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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第277話:ヴィルはいい子

 ソル君が戸惑っている。


「いいんですか? 三〇〇〇ゴールドで。随分お値打ちに思えますが」

「ソル君が活躍すればペペさんの名声も上がるんだぞ? 実績で返せばいいのだ」

「わかりました。ありがとうございます!」


 ペペさんがニコニコしている。

 とはいえペペさんみたいなスキルをホイホイ作れる大天才が、おゼゼがなくて生活に困るってのはどう考えてもあり得ん。

 大体個人のためにスキルを作るという発想からしておかしい。

 あたしもペペさんのスキルの恩恵をかなり受けているので、ぜひとも報いてやりたいのだ。

 ペペさんがスキルを開発することで自然に儲かるシステムを作りたい。


 でもペペさんはアーチストでロマンチストでドリーマーだからな?

 納得できない仕事はしないだろうし……。

 まあいい、いずれ何とかしよう。 


「ところであたしのスキルはまだできないの?」

「あ、残念ながらまだなの」

「ペペさんにしては時間かかるね?」

「だってユーラシアちゃん専用スキルだから、私じゃ試し撃ちできないでしょう? 調整がすごく難しいの」

「なるほど」


 専用スキルにはそんな盲点があるのか。

 ソル君専用『衝波五月雨連撃』みたいに刺突属性を衝波属性に置き換えるのと違って、一から組み立ててるっぽいな。


「精霊使いの伝説に相応しいスキルを待ってるよ」

「うん、頑張る」

「わっちも頑張るぬ!」


 よしよし、ヴィルはいい子だね。

 さて、帰るか。

 転移の玉を起動して帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー」

「おやおや、いらっしゃい。見かけない子が混ざってるね?」


 ギルドでソル君達と別れたあと、一旦帰宅して、アトムとヴィルを連れてアルアさん家に来た。

 まあアトムはパワーカード大好きだから。

 魔境北辺まで足を延ばすことによって新たな素材を手に入れたので、どんなパワーカードが交換対象になるかの確認のためだ。


「アルアさんにこの子紹介してなかった気がして連れてきたよ。ヴィルって言うの」

「ああ、あの時の悪魔っ子じゃねえか。久しぶりだなあ」

「こんにちはぬ!」


 ゼンさんは帝国の山の集落でヴィルと面識あるんだったな。

 山の集落の人達は聖火教徒にも拘らず、悪魔のヴィルにあんまり隔意がなかった。

 聖火教の悪魔に対するスタンスが今一つわからんな?

 悪魔を嫌うことは知ってるけど、絶対ダメってわけでもないみたい。


「悪魔? なるほど悪魔だね」

「幸せとか満足とかの好感情を好むいい子なんだよ。偵察の役目についてもらってるの」

「そうかいそうかい」


 ヴィルがアルアさんに頭を撫でさせている。

 気持ち良さそうだ。

 アルアさんも悪魔くらいでビビったりしない人だとわかってよかった。

 たまにはここへもヴィルを連れてきてやろう。


「さて、素材の換金かい?」

「そうでーす。お願いしまーす」


 交換ポイントは一五五になった。

 おお、結構素材拾ってたんだな。


「交換レート表だよ」


 新しく交換対象となったのは以下の二枚だ。


 『ファイブスター』火耐性/氷耐性/雷耐性/風耐性/土耐性三〇%

 『アンデッドバスター』【対アンデッド】、攻撃力+二〇%


 ともに交換ポイントは一〇〇必要だ。

 『ファイブスター』はウィッカーマンの放つ『メドローア』対策として検討していたので、目新しさはない。

 『三光輪』を持っている今となっては、必要性が薄れたカードではある。


 『アンデッドバスター』はいいカードだ。

 うちのパーティーには縁がなかったが、特定のエリアにアンデッド系のモンスターばかり出現するようなケースはあるみたい。

 そーゆーとこではすごく便利に使えるだろう。

 戦ったことないけど、魔境中央部にいる最強クラスの魔物リッチーはアンデッドなので、『アンデッドバスター』は有効だろうな。


 さて、魔境で浮き彫りになった問題点、あたしのマジックポイントが足りなくなる状態を解決せねば。


「アルアさーん。攻撃力が加算されてマジックポイント自動回復のついたカード作れないかな?」

「ほう、注文かい?」


 あれ、嬉しそうだな。

 特注は職人魂を刺激するものなのだろうか?


「スキルを常用するアタッカーに向いたカードだね。今までの素材で可能だよ。最低限必要な性能を詳しく教えな」


 結構細かく性能の調整ができるらしいぞ?


「攻撃力+一五%、MP再生二%は最低欲しいかな。他の効果はいらないから、余裕あるならその分攻撃力と自動再生量を増やしてもらいたい」

「よし、ゼン、やってみな」

「へい、お任せを!」


 おお、ゼンさんが注文受けるのか。

 出世したなあ。

 ゼンさんの努力は並みじゃなかったから、認められるのはあたしも嬉しい。


「この前ゼンに魔法とスキル見せてくれたそうだね。すっかり勘所を心得たようだよ。レア素材を使うような、深い知識を必要とするカード以外はもう大丈夫だ」

「明後日までに作っとくぜ!」

「頼もしいね。えーと、いくら払えばいいのかな?」


 アルアさんはちょっと考えて答える。


「そうさね、交換ポイント倍でどうだい?」

「倍、とは?」

「アンタの注文のカードはコモン素材だけで作れる。コモン素材のみを使って製作したパワーカードは、一部の例外を除いて一〇〇ポイントだ。注文は倍で二〇〇ポイント」

「りょーかいでーす。じゃあお願いしまーす」

「あっ、ユーさんちょっと待った!」


 帰ろうとしたあたし達をゼンさんが呼び止める。

 どーした?


「うちが作ったカードだ。村に届けてくれんか?」


 五枚のパワーカードを渡される。

 ゼンさんの故郷である、カル帝国テンケン山岳地帯の聖火教徒の集落か。

 魔物が入ってくる可能性のあるあの地には武器が必要だもんな。

 ほう、バトルスキル『薙ぎ払い』付きの『サイドワインダー』のカードが含まれてるじゃないか。

 スキル実装もできるようになったんだな。


「わかった。責任もって明日届けるよ」

「助かる。明後日のカード、交換ポイント五〇はサービスしとくよ」


 あたしはゆっくり首を振る。


「ゼンさんにはちっぽけなおまけを期待してるんじゃないんだ。いつかすごいオリジナルのパワーカードを作ってくれると信じてるから」

「ユーさん……」

「信じてるぬ!」


 よしよし、ヴィルいい仕事だよ。

 ヴィルは相当空気を読めるようになってきた気がするなあ。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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