第260話:再びボーナスデー
おっぱいさんが聞いてくる。
どーぞ御遠慮なく。
「人形系の魔物は魔宝玉ドロップもメリットですけど、経験値も高いのでしょう? ユーラシアさんは今レベルいくつなのですか?」
「今はえーと、九三になった」
「「九三!」」
オニオンさんとおっぱいさんが驚くが、ダンは笑ってる。
「あんたはそういうデタラメなやつだよ」
「あんたにもそーゆーデタラメを体験させてやんよ」
「ということは、ソールさんのレベルは現在いくつほどに?」
「正確にはわかんないけど、五〇は越えてるはず」
「五〇オーバーですか。では早めに『魔境トレーニング』のクエストを配給しなくてはなりませんね」
あ、おっぱいさんが石板クエストの配給にメインで関わってるのかな?
何となくそんな気はしてたけど。
「ソル君をよろしくお願いしまーす」
オニオンさんとおっぱいさんが頷く。
「ユーラシアはソールをかなり気にかけてるよな。何でだ?」
「やっぱ可愛い後輩だもんなー」
「ラルフだって後輩じゃねえか」
「ラルフ君は可愛がり過ぎて燃え尽きそうになっちゃってたからなー」
「クレイジーパペットの『フレイム』で炙られて文字通りな」
アハハと笑い合う。
でも今のラルフ君は立派な冒険者だよ。
おっぱいさんに聞いとこ。
「案山子とか魔宝玉のクエストはあたししか請けそうにないじゃん? あれらは専用の石板クエストにならないのかな?」
いや、魔宝玉のやつは石板クエストドリフターズギルド・セットの中の一つの可能性が高いのか。
でも依頼所でもらったのは確かだしな?
そう考えると石板クエストと依頼所クエストの境目もあやふやだ。
おっぱいさんが答える。
「厳密にルールは決まっていないのですけれども、依頼者があるものは原則的に石板クエストにはなりませんね。依頼者にとっても自信のある冒険者が素早くこなしてくれた方がありがたいでしょうし」
なるほど、ごもっとも。
ちゃんとした理由があるんだなあ。
「また石板クエストは拒否できません。依頼所でクリアできそうにないクエストを押しつけられても困ってしまいますでしょう?」
「……あたし案山子と魔宝玉のクエスト、謎の圧力で拒否できなかった気がするんだけど?」
「気のせいです」
気のせいだったか。
まーおっぱいさんに頼まれるのは悪い気しないからいいんだけれども。
「ユーラシアさん」
「はい?」
「私もヴィルちゃんをぎゅーしたいんですけど、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ!」
「どうぞだぬよ?」
ヴィルがどういう反応を示すか楽しみだ。
「ぎゅー」
「ふおおおおおおおおお?」
こら男性陣、羨ましそうな目で見んな。
「と、とてもすごかったぬ……」
ヴィルにもうちょっと語彙力があれば、と思いつつ夜は更けてゆく。
◇
――――――――――六一日目。
フイィィーンシュパパパッ。
今日も朝からギルドに出勤だ。
最近毎日よく働いてるなあ。
だからいいこともあるのかな?
神様に愛されるあたし。
「やあ、チャーミングなユーラシアさん。今日も朝から出なのかい?」
「うん。もう一度世界樹見てくるね」
ギルド内部へ。
ペペさんとダンとピンクマンだ。
ピンクマンの表情は強張ってるが、あたしに感謝しているのは何となくわかる。
「ちょっと待ってて。マジックウォーター買ってくる」
魔法の葉をたくさん食べるのは懲りた。
だってメチャクチャ不味いんだもん。
あれは人間の舌に触れさせちゃいけないものだと昨日学んだ。
「じゃ、行こうか。ペペさんとピンクマン、フレンド登録して」
おーおーピンクマンよ嬉しそうに。
ダンがこそっと言う。
「思ったより面白れえなニヤニヤ」
「そーだねニヤニヤ」
転移の玉を起動し、ペペさんの家へ。
◇
「薙ぎ払い!」
人形系レア魔物を倒しながら、世界樹を目指して進む。
ちなみに素材やアイテムの配分は昨日と同じだ。
つまり皆もーかる。
「おーおー、また藍珠と透輝珠かよ。いいのか? 本当に俺達で分けちゃって」
「もちろんだよ。取り決めたじゃん」
うーん、しかし?
「……何か昨日より魔物の数が少ない気がする」
「そうか? じゃあ昨日はよほど多かったんだな」
いや、明らかに少なくなってる。
単に昨日たくさん狩ったからか?
魔物の湧きで魔力を消費しちゃうのかもしれない。
とするといつまでもここを狩場にするわけにもいかないな。
狩れる内にぼろ儲けしておかねばっ!
「何でもいいけど、ピンクマン緊張し過ぎじゃない?」
「右足と右手が一緒に出てるぜ。ヘタクソな操り人形みてえだ」
ペペさんガードの名目でピンクマンを張りつけてあるのだが。
「あれ、喜んでもらえてるんだよねえ?」
「間違いねえよ」
ダンは断言するが、ピンクマンが挙動不審過ぎてあたしにはどうにも判断できない。
もっともダンもピンクマンも順調にレベルは上がってるからバッチリだ。
「クレイジーパペットだ。今日初めて三体一度に出てきたな。『フレイム』厳しいからしっかりガードしてね」
「おう」
まあ結構なレベルになってるし大丈夫だろ。
一体も逃げない、ラッキー。
三回フレイムを食らうが、『薙ぎ払い』一発で退治する。
「リフレッシュ!」
すぐ次にデカダンスが出てくる。
まあ一撃ですけど。
「デカダンスの方が危なくなくていいねえ」
「あれって掃討戦の時のデカブツだろ? 完全にザコ扱いじゃねーか」
「ザコは失礼だよ。あたしは敬意を込めて『真経験値君』って呼んでる」
「あんたの辞書に載ってる『敬意』の意味が知りてえ」
後ろを振り返る。
黙々と素材や薬草を採取するペペさんと、カクカクとぎこちなくついてくるピンクマン。
うーん、仲良し!
「ペペさーん! 疲れてない?」
「だいじょーぶ!」
もう世界樹見えてるけどね。
戦闘回数が多いからなかなか進まない。
「おい、これ本当に昨日の方が魔物多かったのか?」
「うん、デカダンスも普通に二体三体で出てきたんだよ」
「マジか」
まあ今日も十分な数が出現するのではあるが。
「来たぞー。ウィッカーマンだ」
「聞いてる。最強の人形系レアってやつだな? 限定四人までしかバトルステージに上がれないという」
「そうそう。下がっててね。あたし達だけでいく。『メドローア』を連発で撃ってくるから、流れ弾気をつけててね」
「了解」
人形系レア魔物を掃討しつつ、世界樹のあった場所を目指す。




