第246話:最強の冒険者
「じゃ、あたしはギルド行ってくる。すぐ帰ってくるつもりだけど、昼までに戻らなかったら食べちゃっててね」
「はい、行ってらっしゃい」
灰の民の村から帰ってきてコブタ狩りのあと、クララ達に解体処理を任せ、その間にあたしはギルドだ。
ギルドは突発的なことがよく起きるから、用が終わる時間は比較的読みにくい。
特に今はドリフターズギルド・セットのクエストが出てる最中だしな。
赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『よく聞こえるぬ!』
「今からギルド行っててくれる? あたしも行くから」
『わかったぬ!』
ヴィルはギルドだと居心地が良さそうなんだよな。
皆が可愛がってくれるみたいだし。
なるべく誘ったろ。
さて、クエストで納品対象の黄金皇珠は家に置いとくとして、他の昨日手に入れたアイテムは換金してこないといけない。
そーいやうちのパーティーが売却してる魔宝玉の転売で、ギルドの収益が結構上がってると聞いた。
人形系レア魔物を専門に狩ってるのはあたし達だけだしな。
あたしも儲かる、ギルドも儲かる。
ウィンウィンで喜んでもらえるのはいいことだ。
より魔宝玉ハンターの勇名を轟かせねばなるまい。
フイィィーンシュパパパッ。
転送魔法陣からギルドへ。
「こんにちはユーラシアさん。いつもチャーミングだね」
「ポロックさん、こんにちは……あれ、何か変わったことあったのかな?」
いつも鷹揚でニコニコしているポロックさんが、今日は若干ソワソワしてる気がする。
どーしたんだろ?
「わかるかい? 実は義父が来ていてね」
「お義父さん?」
ポロックさんは愛妻家だという。
その奥さんの父親がいると、さすがに平常心ではいられないものなんだな。
どの人だろ?
多分食堂だろうから、あとで見に行こ。
まずおっぱいさんに魔宝玉クエストの進捗報告だ。
ギルド内部へ入り、真っ直ぐ依頼受付所へ。
「こんにちはー」
「ユーラシアさん、こんにちは」
「例の魔宝玉クエストの進捗だけど、一応黄金皇珠一個は手に入れたんだよ」
おっぱいさんが我が意を得たりとばかりに頷く。
揺れる。
……思ったより喜んでもらえてるようだ。
依頼の成功が決定したから手数料の取りっぱぐれがない、それだけではないような気がする。
「さすがはユーラシアさん、期待通りです」
「でもゴッソリというのは難航しそうなんで、取り急ぎ報告まで」
「よろしいではないですか、ゆっくりで。もうクエスト失敗ということはないですし」
御説ごもっとも。
そしてこの辺のおっぱいさんの対応は普通。
ふむ、もう少し引っ張ってみるとどうだ?
「うーん、大チャンスが転がってるのに、ものにできないのはモヤモヤするんだよねー。ゴッソリ魔宝玉を送りつけて腰抜かせてやりたい」
「ユーラシアさんはいつか高級魔宝玉をゴッソリ持ってくると信じております。本当に期待してますから」
乗ってきた。
おっぱいさんの言葉にかなりの熱量を感じる。
この前もチラッと思ったけど、おっぱいさんこの依頼主と何かあるんだろうか?
「任せて、頑張るよ!」
あたしがこのクエストにおいて高級魔宝玉をたくさん手に入れることは、あたしだけじゃなくておっぱいさんも嬉しいことらしい。
きっと依頼主も感謝してくれるだろうしな。
となればやはりウィッカーマンを倒したいものだ。
さて、次は買い取り屋と。
あ、ヴィルとラルフ君パーティーだ。
ヴィルを軽くぎゅっとしてやる。
「師匠、おはようございます」
「皆おはよう。カラーズの内、今回レイノスとの交易に参加したいという各村の、販売できる商品のリストが上がってきたよ。ただ守旧派の反対もあるんで、簡単じゃないんだよね。一度ヨハンさんと会いたいから、段取りつけてくれないかな?」
「その件で父からも言付かってまいりまして、明日ではいかがかと?」
ほう、急ぐじゃないか。
何か思惑があると思った方がいいか?
まあカラーズの族長達に急かされそうだから、あたしも早い方が都合いいしな。
「いいよ、じゃ明日の昼頃で。午前中にギルド来ててよ。美味いお肉持ってく」
「師匠が美味い肉と言い切るからにはかなり……」
「お肉自体の美味さと調理法と調味料、これが合わさると最高なんだ。焼き肉としてかなりのレベルを極めてるだろう、というお肉と調味料だよ。多めに用意するから、ラルフ君家で皆で食べよ?」
ラルフ君パーティーが色めき立つ。
「「「「楽しみにしてます!」」」」
フルコンブ塩もお披露目しとこ。
食いつかせる材料だ、二重の意味で。
これ見せとくことで、あたし自身の価値も上げられるだろ。
帰ろうとしたときにマウ爺が手招きするのが見えた。
あれ、何だろう?
珍しいな。
あっ、ポロックさんの義父とゆー人の顔を拝みに、食堂寄ってくんだった。
ヴィルを連れて食堂へ行く。
「こんにちはー。どうかしたのかな?」
「うむ、適当につまんで食べてくれ。それから嬢に紹介しておこうと思ってな。この男、どう見る?」
マウ爺ほどではないが、冒険者としてはかなりの年齢の男だ。
おそらく五〇歳は超えているであろう。
あるいはコモさんくらいかもしれない。
グレーの髪で青系のハチマキをしている。
茶褐色のマントを羽織り、腰にはいかにもいわくありげなショートソードとダガーを差している。
何より強者オーラが半端ない。
「強いぬ!」
「神経痛がなくても、マウさんの一〇倍は強いねえ」
一〇倍というのはマウ爺にかなり配慮した言い方だ。
マウ爺も上級冒険者ではあるが、マント男は生半可なレベルではない。
「ハハハ。気を使ってくれんでいいぞ。彼の名はシバ。最強の冒険者と呼ばれておる」
「精霊使いユーラシアでーす。お名前はかねがね伺ってました。こっちはうちの子のヴィルね」
「よろしくお願いしますぬ!」
「シバだ。よろしく」
握手する。
これがドーラのパワーナインの一人シバさんか。
最強というのも頷ける。
戦士の中には利き手を預けることを嫌がる人もいるというけど、シバさんは拘らないみたい。
偶然だったが、こーゆーヤバげな人にヴィルを紹介できてよかった。
「どうじゃシバ、嬢を見た感想は」
「すごい、面白い、興味深い」
「女の子を褒める三拍子じゃないんだけど。可愛い、美しい、見目麗しいって言ってくれないと」
笑いが起き、空気が柔らかくなる。
シバさんはドーラの実力者『パワーナイン』の一人だ。
うんうん、覚えてる。




