表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/2453

第32話:コルム兄

「これでアタシからの話は終いさ。おっと、『アトラスの冒険者』にはクエストがいるんだったね。じゃあ、一番交換ポイントの少ないパワーカードである『逃げ足サンダル』を入手できたら完了としよう」


 『逃げ足サンダル』敏捷性+一五%、回避率+五%、スキル:『煙玉』


 敏捷性がアップするならクララに装備させたい。

 受けるトータルダメージを減らすためには、回避率アップを重視してアトムに持たせるべきかな?

 いずれにせよ前衛でも後衛でも良さそうなカードだ。

 装備時に使える、戦闘中必ず逃亡が成功するスキル『煙玉』も、強敵に出会った時のリスクを減らすためにいい。


「賢いあたしは大体理解した! 早速素材を換金してもらっていいかな?」

「よいともさ」


 お金を受け取り、得られたポイントは三七か。

 『逃げ足サンダル』と引き換えるには五〇ポイント必要だから、素材が一三個足りない勘定だ。

 アルアさんが教えてくれる。


「この家の外は魔物が多く、素材やアイテムも拾えるよ。回復魔法陣を設置してあるので、経験値稼ぎにちょうどいい。本来ギルドにすら行ったこともないヒヨッコにとってはちと魔物が強いんだが、ここへの転送魔法陣が繋がるくらいならイケるだろうさ。頑張んな」

「はーい、行ってくるね。あっちにいるのは、助手の方かな? 先に挨拶してこよっと」


 少し離れた奥まったところの作業台で、熱心に工具を走らせる人がいる。

 あたしと似た朽葉色の髪の、ノーマル人の男性だ。

 声をかけてみる。


「こんにちはー」

「やあ、こんにちは。娘さんがこんなところに来るのは珍しいよ」


 男は作業を中断し、こちらに向き直ると、驚いたような声を出した。


「あれ? クララじゃないか。ということは君、ユーラシアか? 大きくなったなあ」

「そこは『美しくなったなあ』でしょ」


 従兄でした。

 久しぶり過ぎて誰だかわかんなかったわ。


「コルム兄なの? 六年前に村を飛び出し、とっくに死亡認定されてる?」

「相変わらずだな、君は。芝居がかったコントはやめろ。というか死亡認定?」

「いや、死亡認定は冗談だけど」


 コルム兄はパワーカード職人になっていたのか。

 知ってたらパワーカードを手に入れることに関して、不安を覚えなかったのにな。


「族長に勧められたんだ。アルア師匠と族長は古くからの知り合いだそうだよ」

「コルム兄が細々したことが好きな根暗だったのは覚えてる」

「ひどいな、君は」


 と言いながら嬉しそうだ。

 マゾなのかな?


 それにしても、パワーカードに灰の民の族長デス爺まで絡んでいたとは。

 コルム兄に勧めたってことは何か思惑があったんだろう。

 ならばパワーカードは滅びゆく装備品ではない。

 ちょっと嬉しいな。


「他所の人と話す機会もあまりないんでね。可愛い従妹のユーラシアであれば、嬉しくもなるさ」

「可愛いのところがよく聞こえなかったから、もう一度言ってくれる?」

「相変わらずだな。ところでここに来たってことは冒険者になったのか。しかも精霊連れ? 驚きだよ」


 精霊とともに暮らす種族である灰の民は、皆元々精霊親和性が高い。

 しかし『精霊使い』の素質を持つ者は稀だそーな。

 バエちゃんもレアだって言ってたくらいだしな。


「今、実戦でパワーカードを装備品として採用してる『アトラスの冒険者』は、君らだけだろ」

「みたいだね。でも今日ここへ来て、ようやくパワーカードを確実に手に入れる目処がついたんだよ。でもデス爺が工房を知ってたなら、相談してみればよかったな」

「うん、族長の知恵と思慮はどこまで伸びているのか、測りがたい」


 コルム兄は何かを考えるように視線を宙に浮かべる。


「もっともユーラシアだって、遅かれ早かれこの工房には来てたはずだよ。ドリフターズギルドの指定工房の一つだからね。君達まだギルドに行ってないようだが、先に行ってたらここを紹介されてただろう」


 さっきアルアさんも似たようなこと言ってたな。


「ふーん、ギルドか。色々情報も得られて便利そう。何で『アトラスの冒険者』は、先にギルドの情報なしでクエスト振ってくるんだろ? すごく苦労してるんだけど」

「……わからなくもないな」


 コルム兄が優しい目でこちらを見る。


「職人の世界でも目で盗めってことがある。嘴の黄色いヒナ鳥じゃないんだ、最初から全部教えてもらうつもりでは、冒険者なんか務まらないよ。ある程度の覚悟と経験、それと自己の哲学を備えていないとね」


 自分の命と誇りを賭けている冒険者は、明らかな初心者に足を引っ張られるのを嫌がるだろう。

 自らをある程度のレベルに引き上げた者だけがギルドに来い、ということか。


「ちょっとあたし考えが足りなかったかな」

「ユーラシアは大人になったね。これをあげよう」

「パワーカードじゃん! くれるのありがとう愛してる!」

「最後、メッチャ早口だったな」


 『プチエンジェル』敏捷性+五%、即死無効、防御力低下無効、HP再生三%、MP再生一%、スキル:『天使の鐘』


 随分いろんな効果がついてるな。

 敏捷性アップとマジックポイント自動再生があるから、クララに向いてるかな?

 おまけに蘇生スキルの『天使の鐘』か。


「オレのオリジナルのカードだよ。ちょっと効果盛り込み過ぎて、ピントぼやけたかもだけど」

「いや、マジでありがたいよ。まだパワーカードの数が全然足りてなくてさ。形見と思って大事にする」

「勝手にオレを殺すなよ」


 コルム兄は優しくて親切な人だが、どーもツッコミが弱くて物足りない。


「まだ当分ここで修行するの?」

「どうかな? 技術は既に師匠に劣らないと思ってるけど」


 ん? 微妙に話を逸らしたな。

 何かあるのか?


「君のような勘のいい子は嫌いだよ、なんてね。ここの工房の外には、ドリフターズギルドへの転移石碑があるんだ。ギルドへ行く前に、十分レベル上げして薬草をたくさん採取しておくべきだと思うよ。換金しやすいから」

「わかった、ありがとう。いや、ギルドに行く前に五〇ポイント貯めて、『逃げ足サンダル』手に入れるのが先かな? 素材も必要だし、外で暴れてくる!」

「ムダに元気がいいなあ」

「ムダじゃないわ。溢れる生命力に嫉妬しろ」


 使用コストはバカデカいけど、蘇生スキルはありがたいなあ。

 『プチエンジェル』をクララに装備させ、いざ出陣。

 パワーカードを手に入れる見込みも立ちました。

 冒険者活動は順調です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ