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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2440/2453

第2440話:全てを知る者&後のハンネローレ基金であった

 ――――――――――エンディングエピソードその二九:全てを知る者。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルとクララをぎゅっとする。


「あら、いらっしゃい」

「アリス、こちらがパラキアスさんね」

「存じておりますわ。『黒き先導者』ですね?」

「ああ、『全てを知る者』アリスだね? こちらこそよろしく」


 パラキアスさんを伴って本の世界にやって来た。

 本の世界とアリスの扱いをどうするか決めておきたかったからだ。

 ふむ、さすがにパラキアスさんはアリスを見ても驚いてる様子がない。


「アリスはどこまで把握してるかな? あたし『アガルタ』の『アークセコイア』っていうビーコンのある塔壊しちゃってさ。『アガルタ』は亜空間超越移動を禁止しちゃったから、向こうの人達がここに来る可能性もなくなったんだ」 

「ああ、『アガルタ』の情報が入らなくなった理由がわかりました」


 『アガルタ』からの情報は『アークセコイア』経由で仕入れてたのか。

 とゆーことは、『アークセコイア』は旧王族の支配していた時代からあったのか?

 何で今の『アガルタ』政権は本の世界と断絶しちゃってたのかはわからんけど。


「『ユーラシア』の情報は引き続き自動収集できますよ」

「おおう、そうなのか。ありがたいな」


 『ユーラシア』の情報は別ルートみたい。

 まあ仕組みはどうでもいい。

 こっちの世界の情報を知ることができるという点が重要なのだ。 


「アリス。ここ『永久鉱山』だから、放っとくとリソース集まり過ぎて潰れちゃうんじゃないかって説があるんだけど」

「正しいです」

「じゃ、『アトラスの冒険者』廃止後は、こっちの世界で管理せにゃならんな。でも皆が機密を知ることができるっていう状況はよろしくなくてさ。どうしようかってパラキアスさんに相談したんだよ」

「理解できます」


 よし、アリスも冷静だ。

 では結論としてどうする?

 パラキアスさんが言う。


「最終的にはここ本の世界に至る秘密の転移石碑を設置し、ドーラ政府がそれを管理するという体制が望ましいだろうな」

「だよねえ」

「しかし……」


 パラキアスさんの言いたいこともわかる。

 今のドーラ政府は脆弱で信用がない。

 一旦混乱すると、世界の情報を握り得るマスター・アリスの存在が公になりかねない。

 却って争奪戦が起きそうだしな?

 争いの元を抱えるのは実に不穏だ。

 だからパラキアスさんに相談したかったんだけど、どーすべき?


「急ぐことじゃない。当面はユーラシアが管理していてくれ。一〇年後の様子を見て考えればいい」

「わかった。そーする」


 結論先送りだが仕方がない。

 今できる有効な手立てがない。


「今日もお肉の日ですのね?」

「大正解。お肉の日だね」

「何だい? お肉の日とは」

「本の世界はコブタマンっていうメッチャおいしい魔物がいるんだよ。『永久鉱山』だから狩り放題だし、あたし『アトラスの冒険者』になって一番嬉しいのは、お肉に不自由しなくなったことだな」

「つまり今から肉狩りか」

「そゆこと。パラキアスさんもお土産として行政府に持っていきなよ」


 ハハッ、アリスをどうするかっていう、かなり重要と思われる案件のあとの肉狩り。

 実にうちのパーティーらしいけど、パラキアスさんは微妙な顔しとるわ。

 お肉は愛、お肉は正義だよ。


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその三〇:後のハンネローレ基金であった。


「ハンネローレちゃんが?」

「ああ。真の魔法医療の確立を掲げて募金活動を始めた」

「へー」


 皇宮に行ったら、サボリ土魔法使い近衛兵から意外な話を聞いた。

 リリーの親友の侯爵令嬢ハンネローレちゃんが、通常医療と魔法医療の平行進化を謳って活動しているそーな。

 実際に半身不随から治癒したハンネローレちゃんがやると説得力がある。


「あたしも通常医療と魔法医療を協力体制にすべきだって、プリンスルキウス陛下にちょっと吹き込んではある」

「親しい令嬢や新聞を巻き込んで、ちょっと知られるようになってきたんだよ。ルーネロッテ様も参加している」

「人々の意識が変わると、医療が変わるのも早いかもな。ハンネローレちゃんは行動力あるなあ」

「精霊使い君がそれを言うのか」

「いや、だってハンネローレちゃんはヤニック君との婚約決まったとこでしょ? 嫁に行くまで大人しくしてりゃいいのに」

「君の魔法医療で身体がよくなったということをアピールするには、秋から社交が本格化する前の今が一番の好機だって考えたんじゃないか?」

「かもしれんけど」

「結婚後にどれだけ活動できるかなんてわからないしな。今しかないと考えたんだろう」

「ハンネローレちゃんはメッチャやる子だなあ」


 通常医療と魔法医療が協力し合って発展する未来は、あたしも常々考えていたことだ。

 魔法医を登録制にするなど行政からのトップダウンをあたしは考えていたが、ハンネローレちゃんは一般認知度の向上と寄付金集めを重要と見たんだろうな。


「ムーブメントを起こしておいて、今シーズンの社交が始まったら話題として出せるようにしておきたいという考えがあるんじゃないか?」

「なるほどなー。社交界での横の繋がりは大事だね。ルーネもそゆとこ見習って欲しい」

「君も魔法医療どうこうって言ってたじゃないか。行動を起こさないのかい?」

「あたしとハンネローレちゃんの考えは微妙に違ってるような気がするから。もうハンネローレちゃんメインで突き進めばいいんじゃないかな」


 帝国での草の根活動は帝国人がやったほうがいいんじゃないか、っていう気持ちもある。

 とゆーかあたしじゃなくてもできることはなるべく他の人に振りたい。

 ドーラ人冒険者であるあたしが医療について説くのは、何か違う気がするしな。

 ハンネローレちゃんが言うのは納得だわ。


「ハンネローレちゃんから要請があれば、もちろん協力するけど」

「要請は必ず来るだろ。演説して言い聞かせてくれって」

「え? そーゆーやつか。ぎっくり腰の患者さんの魔法治療を実演するとかじゃなくて」

「ぎっくり腰治療のスペシャリストだなあ」

「さて、あたしはぎっくり腰治療のスペシャリストなのか? エキスパートなのか?」

「ぎっくりしちゃうぬ!」


 アハハと笑い合っている内に、近衛兵詰め所にとうちゃーく。

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