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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第31話:待望の!

 ――――――――――一二日目。


「ひょーっ、いい風だぜ」

「でしょ? ここどういうわけか海のほうから風あんまり吹かないんだよね。大体東から湿気てない風が吹くの」


 前回の苔むした洞窟のクエストから三日後の朝、あたしはアトムを連れて海岸に来ていた。

 昨日はどうしたって?

 誰かさんが二日酔いで使い物にならなかったんだよ。

 まー雨も降ってたから、特に何をする気もなかったけど。


「姐御、海で何をするんでやす?」

「素材とかを拾う。今のところこれらとクエストで得たアイテムの換金しか、あたし達におゼゼを得る手段はないからね」

「おお、なるほど」

「それから食材の確保もね」


 アトムにはお金とおゼゼと金銭の重要さを叩き込んでおかねばならぬ。

 もう三ヶ月もすると冬本番だ。

 いくらドーラが温暖だといっても、今ほど野草や貝が手に入るわけじゃない。

 保存食と蓄えたおゼゼで冬を越さねばならぬのだ。

 アトムの分だけ食い扶持が増えたし、よくよく注意しないと。


「海藻も少しあるな。取っていこう。洗って干しとくと保存が利くんだ」

「姐御、これ何でやすかね? 変な模様が描いてありやすが」

「おお、『地図の石板』だよ。貸してみそ?」


 やはり次の『地図の石板』が来ていたか。

 アトムから受け取ると、最早お馴染みとなった地鳴りがする。

 よしよし、予定通り。


「な、何だ?」

「『アトラスの冒険者』が『地図の石板』を手に入れると、次の転送魔法陣が設置されるんだよ」

「……ってえことは?」

「新たな冒険の幕開けってことだ!」

「うおおおお! 腕が鳴るぜっ! 姐御、帰りやしょう」

「テンション最高潮のとこ悪いけど、貝拾って野草摘んでからだよ」


 クエストも大事だが、食べることはもっと大事だからね。

 帰宅して貝の下処理をクララに任せ、アトムと海藻を洗って干す。


「こうして天日で干して、表面を乾かして陰干しすれば、一冬くらい余裕で保存できるからね」

「へい、わかりやした」


 クララも用意ができたようだ。

 ならば次のクエストへゴー。

 アトムにも四つポケットの上着を着せ、ナップザックを背負って魔法陣の区画へ行く。


 今までの転送魔法陣の延長上に設置された、新しい転送魔法陣の上に立つ。

 そして強まる魔法陣の光。

 フイィィーンという音と同時に、あの事務的な声が響く。


『アルアの家に転送いたします。よろしいですか?』


 家? 個人宅?


「ねえ、転送魔法陣さん。アルアさんっていう個人の家、なのかな?」

『そうです』


 ふむふむ、これくらいの質問には答えてくれるんだ。

 しかしどういう基準で石板クエストは成立するんだろうな?

 スライム爺さんも精霊ウツツも依頼を出した感じじゃなかったし。

 『アトラスの冒険者』の根本に関わる謎のような気がする。


「転送よろしく」


 シュパパパッ。

 平衡感覚が戻ってきて足が重力を感じる。

 辺りを見回すと確かに家の中。

 いくら個人宅ったって、屋内に転送ってのは予想外だな。


「この乱暴な訪問、『アトラスの冒険者』の関係者だね?」


 声のしたほうを見ると小柄な女性がいる。

 アトムをもっと茶に寄せた肌の色、黒い目と黒い髪。

 大きな口と刻まれた深いしわ。

 ドワーフの老女か?


「ごめんなさい。まさかいきなり家の中に転送されるとは思わなかったんだ」

「いや、外には魔物がいるからね。転移先座標を屋内にしてるのさ。まあいい、立ち話もなんだから座りな」


 大きなテーブルに備えられた椅子に案内される。

 そこで初めてクララとアトムが人間でないことに気付いたようだ。


「おや、精霊連れかい? アンタはギルドの人間じゃなくて、冒険者なんだね?」

「うん、冒険者だよ」

「おやまあ、精霊使いなんぞ初めてだ」


 かかかと乾いた声で笑う。


「あんたは、その、ドワーフなのかな?」

「ん? ギルドで聞かなかったのかい? アタシは土と岩の民のアルア。アンタらがドワーフと呼ぶ種族さ。研究と製作のため、この工房に住んでいる」

「へー、何の研究なの?」

「何も聞いてないんだね。ひょっとして直接『地図の石板』の転送魔法陣から来たのかい?」

「実はそーなの」

「ということは、まだギルドも行ったことがない?」

「うん。もう一つクエストをクリアしたら、ギルドへ行けるだろうとは言われたけど」


 アルアさんは驚いたように目を見開く。


「おやまあ。二人も精霊を連れてるのに、ギルドもこれからの初級者ときたか。そりゃ大したもんだ」


 あたしを興味深そうな目で見つめ、続けた。


「アタシの研究対象をまだ言ってなかったね。アンタ達も絶対食いつくものさ」

「何だろ?」

「パワーカードさ。精霊連れなら欲しいだろう?」

「メッチャ欲しい! ちょうだい!」

「何だい、いきなり遠慮がないね」


 かかかと笑うアルアさん。

 こんなに早くパワーカード製作者に会えるとは!


「気に入った。作ってやろう」

「やたっ! パワーカード揃えるのが大変で困ってたの」

「おや、アンタはノーマル人だろう? 精霊に合わせてパワーカード装備なのかい?」

「あたしはもともと精霊と縁のある一族で、昔から家に伝わってたカード使っていたから慣れているんだよ」

「ああ、灰の民だったのかい。で、昔から家にパワーカードが伝わっていた?」


 灰の民を知ってる人か。

 アルアさんは目を細めた。


「なるほど、都合がいいね。パワーカード製作の条件だが、素材を調達してアタシのところに持ってきな。通常の買い取り価格で引き取った上、素材一個につき一ポイントやろう。これはカードと交換するためのポイントさ。カードごとに交換レートがあるから、それに達したら引き換えてやろう」

「素材一個で一ポイント……とゆーことは、ありふれた素材でも数を集めるのが得ってことなのかな?」

「数重視の一面もあるが、ありふれた素材だけではありふれたカードしか作れないよ。様々なカードが欲しければ様々な素材を、だね」

「じゃあ、レア素材を手に入れたら……?」

「かかかっ、面白さがわかってきたかい?」


 ポイント制はアルアさんが素材を安く集める手段のようだ。

 でも通常の買い取り価格で引き取ってくれるならあたしに損はないし、その上パワーカードと引き換えられるポイントが貯まって得なのか。

 普通の販売はしてないみたいだけど、マジで面白いな。

 満足げにあたし達を見つめるアルアさん。

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