第300話:ダン、パワーカードを買う
あたしの推論を話しておく。
「前に話した、海の一族の監視を抜けて上陸する技術って、結構危ないんだよ。だから帝国がどれくらいの工作兵を送り込んでくるかって考えた時、大勢はムリなんだ。少人数で目的を完遂しなきゃならない。となると……」
「レベル三〇前後が最も考えられるってことか」
「うん。帝国の軍人がどんくらいのレベルかは知らんけど、ドーラみたいに魔物の多い国じゃないんでしょ? じゃあメチャクチャ高いレベルなわけない。ドーラで言う上級冒険者に手が届くくらいの人だと思ってりゃ、さほど間違いはないんじゃないかと思ってるんだ」
「なるほどな」
ダンが頷く。
「軍人として鍛えられたレベル三〇を相手にするなら、最低レベル四〇は必要かなって、賢いあたしは考えた」
「おう、助かったぜ」
「ついでに言うと、ダンが冒険者活動するのに従業員さん連れてくのでも、四〇くらいはいるかなと考えたんだよ。ダンのレベルからすると」
「至れり尽くせりじゃねえか」
ニヤッとするダン。
あたしは美味い御飯分の働きはするわ。
いや、レベル上げはあたしの仕事だからいいんだけど、レベル高けりゃ戦えるってもんじゃないからな?
立ち回りとかはしっかり叩き込んでおいてよ?
「実戦はダンの転送先で何とかするとして、武器防具はどうすんの?」
「パワーカードを見せてやってくれ」
ほう、パワーカードを考えてるのか。
『アンリミテッド』を起動する。
「これが精霊使いの特殊装備、パワーカードだ。ん? いつものやつと形が違うな?」
「ダンは『アンリミテッド』見るの初めてだったっけ? 最近『スラッシュ』装備してないんだよ」
「このカードみたいなやつを起動して使用するんだ。やってみろ」
カイルさんが『アンリミテッド』を起動する。
うん、スムーズ。
問題なさそう。
「どうだ?」
「特別違和感はないですね。普通に使えると思います」
「カード持ってりゃ普段手ぶらでいい。仕事にも影響ないだろ」
いつもパワーカードを持たせておいて、緊急事態に備えるってことか。
ベストの使い方だな。
「いいんじゃないかな。武器・防具屋さんで揃えるつもりなら、あらかじめ言っておかないと。あんまり数置いてないと思うから」
「二枚ずつ六人分で計一二枚買っていこう」
「おお、金持ちだね」
「あんたが今日恵んでくれた魔宝玉を売ればお釣りがくるんだぜ?」
慈悲深いあたしの恵みだったか。
武器・防具屋さんのところへ行く。
「ベルさーん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ」
「パワーカードのお客さんが来たよ」
「これはこれはありがとうございます。現在販売中の商品はこちらになります」
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『シンプルガード』防御力+二五%、クリティカル無効
『ハードボード』防御力+三〇%、暗闇無効
『武神の守護』防御力+二五%、HP再生五%
『火の杖』魔法力+一五%、スキル:『プチファイア』
『ホワイトベーシック』魔法力+一五%、スキル:『ヒール』、『キュア』
『マジシャンシール』魔法力+二〇%、MP再生三%
『オールレジスト』基本八状態異常および即死に耐性五〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『誰も寝てはならぬ』防御力+一〇%、睡眠無効、最大HP+一〇%
『ヒット&乱』攻撃力+一〇%、混乱付与、混乱無効
『前向きギャンブラー』攻撃力+一五%、会心率+八五%、防御力-三〇%、魔法力-三〇%
※一枚一五〇〇ゴールド、ただし『サイドワインダー』は二〇〇〇ゴールド。
「ユーラシア選んでくれよ」
「オーソドックスでいいよね?」
「ウケはいらねえぞ?」
「フリみたいな言い方だなあ」
アハハと笑いながらパワーカードを選んでいく。
『威厳』持ちのカイルさんは、全体攻撃できる『サイドワインダー』と防御力の高い『ハードボード』がいいだろ。
土魔法使いは難しいな、攻撃力も高かったから魔法戦士寄りで『ナックル』と『ボトムアッパー』ってとこか。
『道化』持ちは『ニードル』と『シールド』でよし。
白魔法使いは回復の要だから、『マジシャンシール』と『光の幕』を。
沈黙無効の子はサブ回復で『ホワイトベーシック』と『ボトムアッパー』がいい。
『飛影』持ちが『スラッシュ』と『シンプルガード』、こんなところだろ。
「毎度あり。一万八五〇〇ゴールドになります」
「ベルさん、ダンにも入手可能カードのリスト、渡しといてあげてくれる?」
「はい、こちらに」
あ、リスト用意しとくようになったんだな。
「ん? これはどういうことだ?」
「ここに置いてあるカード、売れ筋の一部だけなんだよ。他にも取り寄せられるカードがあるから、その一覧表」
「今は店に在庫があるカードも含めて、全ての販売可能カードの一覧表にしております。性能比較もわかりやすいと思いますので」
おお、ベルさんやるね。
パワーカードはリスト見てると欲しくなっちゃうんだよな。
「パワーカードは確か、一人七枚まで装備できるんだったよな」
「うん。余裕があれば装備枠は埋めとくべきだね。より強力」
「ベルさん、注文するとどれくらいで入荷する?」
「三日あれば間違いなく届きますよ」
「オーケー、検討しとく」
リストを見ているダンとカイルさんを横目に、ベルさんとこそっと話をする。
「最近ダンは金持ちだよ。きっと売れるよ」
「販促活動ありがとうございます」
「聞こえてるぞ?」
「ふふふ、聞こえてても買うしかないでしょ?」
「まあ一人前の装備が一万ゴールドで揃うなら安い」
ダンの言う通りだ。
一五〇〇ゴールド×七で一万ゴールド強。
本格的に冒険者やるんだったら、ケースに応じたパワーカードが欲しくなっちゃうから七枚じゃすまなくなる。
けど警備目的なら七枚で十分だもんな。
考えてみりゃドラゴン倒せるくらいの装備が一人当たり一万ゴールドで揃っちゃうって、結構すごい気がする。
「帰るぜ」
「鍋だっ!」




