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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第28話:弟分アレク

 ――――――――――一〇日目。


 翌日、灰の民の村へ足を運んだ。

 昨日の苔むした洞窟でのクエストで採取した薬草の類の換金。

 そして新しく仲間にした精霊アトムを村の皆に紹介すること。

 二つの大きな目的のためだ。


 素材の換金は一応やめておく。

 スライム爺さんのゆーことにゃ、新しいパワーカードを作ってもらうためには素材が必要なようだから。

 今どうしてもおゼゼが必要ってわけじゃないしな。


「万能薬一つちょうだい。蘇生薬は……いいや、やめとこ」


 万能薬は基本状態異常を治療する薬だ。

 クララが同じ効果のある治療用の白魔法『キュア』を使えるようになったが、沈黙食らって魔法使えないこともあるかもしれないしな。

 今後嫌らしい魔物の攻撃も増えそうだから、念のため買っておく。


 戦闘不能状態から回復できる蘇生薬も欲しいことは欲しいが、予算の都合とゆーものがある。

 そもそも蘇生薬が必要になるようなところで戦っちゃいけないだろ。


「あいよ。ちょっとおまけしとくね。そっちの頑丈そうな眉毛の精霊は初めてだねえ。ユーラシアのとこの新入りかい?」

「うす。あっしはアトムっつうケチな野郎でごぜえやす。お見知りおきを」

「あはは、愉快な子だねえ。よろしくね」


 うんうん、いいね。

 灰の民の村は精霊親和性の高い住民ばかりだから、心配はしてなかったが。


「この村は不思議なところだなあ。嫌な人間がいねえ」

「灰の民の村は、ノーマル人と精霊が共生する場ですから」


 アトムもこの村を気に入ってくれたようだ。

 時々来ることになるから、皆と知り合いになっておこうね。


 最後にクララの希望で図書室に寄る。


「おーい、アレク!」

「ユー様、図書室は静かにですよ」


 といってもアレクしかいないし。

 アレクは族長デス爺の孫で本の虫で、あたしの可愛い弟分だ。

 栗毛のキノコ髪で、魔法使いみたいなケープをいつも羽織っている。


「アレクさん、この本、図書室に置いておいてくださいな」


 バエちゃんにもらった本の内の一冊『魔法スキル大全』だ。

 その本もう覚えちゃったのかよ?

 さすがクララ。


「ありがとう、クララ。これどうしたの?」

「最近、ユー様と冒険者をしておりまして、譲ってもらえる機会があったんです」

「冒険者?」


 アレクは目を真ん丸にしている。

 本をもらったのは掃除の報酬みたいなもんで、冒険者あんまり関係ないけどな。


「ユー姉が自分にピッタリの乱暴な仕事をしてるなんて」

「おいこら。乱暴ゆーな」

「もっと意表を突く生き様を見せてくれるのかと思ってたよ」

「あたしを何だと思ってるんだ。意地悪なこと言うと、アレクサンドロス・ライムにしてやらんぞ?」

「いやーん、アレク困っちゃう」


 アハハと笑い合うあたしとアレクを前にしたアトムが、困惑してクララに話しかけている。


「お、おい、姐御とあのボンはそういう関係なのか?」

「いえ、あれはユー様の、嫁にもらってやらんぞという定番のギャグなのです」

「え、嫁?」


 ますます混乱するアトムに、アレクが話しかける。


「そちらの方は初めてですね。アレクと申します。よろしく」


 アレクはぺこりと頭を下げる。


「ああ、あっしは剛石の精霊アトム、ユーラシア組で世話になっていやす」


 ユーラシア組ゆーな。

 チンピラ組織みたいだ。


「アトムはなかなか頑丈で強いよ。盾役を任せられるんだ」

「クララはヒーラーだよね。じゃあユー姉は何やってるの? 芸人枠?」

「可憐な王女役かな」

「我が儘だもんねえ」

「おいこら」


 再びアハハと笑い合うあたしらを見て、アトムがポツリと漏らした。


「……ようやくあのノリがわかってきたぜ」


 クララが苦笑してら。


「この前コモさんに聞いたんだけど、逃亡計画があるんだって? サイナスさんに責任全て押しつけて西へ逃げるとか」

「アハハ、サイナスさんはともかく、移住計画があるのは本当だよ」

「あんたは行くの? 族長のデス爺は行くんでしょ?」


 アレクは首を振る。


「いや、ボクは西よりも港町レイノスに興味があるかな……」

「そもそも何で急に引っ越しの話が出てきたの?」

「急じゃないんだ。ほら、カラーズはいがみ合いが激しくて発展が妨げられてるでしょ? お爺様はかなり昔から移住を模索してたんだよ」


 ふーん?

 表向きの理由はそれでいいけど、腑に落ちないんだよね。


「何か裏があるんでしょ?」

「ユー姉は鋭いな。さすが裏のある女」

「褒めなくていいから。アレクの掴んでいる情報教えて」


 コモさんは多分何か知ってるけど、教えてくれる気なかったしな。


「褒めてないんだけど……いや、ボクにもお爺様は何も教えてくれないんだ。ただ最近、パラキアスさんが村に時々来る」

「パラキアスさんか。あたしもいっぺん会ってみたいもんだ」


 浅黒い肌であることから『黒き先導者』と呼ばれる、ドーラ大陸きっての有力者だ。

 どこまで本当か知らないが、エルフとドワーフの争いを仲裁したの、イビルドラゴンを倒したのという伝説持ち。

 一般にはドーラ独立派と目されている。

 しかしカル帝国皇帝の代理人たるドーラ総督に近い面々とも親しく、バランサーとしての役割を最も期待されている人物だそーな。


「移住計画が現実味を帯びたところでパラキアスさんが来る。ユー姉どう思う?」

「うーん、関係はあるんだろうけど?」


 『黒き先導者』殿の影響力がものを言うのは、あくまで帝国の直轄地レイノスでだろう。

 事実上の自治地域であるここカラーズでは、知名度ほどの影響力なんてないはずだ。

 西域ではどうなんだろ?


「コモさんが西への移住について、族長は今だから大丈夫だと言ってたって話してたな」

「……何とも言えないね」


 うむ、情報が少な過ぎる。


「ユー姉は冒険者になったんだから、出先で関係することを聞くかもしれないでしょ? 何かわかったら知らせてよ」

「わかった。あんたは魔法だけ研究してればいいのに、昔から陰謀論みたいの大好きだよね」

「お互い様。余計なことに首突っ込みたがる性格はよく知ってるよ」


 三度笑い合いアレクと別れた。

 軽食を取り、村を後にする。


「昨日の洞窟コウモリのお肉と海の野草があるから、キノコだけ摘んで帰ろうか」


 べつにアレクの頭を見たからキノコを思い出したわけじゃない。

 お肉を食べる時はなるべく植物も食べなさい。

 亡き母ちゃんの教えなのだ。

 いや、現在の分類ではキノコが植物じゃないことくらいわかってますけれども。

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