第267話:試しにレベリング
もう少し黄の民族長代理フェイさんに説明しておく。
「年齢とか貫禄で言うと、カラーズの代表とゆー役割は赤の民カグツチさんに振るべきなんだろうけどさ。あの人も売りたい売りたいで結構がっついてくるんだよ。出しゃばると商人さんに買い叩かれそうで、カラーズ全体のためにならない」
「よって俺が仕切れという話になるのか」
「うん。カグツチさんには、腹芸苦手ならこっちに任せろ。商人さん睨みつけてプレッシャーかけてって言い聞かせてきたから大丈夫だよ」
「ふむ、ということは俺の役どころは商人に吠えつく番犬か?」
愉快そうな顔になってきた。
できる男だなあ。
あたしもやりやすい。
「そゆこと。あたしが宥める役やるから、じゃあしょうがない嫌々だけど商売してやるって感じに持っていきたい」
フェイさんが頷く。
「黄の民の木工品や家具は、正直あんまり売れるものではないんじゃないかな」
「やはりユーラシアもそう感じるか」
「でもフェイさんとこの屋敷の中を見れば、作りの良さが商人さんにもわかると思うんだよねえ。戦後の建て替え住み替え需要で黄の民に仕事が入るといいなと思ってる」
「ふむ、俺に仕事を持ってきたのは、黄の民に対するサービスだったのか」
「まあ」
交易品っていう括りだけからすると、黄の民が一番苦しいだろう。
先々は米や塩がものになるんだろうけど、当分先だろうしな。
皆が儲けるのが理想だから、黄の民も稼いでほしいのだ。
「で、あたしから提案したいのは、黄の民に運び屋をしてもらいたいってこと」
「運び屋? つまりカラーズからレイノスへの?」
「もちろん帰りが手ぶらじゃもったいないから、レイノスからカラーズへもだけど」
カラーズ~レイノス間の交易が本格化すれば、どうせラルフ君パパのところの人員だけじゃ足りないのだ。
雇ってもらうのでも委託される形でもいいな。
初期から参加させてもらえれば慣れるのも早いだろうから。
「売るほどあるパワーで協力してちょうだい」
「まあ力だけは有り余ってるから向いているだろうな」
「戦闘力にも期待してるんだけど」
フェイさんの顔が厳しくなる。
「どういうことだ?」
「この前、ここからレイノスへの道筋で盗賊が出たんだよ。件の商人さんの依頼で退治したけどさ。中級冒険者くらいの力はあるやつだったんだ。戦争があると治安が悪化するのは避けられないから、今後戦闘力は重要になる」
「なるほど……」
「道中に魔物が出るかもしれないしね」
「しかし戦闘経験のある者はほぼおらん。弱い魔物くらいならともかく、中級冒険者クラスを相手にすることはできんぞ?」
「あ、それはどうにでもなるんだ。あたしがレベル上げを手伝えばいいから」
「ふむ?」
ピンとこないか。
冒険者じゃないもんな。
「試しにやってみようか。フェイさん、店空けても大丈夫?」
「うむ、問題ない」
「じゃあフェイさんと眼帯君がいいな」
「ズシェンか」
フェイさんが眼帯男を呼び寄せる。
「姐さん、オレッチに御用ォですかい?」
「うん、ちょっとわけあってあんたをパワーアップするから一緒に来て」
「了解ィですぜ」
ここでサイナスさんと別れ、フェイさんと眼帯男を連れて黒のショップへ。
「ピンクマン、魔境付き合ってくれない? 対レイノス交易の輸送隊はレベル上げしとこうかと思ってさ。ちょっとお試しにフェイさんと眼帯君連れてくの」
「ちょうど終わったところだ。構わんぞ」
ま、ピンクマンなら、帝国と戦争になった時のカラーズ防衛戦力として考えてるくらいのことは察するだろ。
あれ? どーしたサフラン。
悲しそうな顔するなよ。
「……サフランも行く?」
「はい、ぜひ!」
ピンクマンがビックリしてるぞ?
◇
フイィィーンシュパパパッ。
魔境にやって来た。
「ユーラシアさん、いらっしゃい。今日は大勢ですね?」
「レベル上げに来たんだ。彼は魔境ガイドのオニオンさんだよ」
「正しくはペコロスさんだ」
ピンクマンが訂正する。
「ユーラシアさんから離れないようにしてくださいね」
「姐さんの側ァ、一番安全かァい?」
オニオンさんが笑っている。
「魔境にはユーラシアさんが倒せない魔物など存在しませんので」
威勢のいい発言だなあ。
皆で出撃。
「ほう、これが魔境か。空気が重い感じがするな」
フェイさんが感心している。
「魔力濃度が高いから重く感じるみたいだよ。皆、これ触ってくれる?」
ギルドカードを起動して触らせる。
フェイさんと眼帯男がレベル五、サフランが一か。
「これがレベル。戦闘力の目安ね」
フェイさんが聞いてくる。
「先ほどお主の言っておった、中級冒険者くらいの力のある盗賊のレベルはどれくらいだ?」
「およそ一五から二〇の間くらいだった」
「ほう、なるほど。危険だな」
フェイさんが理解を示してくれる。
「ユーラシアさんのレベルはいくつなの?」
「九九。もうこれ以上は上がらないんだ」
ピンクマンが補足する。
「ちなみにユーラシアのパーティー以外でレベル九九は、ドーラに三人しかいない」
「ひィえええェ!」
眼帯男が魔物みたいな声を出す。
「じゃ、とりあえずレベル上げを体験してもらうよ。これ装備してて」
ピンクマン以外の三人に『ポンコツトーイ』のカードを渡す。
「魔物倒した時の経験値が五割増しになるパワーカードだよ。レベルアップが早いから」
オーガ帯で数体倒してからドラゴン帯へ。
「クレイジーパペットがいるな」
「んーあれ経験値は高いけど、先制で『フレイム』食らうから危ないんだよね」
ラルフ君なんか焦げて瀕死になってたからな。
狙うは人形系レア魔物のデカダンス。
やつは敏捷性が低いので安全に倒せる。
経験値はクレイジーパペット以上だし。
「あ、いたいた」
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あたしの攻撃! 勝った!
「リフレッシュ!」
「今の、掃討戦の時の最後の魔物ですよね?」
「そうそう、あれ危なくないし経験値すごく高いから、レベル上げにいいんだ」
フェイさんが聞いてくる。
「あの時はかなりの大激戦だったろう?」
「皆に助けてもらったねえ。もう二度とあんな苦戦はしたくない、とゆー思いが一人の美少女を成長させたのでした」
「ユーラシアのレベルアップスピードはメチャクチャなんだ」
全員が苦笑する。
「もう少しレベル上げしてくよ」
レベリングも進歩したもんだ。




