第245話:カラーズ各村の商品候補リスト
「ごちそうさまっ!」
長かった一日も終わった。
ソル君のホームである自由開拓民集落グームを訪れ、アンセリ含めたラブ展開に落とし込んでやったニヤニヤ。
魔境では難敵ウィッカーマンと初対戦、やつの底知れぬ強さを実感した。
アルアさんの工房でウィッカーマン対策のパワーカードも手に入れたから、次はもう少しまともに戦えると信じたい。
「姐御、明日どうしやす?」
「魔境行きたい気持ちはあるけど」
残りの『氷晶石』を回収したい。
せっかく『三光輪』四枚を手に入れたから、ウィッカーマンと再戦したいって欲望が頭をもたげる。
魔宝玉クエストをこなすためにレベルが必須。
レベルを稼ぐために魔境で戦うこともまた必須だが……。
「明日、ステータスアップ薬草の株分けの日だよね。灰の民の村へ行って、各村の販売品リストもらってこなきゃ。コブタ肉も確かもうないんだよね?」
「はい」
「じゃコブタ狩りも行かないといけない。黄金皇珠を一個手に入れたから、一応ギルドでおっぱいさんにクエストの進捗伝えたいしな。黄の民に冷蔵庫を木で作ってもらいたいんだよね。それにバエちゃんとマーシャに頭飾りプレゼントしたい。忙しいな」
やりたいこと多いな。
マジで悩む。
「ボス、レーゾーコとヘッドアクセサリーはいつでもイイね」
「うんうん」
「優先順位の高いほうから片付けましょう。凄草株分けのあと、灰の民の村。戻ってきてコブタ狩り。私が捌いておきますので、その間にギルドへ行ってきては?」
「よし、クララの意見を採用しよう。その他は展開次第だ。時間があれば魔境行こう」
「「「了解!」」」
ギルドへ行くと帰りの時間はわからないな。
また新しいクエストがあるかもしれないし。
「今日はここまで、おやすみっ!」
◇
――――――――――五八日目。
今日は凄草以外のステータスアップ薬草の株分けの日だ。
畑番の精霊カカシとお喋りしながら作業する。
「カカシー、凄草がとても元気そうに見える」
「おっ、ユーちゃんわかるかい?」
「言い換えると、おいしそうに見える」
「ハハハ。新しい葉が出てきてるんだぜ。これも四日後には株分けできる。将来的には薬草を全て凄草に置き換えたいぜ」
「素晴らしいねえ」
これまでのステータスアップ薬草は株分けして植え直している。
残りの半分は食卓行きとなる。
うちのパーティーの戦力の底上げにカカシは大いに役に立ってくれている……はずだ。
いや、効果が見えにくいんだよ。
しかし凄草の葉は青々していて実にうまそーだ。
あたしのこういうカンは当たるから、きっと凄草はおいしい。
ステータスアップ薬草が全部凄草に置き換わって、毎日凄草を食べることのできる日が待ち遠しいなあ。
「さて、灰の民の村行ってくるよ」
「おう、行ってらっしゃい」
◇
灰の民の村へやって来た。
クララの飛行魔法ならすぐなんだけど、天気のいい日は歩きたくなるんだよな。
秋を感じながらうちの子達と雑談する時間も、決してムダではないと思いたい。
「こんにちはー。サイナスさん、いつも元気な美少女精霊使いが、カラーズに幸せをもたらしにやって来ましたよ」
「ああ、いらっしゃい。マジでいつもムダに元気だな」
「ムダってゆーな。あたしは周りに元気を振り撒いているんだとゆーのに」
ついでに目の保養をさせてやってるんだとゆーのに。
あたしの美少女っぷりを堪能しろ。
「カラーズ各村の、レイノスと交易できる品物のリストはできてるのかな?」
「ああ、できてる。これが各村の商品候補リストだ」
さてリストの内容は?
ふむふむ、まあ大体予想通り。
「サイナスさん、見てどう思った?」
「こんなもんだろう。白の民の革製品と灰の民の石けんは候補に挙がったが……」
「一応今回は様子見ってことね?」
「ああ」
白の民と灰の民の農産物は、帝国と戦争になった時にレイノスに売る取り決めになっている。
カラーズ内の交易で既に売れているということもあるので、黄・赤・青・黒の民の品を優先する方針だ。
「あれ? 緑の民の村は不参加なんだ?」
「ああ、商人の名前を出したら、途端に態度を硬化させてな」
『ヨハン・フィルフョー』の名は緑の民に禁句らしい?
とゆーことは、やっぱりラルフ君のお爺さんは、何か事情があって緑の民の村を飛び出したのだろうか?
「何かそんな気はしてたんだよなー。でもレイノスと交易する方向で進めちゃうよ」
「構わない。却って緑不参加の方が、君はやりやすいだろ?」
「まあね。サイナスさんは悪だなー」
「お互い様だ」
アハハと笑い合う。
つまり緑の民の村不参加の理由がどうやらフィルフョー家の瑕疵である以上、向こうの譲歩を引き出しやすいとゆーことだ。
わかっている上でラルフ君家を間に入れたのかと思われると、予期せぬ反撃を食らう恐れもあるから、油断はできないが。
「多分ヨハンさんをカラーズに呼んで、こっちの族長級を集めた場で面談させることになるけど、構わないかな?」
「妥当だな。バラバラに会わせると買い叩かれそうだしね」
問題はそこだ。
商人は安く仕入れるのが仕事だから、こっちががっついてちゃダメなんだよな。
赤と青、あとピンクマンが言うには黒も焦ってるみたいだから。
「ユーラシアの顔を立てて仕方なく会ってやるんだぞ、くらいのスタンスで待ち受けて欲しいんだけど。やっぱ頼りになるのはフェイさんだなー」
黄の民の族長代理のフェイさんは、押し出しも立派で道理のわかる男だ。
芝居もできるだろうし。
「彼、難しいんじゃないか?」
「何でよ? フェイさんが不合格なら全員ダメだわ。演技指導してから商人呼んだほうがいいわ」
「そういう意味じゃなくて、彼だけ族長代理だろう? 各村の代表で最も年下だし。物事の筋を通す人間であるほど、出しゃばっちゃいけないと考えるんじゃないか?」
フェイさん一人だけ代理で年下だから、他の族長に遠慮して引いちゃう?
あり得る。
でもフェイさんに遠慮されては、族長でもなく一番若いあたしが迷惑なんだけど。
「ま、いーや。面談が決まってから考えるか。近い内に商人来て各村合同で会うことになるだろうって、各族長に伝えといてよ。あとフェイさんにはあたしが協力求めてるって」
「了解だ」
「じゃねー」
「ああ、またな」
転移の玉を起動して帰宅する。
『あたしが迷惑』っていう言葉は我が儘過ぎるって?
わかっとるわ。
そこを否定したことはないわ。




