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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第248話:芸人返しされた

 マウ爺が笑う。


「シバよ。今日のお主は饒舌じゃの」

「たまには」


 シバさんが少しきまり悪そうだ。

 普段はあんまり喋んない人なのかな?

 あ、一人が性に合うって言ってたか。


 シバさんが説明を続ける。


「同じ能力持ちでも、人によってスキルの覚えの遅早があるだろう? あの現象は固有能力の強弱によるのだ」


 なーるほど。

 ウォール系の魔法の覚えの早さの差が気になったことあったけど、あれはレイカの『火魔法』やアトムの『土魔法』の固有能力が強いから早かったのか。

 クララとコケシの白魔法の習得の比較でもそうだ。

 つまりクララはコケシより『白魔法』の発現度合いが強い。


「例えばユーラシア君の『ゴールデンラッキー』の固有能力は非常に強い」

「そーなの? あとで発現したんだけどな」

「だから変なスキルばかり覚えるんだぜ」

「変ゆーな」


 ダンは全く失礼な。

 ん? 掘り下げるつもりなのか?


「知らない間に増えてた固有能力なんだろ?」

「うん」

「そういうの自分でわからねえのかよ。俺に『タフ』が発現してるの、あんた知ってたみたいじゃねえか」


 自分でもどういうことなのかわからんのだが。


「レベルが上がったら、何となく人が固有能力持ちか否かは判別できるようになったな。でも自分に固有能力増えたとかはわかんない」

「ユーラシア君はもう一つ、発現間近と思われる素因がある」

「あれ、楽しみだな。どんなやつ?」

「種類まではわからん」

「あんたまた固有能力が増えるのかよ。まったくどうなってんだ」


 んなこと言われても。

 マウ爺が続ける。


「鑑定士といってもピンキリじゃ。シバのように能力の強弱まで把握できる者は多くない。固有能力の素因の個数まで見える者もな。しかしシバでも素因の種類までは知り得ないのじゃ」

「わかった。奥が深いんだねえ」

「この悪魔がすごく『いい子』だというのはわかる」

「いい子ぬよ?」


 シバさんがヴィルの頭を撫でてくれる。

 ヴィルも気持ち良さそうだ。


「シバは『バード』の能力も強力でな、強過ぎたと言っていい。強化弱体化なんぞを受け持つより直接攻撃のほうが効率がいいからの。十分にコントロールできぬ内に強力なバードスキルを使い、味方にも被害を出すと」

「だからソロなんだ?」

「コントロールできる頃には最早パーティーなぞ必要としなかったのだな。皮肉なものだ」


 ヤベー人もいるもんだ。

 ペペさんとは方向性の違うヤバさ。


「格好からは吟遊詩人ってわからないねえ。ショートソードとダガー持ってるし」

「レベルが上がってくると『五月雨連撃』等のスキルが使用頻度高くてな」

「あーわかる」

「ダガーは主に食える魔物を仕留めたときの血抜き用だ」


 ごもっとも。

 何となく吟遊詩人は弦楽器を手にしてるイメージがあったけど、やっぱ冒険者だわこの人。 


「この年齢になっても吟遊詩人が諦めきれなくてな。機会があったらユーラシア君のエピソードを聞かせてくれ。『精霊使いのサーガ』として歌いたい」

「はあ」


 最強冒険者になってまで吟遊詩人やろうなんて夢見てるのかよ。

 レベル高い人ほどおかしい気がする。

 おいこら、あたしはおかしくないわ!


「ユーラシアに聞いたって面白い話は出てこないぜ。俺に聞けよ」

「面白い話はいいでしょ。かっちょいい話をしてよ」

「あんたそれでも芸人か」

「芸人じゃねーよ!」


 芸人返しされたよ、ちくしょお。


「ポロックさんのお舅さんというのがシバさんなんだよね?」

「うむ」

「えっ、マジかよ? 知らなかったぜ」


 ダンが知らないくらいなら、ほとんど広まってない話なんだろうな。


「いや、さっきポロックさんが義父が来てるって言ってたから。それらしい年齢の人、マウさんかシバさんしかいないし」

「ポロックさんの娘さんは可愛いって聞いたぜ」


 シバさんが表情を和らげる。


「うむ。目に入れても痛くない孫娘だ。体調を崩しやすいのが玉に瑕だが」


 そっかあ、愛されてるんだなあ。

 体調を崩しやすいって心配だな。

 これから冬だから特に。


「ユーラシアは午後どうすんだ?」

「急に話題が変わったね。魔境行くつもりだよ」

「例の魔宝玉クエストだな? 打倒ウィッカーマンか?」

「うん、ウィッカーマンも一当てしたいけど、探してる香辛料とかがあるんだよね」

「「香辛料?」」


 マウさんとシバさんの声が揃う。

 ウィッカーマンじゃなくて香辛料に反応するのか。


「異世界のすごくおいしい料理があるんだ。それに使う香辛料がこっちの世界でも手に入れられるっぽいの。でもまだ見つからないのがあって、魔境で探してるところ。魔境はあっちこっちで結構気候や環境が違うから、生えてる植物もバラエティーに富んでるんだよ」

「ほう、嬢はそんなこともしているのか?」

「あたしは生活を豊かにするために冒険者やってるようなもん。昨日、『氷晶石』見つけたんだ。お肉を冷やして取っておける保管庫が作れるなーって」

「実に面白い!」


 いやだからそんなの『精霊使いのサーガ』の題材に使わないでおくれよ?


「ごちそーさま。あたしは帰りまーす」

「さらばだ」

「魔境を甘く見ぬようにの」

「俺に惚れんなよ」

「バイバイぬ!」


 何言ってるんだダンは。

 もっと気の利いたセリフ考えとけ。

 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 帰宅後、ヴィルに確認しておく。


「ねえヴィル、シバさんの印象はどうだった?」

「優しい人だぬ」


 嬉しそうに言う。

 頭撫でられたヴィルが言うのなら正しいんだろう。


「ダンが『ドーラに三人いるマスタークラスの一人』って言ってたけど、マスタークラスってペペさんとシバさんと、もう一人は誰かな?」

「パラキアスだと思うぬ」

「だよねえ」


 イビルドラゴン倒したなんて話もあるしな。

 ただ実際会ってみてすごい人だってのはわかるんだが、強さについてはよくわかんない。

 その辺がパラキアスさんの計り知れないところなのかもしれないが。


「ありがとうヴィル。偵察任務よろしく頼むね」

「はいだぬ!」


 ヴィルを見送って家の中へ。


「ただいま! 遅くなってごめん。最強の冒険者シバさんがいたよ。吟遊詩人なんだって。明日の午前中にラルフ君家行くことになった。コブタ肉とフルコンブ塩持ってく。さあ魔境行こう! シャベルとクワ忘れないでね」

「「「了解!」」」


 うむ、うちの子達はこれくらいの情報量では混乱したりはしない。

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