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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第274話:今日は魔境デー

 フイィィーンシュパパパッ。


「あらユーちゃん、いらっしゃい」

「こんにちはー。これ、お土産のお肉だよ」

「あっ、ありがとう!」


 海の女王に連絡後、ギルドでラルフ君を捕まえてラルフ君パパのカラーズ訪問はいつでもいい旨を伝え、さらにチュートリアルルームにやって来たのだ。

 今日は雨なのに、我ながらよく働いたな。


「しばらく来られなかったから、お肉が恋しくなったかと思って」

「ユーちゃんわかってる! ジークお肉! ハイルお肉!」


 バエちゃんのクネクネは本当にキレが良くなった。

 あたしのカンストレベルの眼力をもってしても残像に見えるよ。


「あたしついにレベル九九になったんだよ」

「ええ? すごーい!」

「でも何か忙しくなっちゃった。次いつ来られるかわからないからさ、お肉だけでもと思って」

「そうなんだ……」


 しおしおになるバエちゃん。

 しょげるなよ。

 バエちゃんもチュートリアルルームなんかに押し込められて暇だろうからなあ。


「またポッと時間空いたら来るからさ、元気出して」

「うん」


 話題変えるか。


「ソル君達、どうなってるか知らない? そろそろドラゴン倒せてもおかしくないレベルなんだけど?」

「魔境行きの転送魔法陣が出たって言ってたわ。でもドラゴン倒すにはそれなりのスキルが必要だから焦らないことにするって」


 クレバーな判断だな。

 さすがはソル君。

 ソル君のパーティーはバランスがいいとは言え、相手がドラゴンならレベルも六〇以上は欲しいだろうし。


「ユーちゃんにお世話になったって言ってたよ? すごくレベル上がったって」

「いや、聞いたかも知れないけど、世界樹を折っちゃった人がいてさあ。様子を調査しに行ったら魔力環境が変わってて、経験値高い魔物ばっかり出てきたんだよ。ソル君達と共闘で倒しまくってウハウハ。大変結構でした」

「そういうことだったんだ」

「魔宝玉もゴロゴロドロップするから儲かる儲かる。メチャメチャラッキーだったよ。また誰か世界樹折ってくれないかな」


 アハハと笑い合う。

 あたしは折らないとゆーのに。

 誤解してるかもしれないが、あたしはトラブルメーカーじゃない。

 どういうわけかトラブルとの巡り合わせがいいだけだ。


 バエちゃんがおずおずと話しかけてくる。


「ねえ、ユーちゃん働き過ぎじゃない?」

「やれること増えてくると皆やりたくなるんだよね。『アトラスの冒険者』になったからだなあ。実に幸せなことだと思ってる」


 考えてみれば交易は『アトラスの冒険者』と全く関わりのないことだ。

 あたしの冒険者活動が副業に過ぎないってのがよくわかるなあ。


「今期はユーちゃんの働きで、久しぶりに黒字になるんじゃないかって、話題になってるんだけど」

「『アトラスの冒険者』の事業が? 赤字だったん?」


 うちのパーティーが働いたから黒字になりそうってどんなだ。

 久しぶりってどーゆーことだ。

 魔宝玉の差益が大きいのかもしれないな。

 あれ高価だし。

 あたしの後輩のソル君ラルフ君が、脱落せず戦力になっていることも大きいかもしれない。

 転送魔法陣や転移の玉の初期投資大きそうだもん。  


「聞きたいことがあったんだった。『アトラスの冒険者』って固有能力持ちじゃないと選ばれなかったりするのかな?」

「ええ。やっぱり戦闘に関しては、固有能力の恩恵がある人が有利だから。最近の『アトラスの冒険者』は、全員固有能力持ちを選抜してるのよ」

「あとになって能力が現れる人は可哀そうだねえ」


 ダンのことが頭に浮かぶ。

 あんなんでも今やギルド有数の前衛の有資格者だしな。

 装備とスキルを整えればだが。

 もっともダンは自称情報屋なんだったか?

 『アトラスの冒険者』に選ばれても困るのかな?


「じゃあ今日は帰るね。また来るよ」

「またね。きっとよ」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 ――――――――――六四日目。


 こっちも雨は上がった。

 今日は魔境デーにしようと思っている。

 丸一日ないと魔境北辺を探索できそうにないので、いつかやりたいと思っていたのだ。


「ねえカカシー、畑の水って大丈夫なの?」

「水? 水がどうした?」

「水やりしてないなーと思ってさ」


 今日は凄草以外のステータスアップ薬草群の株分けの日だ。

 作業を行っていて、ふと気になった。

 カカシがうちに来てから畑に水やりをしてない。


「土の中の水を再分配してるから、よっぽど日照り続きにならない限り問題はないぜ。オイラに任せときな」


 すげえ、そんなこともできるのか。

 もっともカカシは魔力を細かく配分することができるくらいだからな。

 畑番が優秀過ぎてツラい。

 いや、ツラくはないけれども。


「マジで水が足りなくなるようなら、早めに言うからよ」

「わかった。カカシは本当に頼りになるなー」

「よせよ、照れるぜ」


 カカシはまことによくやってくれている。

 カカシだけじゃなくて、冒険者活動をしているクララアトムダンテの三人も偵察・連絡係のヴィルにしてもだ。

 あたしは恵まれているなあ。


「じゃ、行ってくるよ」

「おう、ケガすんなよ」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 さて、魔境にやって来たぞ。


「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。今日は朝からですか?」


 タマネギ頭の眼鏡をかけた小男、魔境ガイドのオニオンさんだ。

 魔境とスキルに関して、かなりの知識の持ち主で頼りになる。


「今まで北の端へ行ってみたことないんだよね。時間あるから様子見てくるよ」

「ああ、御苦労様です」


 今日は人形系の魔物に拘らず、魔境北側の調査をメインに考えようと思ってる。

 全員のナップザックが一杯になるまで探索の予定だ。


「注意すべきことあるかな?」

「北辺はところどころ魔力濃度の濃いところがあるそうです。ユーラシアさん達ならば危険はまずないでしょうが、オーガ帯とは言えない魔物の生息分布になっているとのことですので、一応御注意を」

「面白いな。ありがとう!」


 北はちょっとおかしなところらしい。

 とゆーか北は魔力濃度の濃淡があって出現する魔物の強さに差があるから、より冒険者にとって安全な南側にベースキャンプが設置されてるんだろ。


「いえいえ、実は北辺まで足を延ばす冒険者はほとんどいないのですよ。データが少ないですので、新たな知見がありましたらお教えいただきたいです」

「わかった、行ってくる!」


 ユーラシア隊出撃。

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