第294話:黙々と魔宝玉を集める
フイィィーンシュパパパッ。
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
「オニオンさん、こんにちはー」
時間が余ったので魔境に来た。
魔宝玉クエストも進めておかないといけないからな。
魔境ガイドの仕事って忙しくなさそうだけど?
「オニオンさんは暇な時何やってるの?」
「本を持ち込んで読んでいますね」
「『精霊使いユーラシアのサーガ』?」
「出版されたら必ず読みますよ」
「オニオンさんが書いてくれても構わないんだぞ?」
笑いが起きる。
やっぱり暇なのか。
あたしには務まりそーにないお仕事だ。
「今カラーズとレイノスの間で交易を始めようとしててね。間に商人さん入れて顔合わせってのを今日やってたんだよ」
「やはりカラーズの物品をレイノスに持ち込むのがメインですか?」
「うん。おゼゼを持ってる側から持ってない側に融通しないといけないからね」
もちろんレイノスのいいものをカラーズに導入したいという考えもあるのだが、基本的にレイノスに集まってるものって高価になっちゃってるからな。
まずはカラーズの産物を人口の多いレイノスに売り込むところからだ。
……カル帝国との関係が良くなれば当然貿易も考えられる。
とゆーかドーラ発展のためには必須だ。
帝国と戦争になるのは仕方ないにしても、遺恨を残さないように解決しなくちゃいけないな。
かなりの難問だ。
あたしに何ができるだろ?
「ユーラシアさんはいろんなことをやってますねえ」
「疲れちゃったから気分転換に来たの」
「気分転換で魔境……そんなのはユーラシアさん達だけですよ」
「魔境レジャーがもっと流行るといいねえ。あたしがツアーガイドやってもいい」
魔境いいところだと思うけどなあ。
まだまだ未発見のものがありそうだし。
少なくともあたしにとっては心の故郷だよ。
「普通は魔境に来ると疲れるものなんですよ」
「そーなの? 魔力酔いとかしちゃう体質の人が多い?」
「ではなくてですね。やはり魔境は魔物も強力ですし、体力的にも精神的にも厳しいですよ。魔境が最終目的地になる冒険者も多いです」
「魔境が最終目的地なのはあたしも同じだけどな? 多分」
「ユーラシアさんは数日で魔境トレーニングをクリアしてしまったではありませんか」
オニオンさんが笑う。
クリアするしないは目的と関係ない気がするんだが。
まーいーや。
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
「姐御、今日はどうしやす?」
「真ん中行って魔宝玉をゲットしたいけど、背中が光ってるケルベロスを見てみたい気持ちはあるね」
『エナメル皮』のドロップがあるということのだが、未だお目にかかったことがないのだ。
「『エナメル皮』は焦らなくてもいいでしょう。今クエストクリアに必要なのは高級魔宝玉です」
「そーだ、目指せ大富豪計画に必要なのは高級魔宝玉だった」
優先順位に従い中央部を目指す。
素材も必要なので歩いてだ。
オーガを倒してワイバーン帯へ。
「ヒドラね」
「珍しいね」
ヒドラもワイバーンと同じ、いわゆる亜竜の一種だ。
ただし出現率はぐんと低い。
レア魔物と呼ばれているクレイジーパペットはしょっちゅう遭うのに、こいつはほとんど見たことがない。
再生能力が非常に高いので、冒険者からは嫌われているらしい。
まあ一撃で倒してしまえば関係ないのだが。
「雑魚は往ねっ!」
「ユー様、ヒドラの牙は回収していきましょう」
「あ、素材なんだ?」
「いえ、お薬として珍重されるそうです」
さすがクララ。
よく知ってるな。
牙は左右で二本採取できた。
魔境にはまだ倒してない種類の魔物が結構いる。
中央部の最強クラスの魔物群は、戦うとさすがにこっちの消耗も激しいと思われるので、魔宝玉クエストが続いている内はパスだ。
それ以外の魔物はドロップ品も知りたいから、積極的に倒しておきたい。
あまり遭わないやつは特にだ。
ドラゴン帯で人形系やドラゴンを倒す。
さらに中へ。
「ウィッカーマンね」
「あの子は必ず高級魔宝玉を落としてくからなあ。実に優秀と言わざるを得ない。刃の錆になっておくれ」
「姐御、パワーカードで具現化した刃は錆びやせんぜ」
「気分だよ気分」
ウィッカーマンを倒すのに苦労したのも今は昔だなあ。
今後もあたし達の前に立ちはだかる強敵がいるのだろうか?
カードを対ウィッカーマン用の編成に入れ替えて倒す。
よしよし、魔宝玉ゲット。
あたしのマジックポイントの消費が大きい。
でも今はゼンさんに作ってもらった『風林火山』の自動回復効果があるので、何度かドラゴン帯で戦っていれば元通りだ。
これならマジックウォーターを買わなくてもいいな。
魔法の葉? 知らない子ですね。
「ウィッカーマンね」
「これ最後にして帰ろうか?」
「「「了解!」」」
四体目のウィッカーマンを倒し帰途につく。
サンダードラゴンに絡まれるけど、今は『雑魚は往ね』が効くしな。
『逆鱗』をゲットするだけのことだ。
ドラゴン帯では人形系以外にドラゴン、高級巨人、グリフォン、マンティコア、グレーターデーモンが現れ、出現率もこの順になっている。
グリフォンとグレーターデーモンは倒したことないなあ。
「姐御」
「何だろ?」
珍しくアトムが何か考えてたみたいだ。
あんまり頭使う子じゃないから、よく聞いてやろう。
「魔宝玉クエストの依頼、ラルフの父御の話に出てきたイシュトバーンっていう元商人かもしれやせんぜ」
「あり得るね」
立志伝中の商人と言うからには、おゼゼもたくさん持ってるだろう。
引退しておゼゼの使い道もないのかも知れない。
「もしそうだとすると、ちょっと切ないですね」
クララの言うこともわかる。
他人に尊敬されるほどの大商人が、ムダなお金の使い方しかできなくなるようではね。
ま、本当にイシュトバーンさんが魔宝玉クエストをくれたのかはわからない。
当たってるならあたしの踏み台になっておくれ。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ」
ベースキャンプに辿り着く。
何かオニオンさん執事みたいだな。
「本日はいかがでしたか?」
「うーん、なかなか背中ピカピカケルベロスに遭えない。乙女がこんなにも恋焦がれているとゆーのに」
「ハハハ、楽しみは残ってた方がいいじゃないですか」
「まあね。オニオンさんさよならー」
「さようなら」
転移の玉を起動し帰宅する。




