと高い。
回復魔法陣を自由に使える今は、『マジックボム』をメインに使用するのがいいな。
ここお肉がいないから、爆散したって構わないし。
この辺の魔物は昆虫系と植物系、及びスライムの亜種がいる。
今のあたし達のレベルからすると強いことは強いが、マジックポイントを気にせず全力で戦えるなら、そう困ることはないわ。
植物系は火に弱く、『プチファイア』でも『ウインドカッター』並みのダメージを与えることができる。
虫の類は冷気に弱いというが、うちのパーティーは誰も氷魔法使えないからわからん。
「お肉の得られない戦闘は味気ないもんだなー」
「そうでやすねえ」
あ、でもレベル上がって、クララが『精霊のヴェール』を覚えた。
精霊の白魔法使い専用のスキルらしい。
消費マジックポイントは大きいが、味方全員に対してかなり長い時間火・氷・雷など各種魔法属性に強い耐性を付与するという効果だ。
強力な属性魔法を浴びせてくるボス戦などで、いい働きをする支援魔法だと思う。
「これ体力草です」
クララが嬉しそうだ。
さっきも魔力草を摘めたし、ここはステータスアップの薬草がよく取れる気がする。
生えやすい場所なのかたまたまなのかわからんけど。
夜、スープにしていただこう。
効果がありますように。
ようやく転移石碑の位置を発見。
ぐるっと回り道しちゃったけど、アルアさん家から近いじゃん。
「姐御、どうしやす?」
「いや、今日は行くのやめとこう。急がなくてもいいや。もう少し戦ってから、アルアさんとこ戻ろ」
さらに戦闘とアイテムを求め探索し、それに倦んだ頃アルアさん家のドアをノックする。
これでクエストを終えられ、同時にパワーカードを一枚入手できる見込みだ。




