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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2434/2453

第2434話:ツノオカの未来&シシーちゃんとお肉

 ――――――――――エンディングエピソードその二〇:ツノオカの未来。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おう、ツワモノユーラシアではないか」


 うちの子達を連れてツノオカ騎士団領のマヒルニィにやって来た。

 チャドウ団長が上機嫌だ。

 いいことでもあったのかな?


「ダイオネアに出していた間諜が戻ってきたのだ」

「あれ、もう? 早いね?」


 あたしみたいに自由にあちこち飛べるわけでもないのに。

 ニッと獰猛な笑いを見せるチャドウ団長。

 ははあ、移動に有利な固有能力持ちか何かがいるんだな?


「おそらくは耐寒品種であろうライ麦・ジャガイモ・ソバを手に入れたのだ」

「やったね。来年以降楽しみじゃん。どんどん食糧増産できるわ」

「そうだな。今日ユーラシアは何しに来たのだ?」

「でっかいシカの美味さが忘れられなくてさ。何頭か狩って帰ろうかと思って」

「おう、そうだったか。渓谷に行くならオレも連れていってくれ」

「うん、わかった。ヴィル、渓谷入り口行ってくれる?」

「了解だぬ!」


          ◇


「今は全然落ち着いてますよ」

「よかった。ちょっと心配してたんだ」


 北の平原と連絡する渓谷入り口の、でっかいシカを防ぐ陣地のところに来た。

 たまにシカの群れが来ることはあっても、もう前みたいに柵をガシガシされることはないらしい。

 やっぱあの謎経験値君のせいだったんだな。


「ツワモノユーラシアよ。心配してくれていたのか」

「あっ、あたしの聖女カインドネスがバレた」

「バレたぬ!」


 アハハと笑い合う。


「コシキのレベルを上げてくれたろう?」

「たまたま経験値の多い魔物がいたからだよ。コシキさんもヤバイやつに立ち向かう勇気があった」

「オレの後継者として不足がない」


 レベル的にはということだろう。

 ツノオカみたいにツワモノ重視の国は、レベルなしに人の上に立つことはできないんだろうから。


「まあツワモノユーラシアがオレの人生で出会った二番目に印象的な女性であることは疑う余地がない」

「一番目は奥さん?」

「アララギ様だ」

「アララギさんって女性だったんだ?」

「知らなかったのか?」

「……そーいえば男か女かの情報はなかったな。国を興した団長だってことで何となく男の人だと思ってたけど」


 どうやらバアルがあえて情報を隠してたみたいだ。

 ちょっとしたサプライズで面白かった。


 国の滅亡寸前に脱出できたのは、アララギさんが女性だったからかもしれない。

 王子だったら何が何でもとっ捕まえろってなりそうだもんな。

 ヒバリさんにしてもアララギさんにしても、自分から積極的に大きなことを成し遂げた女の人もいるんだなあ。

 偉大な先輩達だ。

 尊敬に値する。


「アララギ様は職人を呼び寄せ、また商人と近しかった。今から考えると、商業国を目指しておったのだと思う」

「テテュス内海に位置するなら、当然そーゆー考え方になると思うよ」

「少しずつ売り物のことを考えていかねばな」

「アララギさんは各国との交流にツノオカの未来を見たのか。自分が故国デルフザーンから追っ手がかかる可能性が高かったろうになー」

「うむ、アララギ様は勇気のある方だったから」


 少しずつでいいのだ。

 食物を増産して暮らしやすい国にしたら、有用な技術を持った移民も来るだろう。

 人口が増える国はいい国だ。


「さて、シカ狩ってこよーっと」


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその二一:シシーちゃんとお肉。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「これはこれはユーラシア殿。よくいらっしゃいました」


 ダールグリュン家邸にやって来た。

 門番さんもニコニコだ。

 基本的に大きな問題は起こっていないと見た。


「皆さんお元気かな?」

「はい、笑顔のある明るい主家になりましたぞ」

「シシーちゃんにお土産持ってきたんだ」

「おねえちゃん!」


 シシーちゃんが飛び出してきた。

 ヴィルと一緒にぎゅー。


「お肉持ってきたぞお!」

「わあい、おにく!」


 あ、クリームヒルトさんも出てきたぞ?

 ニコニコしている。

 いい感じだ。


「これはさっき狩ってきたシカのお肉。肉質はやや硬めでサッパリした食感だから、薄切りにして焼いて食べるとおいしいよ」

「まあ、すみません」

「シシーちゃんは最近どうしてるの?」

「べんきょうは、いや」

「えっ?」


 勉強?

 シシーちゃんは字覚えるのもまだなんじゃないの?


「いえ、ユーラシアさんにいただいた札取りゲームがあったでしょう? あれで読み方は覚えてしまったんですよ」

「マジか」


 まだ一ヶ月も経ってないんじゃないの?

 驚くべき二歳児、シシーちゃんすげえ。


「それでお義父様が張り切ってしまって。シシーは天才だ、もっと難しいことをやらせようとしていまして」

「いやいやそれは。いくら頭良くたって嫌になるわ」


 歴代の『繁栄』持ちは、ダールグリュン家当主がどういうものであるか理解した上で、自覚と自信を持って勉強に励んだに違いない。

 二歳のシシーちゃんがそんな心境にあるわけないじゃん。

 だから幼児教育は難しいのだ。


「今この段階で勉強嫌いになるとあとが大変だから、ムリにやらせようとしないで」

「わかりました。ではどうすべきでしょうかね?」

「自信つけさせてあげるといいよ。シシーちゃんはレベルが高い分だけ、普通の子より体力はあるはずなんだ。庭で身体を使った遊びするといい。クリームヒルトさんやオズワルドさんだと筋肉痛起こすから、門番さんが混ざってやってよ」

「はい、そうですね」

「元騎士団長のランプレヒトさんが、帝都のエーレンベルク伯爵家邸でちっちゃい子向けの剣術道場を始めたんだ。さすがに二歳児はいないけど、あそこなら皆に可愛がってもらえると思う。シシーちゃんも楽しいだろうからお勧めしとく」

「ランプレヒト様のところですね。見学に行ってみます」

「大人の人にきちんと挨拶できることは重要だね。上皇妃様とヴィクトリアさんが皇宮に帰ってきたんだ。お披露目がてら挨拶に行ってくるといいんじゃないかな」


 上皇妃様とヴィクトリアさんも会いたがってたしな。

 大人に会うことがシシーちゃんにとって面白いわけはないだろう。

 でも上皇妃様とヴィクトリアさんなら、おいしいお菓子でもてなしてくれるわ。

 シシーちゃんも嬉しいだろ。


「さて、今日は帰るか」

「またきてね!」

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