表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/2453

第29話:飲兵衛どもめが

「あーはっはっ! アトム君、イケる口ねえ」

「酒ってもんは初めてでやすが、これは美味し。へへへへ、おっ、バエの姉貴、グラスが空でやすぜ。注ぎやしょう」

「あーありがとー」


 予定通り本日第二の目的地、チュートリアルルームに御飯を食べに来た。

 新しい仲間アトムの紹介のためだ。

 洞窟コウモリのお肉パーティーのはずだったのに、バエちゃんとアトムが二人で酒盛り始めてる。

 何だよアトム、あんた人間がどうのこうのブツクサ言ってたくせに、すげえ馴染んでるじゃん。

 納得いかないんだが。


「お肉とキノコ焼けましたよー」

「あっ、クララちゃんありがとっ!」

「それからスープも煮えました」

「「「いただきまーす」」」


 バエちゃんとこの世界の料理アシスト材料であるスープの素をお湯に溶かして、お肉とキノコの切れ端と野草を入れたものだ。

 えらい簡単だけど美味い。

 こーゆー料理アシスト材料がたくさんあるって素晴らしいな。

 負けずにあたし達の世界の食文化も発達させたいものだ。


「あはは~いい気分だわ~」

「お酒もいいけど、お肉も食べてよ。おいしいぞ?」


 バエちゃんは飲兵衛だったのか。

 あたしとクララ相手だったから自粛してただけなんだな?

 赤い顔が色っぽいバエちゃんがお肉に手を伸ばす。


「あっ、おいしい! 何この肉、甘い香りがする!」

「でやしょう? 洞窟コウモリは花の蜜を吸ってるらしいって、クララが言ってやしたぜ」

「クララちゃんは魔物に詳しいの?」

「本で見知ってるだけですよ」


 クララとアトムの二人になったからか、バエちゃんの『精霊さん』呼びは名前呼びに変わった。

 おかげでバエちゃんとクララの距離がまた近くなったようだ。

 アトムよ、あんたは最初からゼロ距離だけどな。


「クララは魔物についてだけじゃなくて、いろんなことをよく知ってるんだよ。うちのブレイン。クララがいるから薬草も素材も取りこぼしなく回収できるんだ」

「クララちゃん、すごーい!」


 ハハッ、クララよ照れてろ。

 あんたはいい子。


「バエちゃんってさ、うちの子達とあんまり抵抗なく喋れるよね。精霊親和性がかなり高いってことでしょ?」

「ええ、高いわよ。だからチュートリアルルームの係員の仕事に抜擢されたの」

「え? 『アトラスの冒険者』って、あたしの他にも精霊連れてる人いるの?」

「ではなくて、精霊使いのユーちゃんが『アトラスの冒険者』候補になったから」


 えっ?

 あたし一人のために?


「そーなの?」

「そうなの」

「……あたしの未だ目覚めぬ漆黒の潜在能力が、『アトラスの冒険者』運営本部を震撼させてしまったか」

「『精霊使い』の固有能力持ちは貴重なのよ。ユーちゃんは『アトラスの冒険者』期待のルーキーだから」


 ギャグがギャグにならないほどヤバい。

 あたしが美貌と頭脳と勇気を兼ね備えた天才冒険者であることは薄々感じていたけど、そこまで本部に評価されていたとは。

 あたしに何をさせようってゆーんだ。

 面倒なことは大嫌いだぞ?


「面倒なことはないと思うけど」


 バエちゃんがお肉にけちゃっぷを塗りながら言う。


「だって私一人で窓口が務まるんだもの。『アトラスの冒険者』の規模なんて大きくないし。たまたまシスター・テレサが結婚したいんです辞めさせてくださいって上層部に泣きついたから、どうせなら精霊親和性の高い職員のほうが業務がスムーズに運ぶだろうって、私が後任になっただけだと思うの」


 何だ、驚いて損した。


「今シスター・テレサには、結婚間際のお相手がいるんだ?」

「いないわ。だから上の人も哀れに思ったらしくて、すぐにシスターの希望が通ったって聞いた」

「うん、まあそうだろうとは思ったけど」

「ユーちゃん、ひどーい」


 アハハと笑い合う。

 まあチュートリアルルーム勤務からまだ二ヶ月ちょいじゃ、お相手なんかできまいよ。

 転属希望がすぐ通ったのは、単にシスター・テレサの勤続年数が長かったからだと思うけど。

 噂話は面白く聞こえる方向に転がるもんだ。


「ユーちゃんとソール君が話題になってたのは本当なのよ? レアな固有能力持つ、有力な新人ということで。特にユーちゃんは三個の能力持ちだし、ソール君はすっごく実用的な能力でしょう?」

「あ、ソル君どうしたかな? バエちゃん聞いてる?」


 昨日の金髪の後輩を思い出す。


「さっき一つ目のクエスト完了しましたって、嬉しそうに報告しに来たわよ。ユーちゃんにもよろしくって」

「よかった。あたしなんてすぐ追い抜かれちゃうんだろうなー」

「いやいや、ユーちゃんも期待の超新星だから、頑張ってね」


 あたしはクエストが面白いし、経験積むとレベルが上がってやれることが増えるから(ついでにお金も儲かるし食卓も潤うから)、冒険者をやってみようと思っただけだ。

 『アトラスの冒険者』自体に賛同してるわけでも忠実なわけでもないんだよなあ。


「コウモリ肉をアテに酒を飲む。くうっ、止められんな」


 先ほどから一人で酒ビンを抱えてるアトム。

 あれ? こいつどんだけ飲んでるんだ?


「ちょっとアトム、随分御機嫌じゃない?」

「上機嫌ですぜ、姐御。最高の夜だぜい」

「いや、酔ってるんじゃないかって言ってるんだけど……」


 よく見ると頭揺れてるし、目の焦点が合ってない。

 ベロベロじゃねーか。

 あっ、こら寝るんじゃないよ。


「ごめん、バエちゃん。ボチボチ帰るわ」


 ゴーゴーいびきをかき始めたアトムを背負い、クララに転移の玉を起動するよう頼む。


「……どうやら起動しないようです」

「転移の玉は『アトラスの冒険者』に登録されてる人じゃないと起動しないの。登録者はユーちゃんだから……」


 セキュリティー上わからんではないけど、めんどくさっ!

 かと言ってクララに背負わせるわけにもいかない。

 何故なら、いたいけな少女然としたクララにごつい労働者みたいなアトムが覆い被さるのは、絵面にあたしが耐えられん。

 アトムをおんぶしたまま、何とか転移の玉を起動する。


「じゃーねー」

「また来てね。きっとよ」


 また新しい『地図の石板』が届くはずだ。

 転送魔法陣が増えることすなわち行動範囲が広がることなので、あたしとしては嬉しい。

 もう一つクエストをクリアしたらギルドに行けるんだったか?

 楽しみではあるが、うしさんが遠ざかるからクララは悲しいのかなあ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ