第275話:大体魔境も一回り
ベースキャンプから北へ直進し、オーガ帯からワイバーン帯へ。
「北まで探索する冒険者は、あまりいないんですねえ」
「あたし達みたいに魔境を満喫する真の冒険者は希少な存在なんだよ、きっと」
「そんな物好きは滅多やたらにはいねえぜ」
「……」
こらダンテ、何か言え。
ヤレヤレみたいなポーズで誤魔化すな。
まーベースキャンプから真っ直ぐ北へオーガ帯ワイバーン帯、そしてドラゴン帯へというのが、オーソドックスな冒険者の歩む道だろう。
何が悲しくて安全地帯であるベースキャンプから離れて北まで行かなきゃならんのか、ってのが一般的な感覚なんじゃないかな?
フロンティア精神に溢れるあたし達は、独占だぼろ儲けだという乙女心を刺激するワードを心に秘め、未知なる魔境北辺を目指して進む。
ちなみに今現在のパワーカード構成はこうなっている。
あたし……『シンプルガード』『あやかし鏡』『スナイプ』『アンリミテッド』『暴虐海王』『スコルピオ』『ヒット&乱』
クララ……『マジシャンシール』『エルフのマント』『逃げ足サンダル』『誰も寝てはならぬ』『光の幕』『三光輪』『シールド』
アトム……『ナックル』『ルアー』『厄除け人形』『誰も寝てはならぬ』×二『ハードボード』『スラッシュ』
ダンテ……『火の杖』『プチエンジェル』『ボトムアッパー』『誰も寝てはならぬ』『癒し穂』『スペルサポーター』『三光輪』
予備……『寒桜』×四『アンチスライム』『サイドワインダー』『三光輪』×二『前向きギャンブラー』『オールレジスト』『刷り込みの白』
ウィッカーマン戦だけあたしは『シンプルガード』を『前向きギャンブラー』に入れ替え、アトムは『誰も寝てはならぬ』一枚を『刷り込みの白』に入れ替える。
魔法攻撃しかしてこないウィッカーマン相手に、防御力上昇とクリティカル無効の『シンプルガード』は必要ないもんな。
あたしとアトムは、レベルアップのおかげで『三光輪』なしでも強力な攻撃魔法『メドローア』の連発に耐えられるようになった。
運のパラメーターの高いあたしは、どうも状態異常攻撃を食らう確率が非常に低そうだ。
試験的に『オールレジスト』と『ヒット&乱』を入れ替えて、より攻撃力重視かつ最もヤバい状態異常の混乱だけはシャットアウトの方向にシフトしている。
まあ万一の時はクララの『煙玉』で逃げればいいのだが。
ペペさんにもらった、その戦闘中のアイテムドロップ確率やレアドロップ確率が増えるというバトルスキル『豊穣祈念』は、当然だがダンテに覚えさせている。
今後は『実りある経験』の代わりに大活躍してくれるといいな。
美少女精霊使いは魔宝玉ガッポリの夢を見る、か。
「ワイバーンね。ちょっとアングリーね」
「爪君か」
「素材名で呼ぶのは可哀そうですよ」
もうワイバーン帯か。
自分の実力も知らんとつっかかってきたぞ?
面倒だなーもー。
レッツファイッ!
ダンテの豊穣祈念! あたしのハヤブサ斬り! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り! うん、勝った。
「ユー様、『スナイプ』の扱いが上手になりましたねえ」
「もう慣れたよ。このカード構成だと攻撃力が高いから、『ハヤブサ斬り』でもギリギリワイバーン倒せるな」
「姐御はマジックポイント自動回復のカード装備すべきじゃないですかい?」
「一考の余地があるね」
「ユー様、卵をドロップしてますよ」
ワイバーンの卵ってドロップアイテムだったんだ?
「デカい卵だなー。これすごくおいしいってオニオンさん言ってたね。明日、海の女王んとこに持っていこう」
ドロップは嬉しいが、行きに卵拾うと邪魔だな。
贅沢な悩みだ。
ドラゴン帯さらに中央部を突っ切って北へ。
『豊穣祈念』の効果はかなり高いっぽい。
デカダンスは黄金皇珠(かなり高いやつ)を落とすし、ウィッカーマンも鳳凰双眸珠(国宝級)を落としていった。
どうもウィッカーマンは、鳳凰双眸珠を落とす時は羽仙泡珠(すごーく高いやつ)を落としていかないようだ。
「『豊穣祈念』でレアドロップ確率は三~五倍くらいになってるように感じます」
「ありがたいねえ。今一番必要なスキルだ」
『豊穣祈念』をくれたペペさんに感謝しつつ、どんどん北へ。
かなり北辺に近いところまで来たか?
「カオスだねえ」
イビルドラゴンがオーガを追い回してるぞ?
本来生息場所が全然違うのになあ。
「植生もかなりバラバラです」
「岩石や土もあっちとこっちで違えぜ」
「アンビリーバボーな微気候の変化に満ちているね」
「岩で見通し利きづらいから注意して探ろうか」
「「「了解!」」」
いろんな素材が落ちてる。
採取採取、と。
「デカダンス二体ね」
真経験値君を敬意と感謝と愛情を込めて倒す。
透輝珠二個と黄金皇珠一個を得る。
また黄金皇珠をゲットした。
すごいぞ『豊穣祈念』。
「クレイジーパペット三体ね」
「三体? 人形系多い気がするねえ」
世界樹エリアボーナスタイムに近い人形系の出現率じゃないか。
向こうにいるのウィッカーマンみたいだな。
時間のある時は、中央部よりも北辺の方が稼ぐ効率がいいかもしれない。
「お昼にしましょうか」
ふかしたサツマイモと茹でて塩強めにしたお肉だ。
うん、冷えててもおいしい。
あたしはついでにマジックウォーターでマジックポイントを回復させておく。
「攻撃力増強とマジックポイント自動回復がついたパワーカードが欲しいね」
「アルアさんの工房にはなかったでやすぜ」
「リクエストしてみようかな」
最近どういうカードなら作れるかが、おおよそ理解できるようになってきた。
これは多分作れる。
アルアさんに相談してみよ。
「さて、もう少し行こうか」
「「「了解!」」」
人形系レアを倒しながら北辺を東へ。
やはり人形系レアの出現率が明らかに高い。
草を調べていたクララが喜びの声を上げる。
「コリアンダーです!」
「やたっ!」
これでかれえに絶対必要な香辛料のくみん、たあめりっく、こりあんだあは揃ったぞ!
来年楽しみだなあ。
「ちょうどよい感じに熟してますので、種を取っていきましょう」
「食い物が充実するのは嬉しいぜ」
「アイシンクソー、トゥー」
まだまだ見落としは多いだろうが、これで大体魔境も一回りしたな。
もう一度中央に寄ってベースキャンプに戻ろう。




