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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第278話:秘密兵器かどうかは判別できないけど

 アルアさんのパワーカード工房から帰宅後、ヴィルに指示する。

 夕食のいい匂いがし始めているのが、ちょっと気になる乙女心。


「さて、ヴィルにはもう一働きしてもらおうかな」

「何だぬ?」

「通信のテストだよ」


 ちょっとした実験だ。

 ヴィルはどこへでも飛べる。

 そしてどこにいたとしても赤プレートを通してあたしと会話することができる。

 ならばヴィルを送り込むことにより、あたしが居ながらにして遠くにいる人と連絡が取れないかってことなのだが。


「あたしがここにいたまま、灰の民の村の族長サイナスさんと話がしたいんだ。ヴィルが中継して通話することは可能かな?」

「簡単だぬよ」

「おおう、簡単なのか。どうすればいいかな?」

「わっちがまずサイナスのところへワープするぬ。向こうで話ができる状態になったら、合図するぬ。御主人は赤プレートを持って待機してくれればいいぬよ?」

「マジで簡単だな。なかなか面白いね。じゃあサイナスさんのところへ行ってみてくれる?」

「わかったぬ!」

「あっ、ちょっと待った!」


 ヴィルをぎゅっとしてやる。

 好感情を補充していきなさい。

 ヴィルは嬉しそうだし、あたしも可愛いヴィルをぎゅっとできて幸せだ。

 ウィンウィンだなあ。


「よーし、行っといで!」

「はいだぬ!」


 フィンと消えていなくなる。

 よしよし、ヴィルいい子。


 ヴィルは空も飛べるし転移もできるので、うまく活躍させることができれば、様々なことに応用が利くはずだ。

 とゆーか遠く離れている人と瞬時に連絡取れるって、メッチャすごくない?

 赤プレートに反応がある。


『御主人、聞こえるかぬ? こっちは準備オーケーだぬ!』


 早っ!


「ヴィルありがと。サイナスさん、聞こえる?」

『ああ、聞こえる。何の用だい?』

「ヴィルを介した試験通信だよ」

『試験通信?』

「あちこちに連絡取れるとすげえ便利じゃん」

『ハハハ、確かにな』


 うんうん、全然ふつーに会話できる。

 ナイスアイデアだったと自分を褒めてやりたい。


『これ、ヴィルの行けるところならどこの誰とでも即時通信が可能なのか?』

「あたしはそう思ってるけど、ヴィル、どうなの?」

『可能だぬよ?』

『大変なことじゃないか』

「大変なんだよ。もっとあたしを盛大に持ち上げてくれても構わないぞ?」


 アハハと笑い合う。

 もっとも悪魔を送り込むということ自体に障害がある。

 ヴィルを知ってる人のところなら、という限定条件だな。


「思ったよりもよく聞こえると思わない?」

『ああ、通信自体に特に問題はないな』

「よしよし、これは素晴らしい。いろんなことに使えるな」


 例えばどこにいるかわかんなくて、普通だったら連絡の取りようのないパラキアスさんであっても、ヴィルは見つけることができるのだ。

 ドーラの中心人物といつでも話せるようになったってのはヤバい。


『しかし、面識のないところへいきなり悪魔を送り込むのはやめておけよ?』

「いや、さすがにそんなことはしないよ……でも面白そうだね?」

『フリじゃないからな? 背中押さないからな?』


 再びの笑い。

 悪魔が現れてビビるような人にはもちろん送れない。

 悪感情が溢れちゃうようなところに行くのはヴィルだって嫌がるだろうし。


「もう一つ用があるんだ。カラーズ~レイノス間交易に関係する例の商人さんだけど、三日後の午前にカラーズに伺いますって」

『ヨハン・フィルフョー氏だな? 三日後の午前中か。わかった、各村に伝えておく。君も来るんだろう?』

「もちろん行くよ。楽しみだなー」


 カラーズの発展はあたしの喜び。

 ハハッ、あたしも楽しみのスケールが大きくなってきたもんだ。


『用はお終いか?』

「うん。ヴィルありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 うん、完璧だ。

 ちょっとした連絡なら十分ヴィルを介して可能だぞ。


「コンビニエンスね」

「マジありがたいな」

「夕御飯できましたよ」

「いっただきまーす!」


          ◇


 ――――――――――六五日目。


 朝から本の世界に来た。

 今日は海の女王並びにデス爺やエルのパーティー達と焼き肉なので、コブタマンを狩らねばならないのだ。

 お肉の調達は美少女精霊使いの最も重要な職務だから。


「これで五トンですが、どうします?」

「うちの分のお肉はまだあるんだよね?」

「はい」

「じゃあこれでいいよ。エルもコウモリ肉持ってくるし、ワイバーンの卵もある」

「そうでやすねえ」


 いや、今日食べる分だけならコブタマン一トンでも十分だけど、女王だってしばらくお肉食べたいだろうから。

 ストック分を含めてってことだ。


「お肉を溜め込んでここ来なくなると、アリスが寂しがるしなー」


 アリスは本の世界のマスターである、ブラウンのドレスを着た金髪の人形だ。

 この世の全ての知識を持つとも言われている。


 エントランスホールに戻ると、アリスが話しかけてきた。


「御苦労様。今日もお肉なのね?」

「今日もお肉なんだよ。本の世界は素晴らしいね。とめどないお肉の世界」

「ま、まああなたがどう思っていても構わないですけれども」

「『永久鉱山』バンザイだよ」

「ここが『永久鉱山』であるおかげで、私の活動する魔力も得られますしね。知識を集めることもできます」


 あっ、なるほど!

 何かするためにはエネルギーが必要だもんな。

 そのエネルギーである魔力を自動で集めるために、『永久鉱山』に本の世界を作ったのか。

 世の中賢い人がいるなあ。


「アリス知ってる? 今度カル帝国とドーラ植民地が戦争になりそうだってこと」

「戦争が避けられない情勢にあるということは知っているわよ」


 アリスは正確に物事を話す。

 やはり戦争は避けられないか。


「帝国はドーラを降参させるために秘密兵器を開発してるんじゃないかって、推測されているんだ。その辺のこと何かわからない?」


 小首をかしげたような気がする。

 実際に人形が動くわけはないんだが。


「詳しい情報はないわ。秘密兵器かどうかは判別できないけど、一ヶ月以内に試作機が完成予定とあるけど……」


 来た、試作機か。

 十分重要な情報だってばよ。

 あたしのカンが秘密兵器だと告げている。


「ありがとう。アリスは頼りになるなー」

「そんな……」


 だからどういう仕組みで顔赤くなるんだってばよ。

 可愛いやつめ。


「じゃあね、また来るよ」

「さようなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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