第258話:魔法とバトルスキルの違い
「……って感じだったんだ。ボーナスデーでサービスデーでラッキーデーだったよ」
「よかったですねえ」
デス爺とオニオンさんには折れた世界樹と周辺の様子を報告しておいた。
魔境ガイドのオニオンさんニコニコ。
オニオンさんはずっとべースキャンプで待機しているお仕事だから、エンターテインメントに飢えてるのかもしれないな。
美少女精霊使いが楽しみを提供してやんよ。
「明日もう一回魔境世界樹エリア行って、様子見てくるんだ」
「要するにボーナスデーよもう一度、経験値と魔宝玉を稼いでくるってことですよね?」
「バレたかー」
オニオンさんと笑い合う。
「でもどういうカラクリでウィッカーマンを倒せたんです? 一昨日の段階では、与えるダメージ量を倍くらいにしないと難しいって話じゃなかったですか?」
「武器・防具屋のベルさんから、こういうパワーカードを手に入れたんだ」
『前向きギャンブラー』のパワーカードを見せた。
「パワーカード工房のアルアさんの交換リストには載ってないやつなんだよね。今は作れないのかもしれない」
「攻撃力+一五%、会心率+八五%、防御力-三〇%、魔法力-三〇%ですか。これはまた非常にピーキーな……」
「常時装備するカードじゃないんだけどさ。ウィッカーマンみたいな魔法攻撃しかしてこない魔物なら、防御力落としても痛くないしね。物理で与ダメージを飛躍的に上げるカードとしてはピッタリだった」
「なるほど、足りないダメージ量をクリティカルヒットで補うというアイデアですか」
「うん。パワーカードはいろんな解決法が用意できるっていう面では面白いわ。あたし達向きの装備品だった」
最初は精霊が装備できるのはパワーカードしかないからっていう理由だった。
でも今では便利だなあって思ってる。
慣れてきちゃってるのもあるし、もう他の装備品は考えられない。
ん? オニオンさんは何かを考えているみたい。
「『前向きギャンブラー』は、ウィッカーマンを仮想敵に見立てたパワーカードではないですかね。他の魔物相手で、前衛の防御力を落とすという発想はないと思います」
「昔もウィッカーマンを倒そうっていう気概があったのかなー」
結構な胸熱だな。
オニオンさんが微笑む。
「古の制作者の遺志を継いで、今のユーラシアさんが成し遂げる。いいじゃないですか。ワタクシは好きです」
「オニオンさん、ロマンチストだねえ」
今日のテーマはロマンだな。
「手伝いのスキルハッカー、ソールさん達のレベルはどうなりましたか?」
「言い忘れてたわ。レベル五〇超えてたから、魔境トレーニングのクエストを振られるんじゃないかな」
「そちらも楽しみですねえ」
ソル君なら魔境で得るものも多いだろ。
あたしも先輩としていい仕事した。
目の前の魔宝玉に目の色変えてただけだろって?
細けえことはいーんだよ。
「今日、仕事引けたらギルドへ来てよ。奢るからさあ」
「嬉しいですね。では遠慮なく」
「あたし寄るとこあるから先行くね」
「お疲れ様でした」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
結構素材を手に入れたので、アルアさんのパワーカード工房にやって来た。
「アルアさーん、こんにちはー」
「おうユーさん、師匠は出かけてて今いないぜ。うちが相手でいいか?」
「もちろん。ゼンさん。これお土産だよ、お肉」
「こりゃあ、ありがてえ! 肉は大好物なんだぜ!」
うん、一時期に比べ痩せてはいるけど、目の輝きもしっかりしてるし大丈夫だろ。
お肉は元気の源だし。
あんまり仕事にのめり込み過ぎないでね。
「最近どう? 職人稼業は」
「……まだまだだな」
「アルアさんが基本的なカードは任せられるって言ってたよ。短期間で大したものだと思うけど」
変な間があったのが気になるな。
職人には職人の壁みたいなものがあるんだろうか?
あたしが聞いたところでどーにもなんないかもしれないが、話すと楽になったりヒントになったりすることもあるよ。
「師匠もそう言ってくれるんだが……」
「具体的に何が問題なの?」
「パワーカードにスキルを付与することがあるだろ? 魔法やバトルスキルに馴染みがなかったせいか、どうにもカンが掴めねえ。違いもわからねえくらいだ」
「高度な悩みだね」
言われてみりゃ、他人に魔法とバトルスキルの本質的な違い教えろって質問されると困るな。
あたしは研究者じゃないし、そーゆーの身体が覚えてるもんだし。
「……確かに難しい気がする」
「ユーさんでもかい?」
「いや、説明が難しいんだよ。見れば違いは感覚的にわかるから」
腕を組んで首を捻るゼンさん。
「魔法もバトルスキルも見せてもらったことあるんだがな……」
「デカいやつは見たことないでしょ?」
ゼンさんを外に連れ出す。
あ、ギルドへ行くのちょっと遅くなりそうだな。
赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「ギルド行って、サクラさんに夕御飯奢るから一緒に食べよって言っといてくれる? あたし達もそっち行くけど、少し遅れそうなんだ」
『サクラって誰だったかぬ?』
あーヴィルも名前が頭に入ってなかったか。
「すごいおっぱいさん」
『あっ、わかったぬ!』
「オニオンさんもギルド行くから、捕まえといてね」
『了解だぬ、任せるぬ!』
これでよし。
「じゃゼンさん、まず魔法から見せるよ。クララ、ゆーっくり『精霊のヴェール』お願い」
「はい」
ダンテの『デトネートストライク』だともっとわかりやすいけど、谷崩れると笑って誤魔化せそうにないからなー。
「ほら始まった、魔力が膨らんで大きくなってくのがわかるでしょ?」
「おう、わかるぞ!」
高レベル者の大きい魔法ほど魔力の高まりは見やすいのだ。
「で、右手に魔力を集めて放つ」
「うんうん」
クララの手から魔法が撃ち上がり、美しい光のひだと虹のようなグラデーションが空に現れる。
「奇麗だな」
「敵の属性攻撃をかなり和らげる、精霊専用の魔法なんだけどね。さて、次バトルスキル行こうか。まず最初にマジックポイントを使用するバトルスキルをオレンジの子がかけまーす。で、最後にあたしがマジックポイントを使わないバトルスキルを使うよ。ゼンさんも戦闘に混ざって、防御してればいいから」
「よしきた」
獲物を探そう。




