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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2438話:ノバウラセアの温泉&『かわいいあくま』シリーズその後

 ――――――――――エンディングエピソードその二六:ノバウラセアの温泉。


「ふひー」

「満足だぬ!」


 ルーネとうちの子達を連れてノバウラセアの温泉にやって来た。

 温泉に浸かっているあたしのいい気分をヴィルが吸って満足という二重構造だ。

 これが省エネか。

 ちょっと違う?


「メッチャデカい温泉だねえ。ビックリしたわ」


 まさに温泉湖だ。

 雄大と言っていい。

 温泉に浸かって満足だけじゃなくて、湯気の上に顔を出す遠くの山々の景観まで楽しめるわ。

 素晴らしい。


「ドーラの温泉とは違いますね」

「ノヴォリベツか。まあ規模はね。あそこはあそこで鄙びたいい感じだけど、こことは泉質が全然違うんだろうな」


 ノヴォリベツの温泉には特有の臭いがあったのだ。

 おそらくお湯に何らかの成分が含まれていて、それが植物の生育には適していなかった。

 しかしノバウラセアの温泉は違う。

 植物の害になるような成分は入ってなくて、その温かさから農作のキーになっているらしい。


 首長のリューリさんが言う。


「ノバウラセアの温泉はどうだ? 気に入ったか?」

「気に入った。これはいいわ。上手に開発すれば、将来絶対に観光客を呼べる」

「そうかそうか」


 嬉しそうなリューリさん。

 やっぱりリューリさんのおっぱいは大きくないわ。


「温泉水の流路を増やせば耕地面積を格段に増やせる、というアイデアをビョルンに授けてくれたのはユーラシアなのだろう?」

「親分そんなこと言ってたんだ? 単なる思いつきだよ」

「助かった。その知恵をビョルンが発表してから、皆がビョルンを見る目が違うのだ」

「ノバウラセアは農業生産力向上で格段に国力が上がりそーだもんねえ」

「うむ」


 いかに首長であるリューリさんの支持があるとはいえ、海賊の親分だったビョルンがノバウラセアの民に信用されるのは難しかったのかもしれない。

 そこであの案が役に立ったか。

 争いをなくす方向で動いているあたしにも嬉しいことだ。

 リューリさんが左右の色の違う瞳を好奇心に染めながら言う。


「世界の通貨単位を統一して貿易を振興しようというのも、ユーラシアのアイデアなんだろう」

「これも思いつきだったんだよ。でも皆が乗ってくれて、実現することになったんだ。嬉しくて」

「ユーラシアを中心に世界が動いているではないか」

「ハッハッハッ、もっと褒めていいんだよ?」

「いいんだぬよ?」


 最近ヴィルのツッコミが複雑なことが多いけど、今日は極めてシンプルだな。

 却って新鮮。


「ノバウラセアも世界貿易に参加したいのだ」

「うんうん、いいねえ」

「他にアイデアはないか?」

「欲張るなあ。ビョルンの親分がノバウラセアについたのを知れば、他の海賊を順番に降参させることは可能でしょ? 海賊達がどういう場所を根拠地にしてるか知らんけど、結構な要地なんだろうから、全部手に入れれば強力な守備と連絡のネットワークを構築できそう。当然降参させた海賊達も人材として登用する」

「うむ、そうだな!」

「でも農業生産力のさらなる向上が先か。ダイオネアとラージャという国では、ライ麦とソバ、ジャガイモの耐寒品種を使った複雑な輪作が行われていて、すごく寒いところまで耕作が行われているんだよ。これをガリアの王様が知って自国で応用しようとしてるんだ。多分ノバウラセアでも通用する農法だから、取り入れるといいよ」

「うむ、ダイオネアとラージャだな?」

「あ、ダイオネアとラージャは教えてくれないわ。ガリアの王様は教えてくれると思うから、何年か経ったら聞きに行きなよ。王様はビョルンの親分をかなり評価してたんで、親分を使者に立てりゃいい」

「アイデアはあるものだなあ」


 頭使うのはタダだからね。

 湯の温かさと顔を撫でる風の対比が気持ちいい。

 絶対にまた来よう。


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその二七:『かわいいあくま』シリーズその後。


「ウシ子、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あらあら、あなた達なのん? いらっしゃいなのん」

「ぎゅーしてやろう」

「ありがとうなのん!」

「わっちもだぬ!」


 ウシ子とヴィルをぎゅっとする。

 ペルレ男爵家領ハムのガラス職人イーナを連れて塔の村にやって来た。

 『かわいいあくま』シリーズのガラス器第二弾として、紳士系のバアルと角がキュートなウシ子がいいかと考えたからだ。


 第二弾投入はまだ早いとは思うのだが、第一弾が大ヒットしようものなら後手に回る恐れもあるからな。

 キャラクターデザインくらいは準備してかねば。

 先手先手が勝利の秘訣。


「……とゆーわけで、ウシ子にも協力してもらいたいんだ」

「ザガムムの名を世界に広めるということね?」

「えっ? いや、あながち間違いでもないかな。どれくらいヒットするかにもよるけど、結果としてウシ子の認知度は絶対に高まるよ」

「ワタシはもちろん協力するのん!」


 ハハッ、悪魔は認められることが好きだから。

 

「可愛い角悪魔キター!」

「テンション高いな。ウシ子の角の湾曲度合いは味があるよね。じゃ、描かせてもらうよ。これモデル料」

「ありがとうなのん!」


 イーナがウシ子をスケッチしていく。


「魔王様にもこの話はしてるのん?」

「いや、まだなんだ。でもソロモコのフクちゃんには話してあるから、魔王にも伝わってるかもしれない」


 まだ『かわいいあくま』シリーズが当たるとは限らないからなあ。

 直に魔王に話すのは時期尚早な気がしている。

 当面は第二弾の準備をしておけば間に合う。

 その先はヴィルとガルちゃんの第一弾が当たったら考えりゃいいだろ。


「ところで第一弾の評判はどうなんです?」

「まだわかんないな。帝都で評判のファンシーショップに置いてもらうことに成功してるし、大店も関心を示してはいる」

「照明のガラスカバーどうこうという報告が来たんですが。要領を得ないんですよ」

「あっ、ドーラで生産しようとしてるこういうものがあるんだ。ガラスのカバーがあると奇麗だよねってこと。一個あげるね」


 『光る石』スタンドを渡す。

 こいつは黒妖石の供給さえ問題なければ絶対にヒットするからな。

 実に楽しみなのだ。


「イメージワイター! アイデアキター! 光に照らされ浮かぶ悪魔、これで勝つる!」


 照明カバーの方のアイデアみたいだな。

 頑張ってちょうだい。

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