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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第298話:善人と聖人

 フイィィーンシュパパパッ。


「ポロックさん、こんにちはー」

「おや、大勢ですね」

「ポロックさん、フルステータスパネルで固有能力を確認させてくれ」

「わかりました。少々お待ちを」


 魔境でレベリングを終えた『オーランファーム』の従業員三人を連れ、ギルドにやって来た。

 それぞれ何の固有能力持ちなのかを確認するためだ。

 青いパネルが起動する。


「ではここに掌を当ててくださいね」


 白魔法使い以外の二人の固有能力は『饒舌』(沈黙無効)と『飛影』(敏捷性向上)だった。

 『飛影』の人はスキルも習得していたし、なかなかグッドじゃないか。


「ユーラシアもパネル触ってみろよ」

「ええ? 物好きだなあ」

「俺もレベル九九のステータスを見てみたいねえ」


 ポロックさんも乗り気だ。

 とゆーか完全に見世物扱いじゃないか。

 しょうがないなあ。


「素晴らしいパラメーターだねえ」

「あれ? また固有能力増えてる」

「固有能力が五つ?」


 ダンのところの従業員達がビックリしてる。

 何だよダン、『あんたはそういうデタラメなやつだ』って顔は。


「ポロックさん、固有能力を二つ以上持つ人間ってほとんどいねえんだろ?」

「固有能力を二つ持っている人は数百人に一人って言われているね。三つになると数万から一〇万人に一人とか」

「つまりこいつみたいな固有能力五つ持ちは、世界に一人いるかいないかってことだ」


 おおう、皆が尊敬の目で見てくれてるけど、固有能力じゃなくてあたしの可憐さとか有能さを褒めてくれよ。


「で、新しい固有能力はどんなやつなんだ?」

「『閃き』だね? ええと、とてもカンがいい」

「ああ、何かわかるわ。レベルが上がって、カンがよく働くような気はしてた」

「ユーラシアっぽい、いい能力じゃねえか」


 全面的に信用できる能力じゃないとしても、いいかも知れない。

 それにしてもいつこの『閃き』は増えたんだろ?

 レベルカンストした際に何か習得した感覚があったからあの時か?

 でももう少し前からカンがいい感じはしてたしな?

 まあどうでもいいけど。


          ◇


「いやあ、有名な精霊使いユーラシアさんを迎えることができるとは」

「いえいえ、たっぷり御馳走になりまして」


 農場に戻り、ダンのパパであるカリフさんを交えて昼食をいただく。

 野菜、ニワトリの卵とお肉、皆うまーい!

 ところでダンのパパさんはいかにも善人だ。

 どう間違ってダンのような息子が?


「えーと、実の親子なんだよね?」

「こら、他人ん家来てその質問は愉快過ぎるだろ」

「いや、でもお父さんは間違いなくいい人だよ?」

「俺だって間違いなく聖人だろ」

「ハハッ、聖人の定義っていつ変わったんだっけ?」


 ダンパパがにこやかに言う。


「ユーラシアさんのような方に仲良くしていただいて、本当に光栄です」

「いえいえ、そんな……」

「どうした、あんたらしくないじゃないか」


 どーしろとゆーんだ。


「だってあたしのことを天才美少女冒険者だと思い込んでるふしがあるから」

「自信持て。あんたは天才美少女冒険者だぞ?」

「そういえばそうだった」


 うわ、混乱するわ。

 何か心の底からいい人は誤魔化しちゃいけない気がするから苦手だ。

 ダンパパが言う。


「この度、息子が農場の防備を強化しようと言い出しましてな。いえ、反対する筋でもないのですが、必要性があるのかとも思うのです。ユーラシアさんのお考えとしてはどうなのでしょうか?」

「防備の強化は絶対に必要だよ」


 ニヤニヤするダン。

 戦争についてはまだ話せないが、防備の強化は必要。

 それをあたしの口からダンパパに吹き込む意図があったのか。

 先に言っといてよ。


「帝国との貿易が細って物資が入らなくなり、特に中町の住人の間でかなり不満が高まっているのは知ってるよね?」

「はい、聞いております」

「一方にものがあり他方にはない。そうした不均衡がある時は、是正しようとする力が働くんだよ。お金の有無に関係なしにね」


 言葉の意味が浸透したところを見計らってキメ顔の笑いを見せる。


「とすると魔物対策ではなく、盗賊対策が必須だと……」


 少し状況を把握してきたダンパパの質問には答えず、言葉を続ける。


「もう一つの要因として、西域街道の果て塔の村の存在があるよ」

「は、はい」


 塔の村ができたことくらいは知っているのだろう。

 さすがに取り引きはないだろうけれども。


「冒険者を集めてダンジョンの素材他を回収させ、アイテムの売買で利益を出そうとするビジネスを行っているんだ。今急速に賑わってきているよ。ここにも不均衡がある」

「……」

「本来各町や村で警備や護衛を担当すべき冒険者が、皆西へ行っちゃってるの。治安については推して知るべし」


 ダンパパが真剣に話を聞いている。

 事実で構成した枠組みの中で思考を誘導するのは割と容易い。

 あたしの実績も知ってるんだろうし、ダンに元々吹き込まれているんだろうからなおさらだ。


「実際レイノス東で、五人組の盗賊が聖火教の巡礼者を襲う事件が発生したよ。また西のバボという自由開拓民集落でも、旅人が襲われているんだ。ともにこの二〇日以内の出来事だよ。いずれも対応が早く、大事には至ってないけど、正直この先起きるだろう変事に関して備えを怠るのは賢くないな」

「なるほど、そういうことでしたか」


 苦悩の表情を見せるダンパパ。

 ダメ押しとくか。


「ちなみにレイノス東の盗賊は中級冒険者レベルの実力はあったんだ。たまたまあたしが受け持ったので被害は大きくなかったけど、戦闘に関して何の心得もない素人があれに立ち向かうのはムリだな」

「ど、どうすれば……」

「だからユーラシアの力を借りたんだぜ。戦闘経験値を稼がせて即席にレベルを上げる、こいつにしかできない得意技があるんだ。午前中に三人を上級冒険者程度にまでレベル上げてきた。いずれも固有能力持ちだ。かなりの魔法を使えるようになった者もいる」


 ダンパパが驚く。


「ユーラシアさんには御苦労をおかけして申し訳ない」

「従業員さんの中にもう三人固有能力持ちがいるから、午後にレベリングしてくるね。農場だけでなく、この辺り一帯を警備できるだけの戦力になるよ」


 レベル的にはね。

 装備と立ち回りはあんたが何とかしろよ、とダンに目配せする。


「ごちそーさまでした」


 さて、午後ももう一仕事だ。

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