第263話:思ってたことがつい口に出ちゃった
ダンが自分の習得したスキルについて説明してくれる。
得意げだな。
ダンは固有能力とかスキルとかに憧れがあったみたいだから。
ヴィルが頭撫でられに行ったわ。
「先に覚えたのが『余裕の防御』だな。防御時に食らった弱体化を解除してヒットポイント回復ってやつ」
「魔法でもバトルスキルでもなくて、普通の防御が『余裕の防御』にグレードアップしたんだ?」
「おう」
へー、そんなスキルがあるんだな。
正直なところ、防御に何かしらプラスアルファ要素が加わるってのはお得感がある。
ダンの持つ『タフ』の固有能力は、ガードしたときの防御力上昇効果が高いそーな。
この防御スキルとの相性は非常にいい。
「で、もう一つが『生贄トゲゾー』ってバトルスキルだ。狙われ率・反撃率・会心率がしばらくの間大きく上昇するっての」
これもまた防御との相性がいい。
『生贄トゲゾー』を発動したターンには隙を作るものの、次ターンからはずっと防御でセルフコンボ状態だ。
物理攻撃メインの強敵相手の盾役スキルとしてひっじょーに有用と見た。
とゆーかうちのパーティーのあたしみたいな、決定的なフィニッシャーを持ってるパーティーからぜひともって誘われる能力だわ。
習得するスキルの数こそ少ないけど、『タフ』は盾役として強い。
「いいスキルじゃん。ダンにはもったいない」
「ハハッ、俺としちゃあ派手な攻撃スキルが欲しかったがな」
と言いながら嬉しそうだ。
「攻撃スキルは欲しけりゃ買えばいいよ。チュートリアルルームに売ってる。『五月雨連撃』とか連続衝系のスキルとか、結構いいやつあるよ?」
「あんたのお勧めのスキルは何だ?」
「人形系対策の『経穴砕き』は必須でしょ? パーティー組むなら、使用頻度は高くないけど『クイックケア』持ってると事故が減りそう」
意外そうなピンクマン。
「ほう、ユーラシアは思ったより堅実なのだな」
「ハッハッハッ、ピンクマンよ。あたしをただの美少女精霊使いと侮ったな?」
「チュートリアルルームか。カールに連れていってもらうのもいいな」
スキルの価格表見てるだけでも楽しいよ。
「オチ担当能力ほどではないけど、ダンの盾役能力はなかなかなんだよな。レベル五〇近くなったし、攻撃スキルが充実したらドーラにそんなに何人もいないくらいの前衛なんじゃないか」
ダンが心底意外そうだ。
何か今日あたし、意外な面を見せちゃってる?
「ユーラシアが素直に褒めるなんて珍しいじゃねーか」
「ごめん、思ってたことがつい口に出ちゃった」
「あんたは本音と建前逆にしたほうが、俺の精神衛生上いいんじゃねえか?」
知らんよ。
エンタメを追求する視点とは相反するんだよ。
「ユーラシアは何もスキルを習得しなかったのか?」
「またデタラメなスキルでも覚えたら聞かせろ」
「レベル上がってきたら覚えないね。カンストした時にスキル覚えたような感覚あったんだけど、実際には覚えてなかった」
「何だそれ?」
「カンスト時の感覚ということなんだろうな」
ピンクマンの言うことが合ってそう。
うちのパーティー全体として、このスキル持たせたいってのはあるけど、今あたし個人で欲しいスキルは特にない。
強いて言えば飛行魔法かな。
自由に飛べれば行動範囲が増えそうだけど、売ってるスキルじゃないし。
「ピンクマンは固有能力持ちなんだっけ?」
「小生は『焦点』だな。攻撃の命中率が非常に高い」
「だから魔法銃士なのか。考えてるなー」
あたしはあんま遭ったことないけど、素早くて攻撃の当たりにくい魔物には特に有効だろう。
『アトラスの冒険者』に選抜されるような人は皆、固有能力持ちなのかな?
今度バエちゃんに聞いてみよ。
「うちのクロード族長の件なのだが」
「カラーズとレイノスの交易を担当してくれそうな商人が、カラーズに一度来てくれることになったんだよ。日程決めないといけない」
「ラルフの親父のことか?」
「うん、ヨハン・フィルフョーさん。ラルフ君パパなら色々融通利かせてくれる気がするし」
ラルフ君パパは、会ってみて有能な人だってことはわかった。
今のところ緑の民関係以外で問題はない。
うまく働いてくれるだろ。
「ところで酢はどうなったかな?」
「少し売れた」
「一度売れたらしめたものだよ。良ければリピーターになるし口コミで広まる」
灰の民の村とコラボして、酢漬け保存食を大々的に売り出してもいいな。
商売のことを考えるのは楽しい。
「どちらにしてもユーラシアと一度話したいとのことなのだが」
「クロードさんが? 明日午前中に行くよ。そう伝えといてくれる?」
「了解した」
忙しくなってきたぞ。
ヴィルをぎゅっとしてから、転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「ねえクララ、干し柿ってどれくらいから食べられるんだっけ?」
「二週間以降くらいですかね。そろそろ軽く揉んでおくと、渋みが抜けるのが早いですよ」
「何事にもコツがあるんだなあ」
ダンテが言う。
「トゥモローのトゥモローはレインね」
「じゃあ明日雨の当たらないところに取り込まないとな」
明日から商売も本腰入れねばならない。
やれることはやっとこう。
「姐御、『氷晶石』はもう、全然冷たくありやせんぜ」
「よし、とりあえず家の中にしまっておこう」
せっかくの『氷晶石』なので、冷蔵庫を実現したい。
でもこれから冬だし、家の中で冷気が漏れたりすると寒そうだなあ。
かといって外だと作物の生育の影響あるかも?
影響なさそうな位置とすると、やっぱり南の敷地外なのか?
いや、夏限定で使うという作戦もあるわ。
「ユーちゃん、明日は凄草の株分けができるぜ。忘れずにな」
「じゃ明日は株分けしてからカラーズの各村だね」
「「「了解!」」」
クララが提案する。
「夕食は薬草と野菜のスープで軽くすませればいいですか?」
「うん。今日は昼御飯の時間遅かったし、食べ過ぎちゃった」
だってダンの奢りだったんだもん。
奢りと聞いて一二〇%腹を満たさないのは冒険者じゃないし。
今日もいい一日だった。
もう世界樹は稼ぎどころとしては使えないけど、ついにレベルもカンストした。
今持っている高級魔宝玉は、今日得た分を合わせて黄金皇珠一〇個、羽仙泡珠六個、鳳凰双眸珠一個となっている。
本当に大富豪になれちゃうかもしれないよ、どうしよう!
ちなみに本作はユーラシアの夢が大体叶うお話です(笑)。




