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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2433話:仮面女子の実家&一つのきっかけだった

 ――――――――――エンディングエピソードその一八:仮面女子の実家。


 うちの子達と宮廷魔道士のマーク青年を連れて、チョップ男爵領ブラウンシュバイクの仮面のギルドマスターフーさんの実家にやって来ている。

 まあぶっちゃけ昼御飯をごちそーしてもらいに来たんだが。


「……てな感じ。これがこの前書かせてもらった仮面さんの絵をポスターにしたものだよ」

「!」

「すごいでしょ? イシュトバーンさん、結構気合い入れて描いてたもんな」

「……」

「あ、画集自体が出るのはまだ先になるんだ。第一弾の画集がまだまだ売れてるから、タイミングを計ってるの。でも今年中には発売になると思う」

「……」

「そうそう。ポスターは一〇枚持ってきたから、仮面さんのお見合いがあるなら釣り書きに添えて先方に提出するといいよ」

「「ユーラシアさん!」」


 あれ、仮面女子とマーク青年の声が揃っとるがな。

 何事? ひょっとしてこの二人相性いい?

 いや、そんなことなさそうだけれども。


「私のお見合いのことなど心配しなくてもいいのですっ!」

「癇癪を起こすんじゃないよ。仮面さんのお見合いのことなんか心配してないけど、誰が旦那になるかは興味あるわ」

「えっ? お見合いに興味がなくて、夫になる人に興味がある? この魔性の女め!」

「どんな解釈だ」


 仮面女子は若干せっかちで思考が飛び気味なところがあるな。

 あたしに似てるんじゃないかって?

 いや、あたしには生来の賢さと聖女の慈愛があるじゃん。


「自分の配偶者が誰になるか、注目される立場にあることは自覚しなよ。ブラウンシュバイクの有力者の家系なんだから」

「だからと言って……」

「自分に都合のいい人を婿にもらえばいいじゃん」

「えっ?」


 わかってないのかな?


「仮面さんが結婚したとしても、今やってることを辞めろってわけじゃないんだ。冒険者ギルドだってブラウンシュバイクのためになる重要な事業だし」

「で、でも……」

「仮面さんのお父ちゃんは、こいつなら大丈夫って人を選抜して話を持ってくるわけじゃん? 仮面さんがその中から自分のやることに支障出ないなと思う人を選べばいい。実に明快で単純なことだぞ?」

「そうなのかしら?」

「お父ちゃんだってその通りだって言ってるじゃないか。一人娘ならどっちみち縁談から逃れられないことはわかってるだろーが」

「お父様はその通りって言ってるのかしら?」

「言ってるってば。心で感じろ」

「フーよ」

「は、はい」


 仮面女子のお父ちゃんの声を初めて聞いた気がする。

 大きく頷いているから、あたしの言ってる通りであることは間違いないのだ。

 最終的に自分で適当と思う人を選んで婿にもらえば、却ってやりやすいと思うぞ?

 おっと、マーク青年の方を忘れてた。


「ユーラシアさんが一方的に喋ってたでしょう? 理解されてるのかと心配で」

「大丈夫だとゆーのに。マーク君は宮廷魔道士なんだ。この前もらった真珠とは別のやつなんだけど、貝殻とともに成分を分析してもらったの。その結果が出たから知らせに来たんだよ」

「ユーラシアさんの推測通りでした。真珠の成分と貝の成分は同じです」


 お父ちゃんの目が見開かれる。

 やはり真珠は、貝がどこかから拾ってきて後生大事に抱えている石じゃない。

 貝が作り出したものだ。

 養殖できるかもしれないから頑張ってくださいな。

 ブラウンシュバイクの新しい産業のヒントだ。


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその一九:一つのきっかけだった。


「ポロックさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」


 ギルドにやって来た。

 不用品の処分っていう用はあるけど、まあ新『アトラスの冒険者』体制がどうかっていう様子見だ。

 ポロックさんの態度からすると、特に困ったことはなさそう。

 よしよし。


「掘り出し物屋が来ているよ」

「今日は掘り出し物屋さんの日だったか。午後に来るのは珍しいね」

「ああ、でももう終わる頃合いかもしれない」

「挨拶だけでもしとこーっと」


 ギルド内部へ。

 おお、お店ゾーンが活気あるね。

 後輩ズやジーク君のパーティーが熱心だな。

 でもポロックさんの言う通り、そろそろ終わりみたい。


「おっ、精霊使いの嬢ちゃんじゃねえか」

「こんにちはー。掘り出し物屋さんも久しぶりだね」

「おい、知ってるか? 精霊使いは特価品のパワーカード四枚四〇〇〇ゴールドを二五〇〇まで値切ったんだぜ」

「ごめんよ。当時はあたしもおゼゼがなかった」

「俺はただでさえサービスしてやってるのによ。あれはトラウマだぜ」

「トラウマだぬよ?」


 アハハと笑い合う。

 でも後輩達にはいらんこと言わない方がいいと思うがな。

 ボニーとレノアが値切れるのかって顔してるぞ?

 被害が拡大するぞ?


「四枚を二五〇〇ゴールドかヨゥ。呆れたもんだヨゥ」

「お姉ちゃん、すげえ!」

「役に立ったろ?」

「メッチャ役に立った。感謝してる」

「精霊使いの嬢ちゃんを育てたのは俺だと言っても過言じゃねえな」


 掘り出し物屋さんが得意そう。

 買い叩いたのは経験値割増し効果のある『ポンコツトーイ』を四枚だった。

 うちのパーティーのレベルアップが早かったのは、『ポンコツトーイ』のおかげもあるのだ。

 レベルアップの効率を考え始めたのも同じ頃だった気がする。

 レベル低い内に手に入れたので、メッチャ恩恵は大きかったなあ。

 懐かしい。


「ところで売れ残ってるものは何がある?」

「精霊使いの好きそうな石があるぜ」

「おっ、碧長石か。興味はあるけど、これ採れる場所知ってるんだ」

「チッ、そうだったか。ツイてねえな」

「残念だったね」


 後輩ズやジーク君パーティーが石なんか何にするんだって顔してるけど、魔物除けになるんだよ。

 考えてみりゃこの一年でたくさんの知識を得たもんだ。

 『アトラスに冒険者』になったこともだけど、それ以降の様々なイベントや出会いの一つ一つがきっかけになっている。

 全てがエンターテイン……あたしの財産になってるんだと考えると、ありがたさがこみ上げるなあ。

 固有能力『ゴールデンラッキー』は、こういうところに効いているのかな?

 

「こっちはどうだ? ピスタチオの苗だ。美味いナッツが取れるぜ」

「うわ、どっから手に入れたのよ? 買った!」

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