第250話:再戦
フイィィーンシュパパパッ。
「美少女精霊使いユーラシア再び参上! こんにちはー、オニオンさん」
「いらっしゃいませ。ユーラシアさんは働き者ですねえ」
「そお?」
「一日に二度も魔境に来る人はほとんど記憶にないですよ」
魔境ガイドオニオンさんが苦笑する。
いかに魔境が素敵なリゾート地だといっても、何度も来るのは面倒だからか。
「さっき『氷晶石』は無事回収できたから、今度はもう一回ウィッカーマンにチャレンジしてくるよ。『メドローア』対策もバッチリだからね」
「ユーラシアさんなら、いつかウィッカーマンも倒せると信じていますよ」
「いつかじゃなくて、今すぐ倒したいんだよなー。クエストの都合があるから」
高級魔宝玉を集めねば。
よーし、頑張ろう!
あ、オニオンさんに聞いておかねば。
「ところでペペさんの家ってどの辺りなのかな? 魔境の近くって聞いたんだけど」
「ペペさんはここトレーニングエリアではなく、世界樹エリアにお住まいですよ」
「世界樹エリア?」
魔境の定義は魔力濃度が濃く、その関係でドラゴンクラス以上の凶悪な魔物が棲息している場所とのこと。
何とドーラ大陸の魔境はここだけじゃないんだそうだ。
他の魔境に行ったら、ここにはない素材や有用な植物が手に入るかもしれないな。
もっともトレーニングエリアだけでも全踏破するのは大変だけれど。
「最も広くてメジャーなこのエリアが、『アトラスの冒険者』のための訓練場として開放されている、ということです。またイビルドラゴンに代表される、最強クラスの魔物が住むのもここだけです」
「りょーかいでーす。ペペさんいないなら安心だな。歩いてる内にペペさんの魔法で吹っ飛ばされたらどうしようかと思ってたんだよ」
「いやいや、さすがにそれは……」
オニオンさんがハンカチで汗を拭く。
何だよ、過去似たよーなことがあったのか?
不安になるじゃないか。
ペペさんだとマジでありそーなのが困る。
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
「素材拾いながら、真っ直ぐ中央に向かうよ。クレイジーパペットとデカダンス以外は基本無視で」
「「「了解!」」」
人形系レア魔物を倒しながら魔力濃度の高い中央部へ。
デカダンスもなかなか黄金皇珠はドロップしないもんだ。
結構なレアなのかなあ?
現在のレベルは六七。
「そろそろ魔境中央部だね。カード再編成するよ」
あたし……『シンプルガード』『ポンコツトーイ』『あやかし鏡』『スナイプ』『アンリミテッド』『暴虐海王』『三光輪』
クララ……『マジシャンシール』『エルフのマント』『逃げ足サンダル』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『光の幕』『三光輪』
アトム……『ルアー』『厄除け人形』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『ハードボード』『刷り込みの白』『三光輪』
ダンテ……『プチエンジェル』『ボトムアッパー』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『癒し穂』『スペルサポーター』『三光輪』
予備……『寒桜』×四『誰も寝てはならぬ』『シールド』『ヒット&乱』『アンチスライム』『サイドワインダー』『オールレジスト』『ナックル』『スラッシュ』『火の杖』
全員が『メドローア』対策の『三光輪』を装備した。
『三光輪』は三〇%の火耐性氷耐性雷耐性がある上に、魔法防御が一五%アップする。
これでアトムはもちろん、あたしもガードなしで『メドローア』連発にギリギリ耐えられそう。
後衛陣が二発連続で浴びるとやられるけど、そんな低い可能性を気にしても仕方ないだろう。
アトムが『刷り込みの白』であたしの攻撃を『コピー』すれば、あたしの最強のバトルスキル『ハヤブサ斬り・零式』を四連続で食らわせることができる。
これでどうだ?
「……ウィッカーマンね」
「ちゃらーん!」
「何ですかそれ?」
「希望の鐘の音だよ。あたし達の魔宝玉ゴッソリ伝説はここから始まるのだ!」
士気を高めたった。
よーし、ウィッカーマンにリベンジだ!
レッツファイッ!
ウィッカーマンのメドローア連発! あたしとアトムが一発ずつ受ける。よし反撃だ! クララの勇者の旋律! ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・零式! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・零式! アトムのコピー! あたしの攻撃を繰り返す。ハヤブサ斬り・零式! もう一度ハヤブサ斬り・零式! ウィッカーマンは逃走した……!
「むーん、これでもダメだったか……」
「メイビー、ハーフくらいね」
手応えがなかったわけじゃない。
が、ダンテの言うようにおそらくヒットポイントは半分くらいしか削れてない。
「姐御、ちょっと難しいぜ」
「まあねえ」
「『メドローア』対策は万全だったと思います。レベルが上がればさらに安全度は増します」
「うん、クララの言う通りだ。前回に比べて進歩の見られる点もあった」
「プロブレムはアタックダメージが足りないことね」
「レベルがカンストしても多分……」
「それなー」
今のカード編成ではマスタークラスになったとしても、ウィッカーマンのヒットポイントをワンターンで削り切るのはムリだろう。
『ポンコツトーイ』を攻撃系カードに置き換えたとしても、ちょっと難しいだろうな。
地道にステータスアップ薬草で力をつけていけば、いつかは倒せそうではあるが、一体何年先のことになるやら。
魔宝玉クエストの期限にはとても間に合わない。
魔宝玉クエスト終わっちゃったら、そもそもウィッカーマンを倒さなきゃいかん動機もなくなっちゃうしな?
「リフレッシュ!」
まあしょうがない。
「気持ち切り替えて。カード編成を元に戻して帰還する」
「「「了解!」」」
◇
「ただいまー」
「どうでした? ウィッカーマンは」
あたしは首を振る。
「ダメだった。ヒットポイント半分くらいだなー削れたの。今のままじゃレベルカンストしても勝てそーにない。どーしよ?」
オニオンさんが気遣わしげに話してくる。
「未だかつて誰も倒せていない魔物です。簡単にはいきませんよ」
「だよねえ」
「今日はゆっくり休んでください。疲れを残すのはよろしくないです」
「オニオンさんの言う通りだな。ありがとう」
解決策が見えないと疲労感は増すものだ。
今日は御飯食べてゆっくり寝るとしよう。
転移の玉を起動し帰宅する。




