第27話:有能オブ有能
ソル君は『ハヤブサ斬り』を習得すると決めたか。
「やるなあ。決断力があるわ」
「そ、そうですか?」
『スキルハッカー』のスキル習得枠が一二個しかないというのは悩ましいわ。
特に最初は取捨選択の判断材料がないもん。
自分がソル君の立場なら即決できないよ。
有能だなあ。
「えーと、教えるにはどうしたらいいのかな?」
「もう教える意思は見せてるから、ユーちゃんがやって見せるだけでいいわ」
「わかった。じゃ、いくよ」
パワーカードを起動し、ハヤブサ斬りっ!
どう? 格好いい?
「それがパワーカードなんですね」
武器に食いついたか。
パワーカードは珍しいもんな。
バエちゃんが嬉しそう。
「オーケーよ。ソール君、もう『ハヤブサ斬り』を使える感覚あるでしょ?」
「はい。一度撃ってみます」
剣を抜いてハヤブサ斬りっ!
うむ、見事な切れ味。
免許皆伝といたそう。
「はい、ここでソル君にインタビューでーす。『ハヤブサ斬り』のスキル習得、おめでとうございまーす!」
「ありがとうございます」
「『ハヤブサ斬り』を覚えようと思った、決め手は何でしたか?」
「あ、いや、ユーラシアさんもイシンバエワさんも、オレが『ハヤブサ斬り』を覚えることに肯定的なニュアンスだったんで……。ぶっちゃけオレじゃ判断つかないですから、お二人の慧眼に乗っかりました」
「何だ、ただの有能オブ有能か」
「萌える思い身体中で感じてえええええ!」
おいバエちゃん、高速クネクネやめろ。
ソル君の目、あれはけったいなものを見る目だ。
「『湖の騎士の盾』で守りが格段に上昇、『ハヤブサ斬り』で魔物に与えるダメージ量も増えました。オレは『アトラスの冒険者』としてやっていけます。これも全てユーラシアさんのおかげです! ありがとうございます!」
「そうよ。ソル君が落伍したら、私の給料も下げられちゃうかもしれなかったわ。ユーちゃんありがとう!」
何だか言い分にかなり差があって笑えるな。
「あとソール君に冒険者として問題があるとすると……」
「年齢だね。こればっかりはどうしようもない」
わけがわからない、という顔をするソル君。
いや、仲間を加えようとすることを考えてみ?
経験の少ない一四歳のパーティーリーダーにメンバーが従うか?
「で、でもユーラシアさんだって若いですよね?」
「ユーちゃんは一五歳だけど別格よ。姉御肌だし、固有能力『精霊使い』は配下の精霊に対して絶対的な支配力があるし、それに姉御肌だもの」
姉御肌二回も言うから、ソル君が畏敬の目でこっち見てるじゃないか。
「バエちゃん。『アトラスの冒険者』に新しく加わる人って、あたしらくらいの年齢が多いの?」
「ええ。成功すれば長く活躍できるし、もし失敗しても十分やり直しが利くでしょう?」
「あ、そーゆー考え方で若者を入れるのか」
もっともな理由だった。
じゃ、年齢に関しては仕方ないな。
「年齢なんか時間が解決するしな。ソロで実績挙げ続けてれば、自然に仲間になりたい人も出てくるでしょ」
「何ならお試しでパーティー組んで、グッドなら継続でいいんだし。ドリフターズギルドできっと出会いがあるわよ」
「ええ、メンバー選定は急がないことにします」
ソル君、晴れやかな顔になってるじゃないか。
今後の見通しが立ったからだな。
あたしも嬉しい。
「ドリフターズギルドについて、詳しく教えてよ」
前にチラッとゲレゲレさんに聞いたやつだ。
バエちゃんにも聞こうと思ってて忘れてたわ。
「『アトラスの冒険者』達の、情報交換や知識の伝達が行われているところよ。食堂やお店、依頼を請けられる受付があったりするわ。武器やスキルの研究をしてる人もいるらしいけど、実はチュートリアルルームとはあまり交流がないのよね」
「ふーん?」
おそらくチュートリアルルームは運営側、バエちゃん達の世界の出先機関だけど、ギルドはこっちの世界の冒険者寄りなんだろう。
だからあまり行き来がないと見た。
「早くギルドに行ってみたいなあ」
「オレもです。楽しみですよ」
「ユーちゃんはもう一つクエストを終えると、次はギルドに行けると思うわ」
あと一つでギルドか。
期待したくなるなあ。
「今日は本当にありがとうございました。オレは行きます」
「クエストはベストな体調で臨むもの。今日はゆっくり寝なよ?」
ソル君、ばつが悪そうな顔になった。
やはり今からクエストに行く気だったな?
「お二人には世話になったんで、何かお礼がしたいんですが」
「私、お肉がいい!」
「ソル君が世界に名だたる勇者になった時、ユーラシアさんには世話になったんだって、あちこちで吹聴してよ。鼻が高いからさ」
「ユーちゃんズルい! それ格好いいじゃない!」
アハハと笑って解散になった。
明日は新入りを連れてくるからね。
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「ユー様、お帰りなさい」
「随分ゆっくりでやしたね」
もう夕食の時間だ。
すぐにスープが食卓に上る。
ダンジョンでかなりお肉を食べたので、夜は軽く腹を満たすだけの食事だ。
手に入れた防御力アップの堅草入り、効果があることを祈ろう。
「新しく冒険者になった子がいてね。クエストうまくいかなくて悩んでたから、さっき手に入れた盾あげてきた」
「喜んでたでしょう?」
「うん、ああいう実用品は使ってもらってこそだよ」
「姐御の気前のいいとこ、好きですぜ」
「よせやい」
戦士系は装備が揃わないソロだと序盤厳しいという、ソル君の例を話したら、アトムが大いに賛同してくれた。
「ああ、もっともな話で。しかし姐御、そのボウズは恵まれてやすぜ。勝てなかったところから勝てる喜びを知るんでやすから」
「おっ、相当格好いいセリフだね」
アトムの言う通りかもしれないな。
最初順調であとから高い壁にぶつかるより挫折を知る分強く、心折れないに違いない。
個人的には最初から最後まで、面白おかしくやれるのが最高だけど。
「明日午後にバエちゃんとこ行きまーす」
人間ですかい、とアトムが難色を示したが、精霊親和性高い人ですよ、私でも喋れるくらいですよとクララが説得して、そんならまあと納得してくれた。
よかったよかった。
バエちゃんとこ行きづらくなると、冒険に支障をきたすしな。
明日はおいしく洞窟コウモリのお肉をいただこうじゃないか。




