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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2432/2453

第2432話:海苔&ガリアの王宮にて

 ――――――――――エンディングエピソードその一六:海苔。


「ほう、のり?」

「そう、のり。薄くて柔らかい海藻を紙みたいに漉いて天日干しした加工食品だよ」


 エルのパーティーも連れて海の王国に昼御飯を食べに来ている。

 ゴーストアイドルのライブがあったから、その報告を兼ねてだ。


 以前チュートリアルルームで教えてもらった、のりの説明をしている。

 海の女王は乗り気、エルも思いがあるようだが。


「ふむ、面白い」

「海苔は懐かしいな。ボクも好きだ。再現できるなら嬉しいけど」

「いや、これ売るには障害が大きくてさ。パリパリの食感がいいんだけど、よく聞いたら湿気に弱くて、油断してるとすぐふにゃふにゃになるそーな」


 保存食品なのに保存が難しい。

 包装に油紙を使えばクリアできるのではないかという考えはあるけど、そもそもまだらいすが普及していないから売れそうにない。


「いや、薄くて柔らかい海藻というのに思い当たるものがあるのじゃ」

「なるほど、のりにするしないじゃなくて、他のやり方でも商品価値としてどうかってことか」

「わらわもよく食すのじゃぞ。食べてみるかの?」

「ぜひお願いしまーす」


 すぐのりの材料になり得るのであろう海藻が運ばれてきた。

 ふむふむ、ドーラの海岸で拾える海藻とは違うな。

 随分とペラペラだ。

 あむり。


「あっ、メッチャ柔らかい」

「うん、口で溶けるような食感は海苔に似てる」

「美味じゃろう?」

「そーだね。普通にサラダとしてイケるやん」

「ふむ、商人どもに勧めさせて、地上に売り込んでみるかの」

「あたしも宣伝しとくよ」


 うちではよく海藻を食べるけど、ドーラではあんまり海藻食べるって聞かないからな。

 こーゆーところから意識を変えていくといいかもしれない。

 ダンに宣伝して、『サナリーズキッチン』で出してもらお。


「で、どうじゃ?」

「何が?」

「『アトラスの冒険者』以後の状況じゃ」


 エルと顔を見合わせる。

 まあ聞かれるとは思ったが。

 女王の細い目が興味深げにあたしを見ている。


「何かを期待されてるのかもしれないけど、ビックリするほど何もないよ」

「侵攻してきた『アガルタ』人は、ほぼ全員塔の村にいるんだ。のめり込み度合いは違うけど、皆一度は塔のダンジョンに入ってると思う」

「マジか。いや、中級冒険者くらいのレベルはあるもんな」


 冒険者になりたての苦労をする必要がない。

 弱い魔物なら楽勝で倒せるから、面白くて仕方ないかもな。

 おまけに稼ぐためとゆー言い訳も用意されてるし。


「もう異世界が手を出してくることはないのじゃな?」

「ないね。向こうの世界の亜空間超越移動の原点になってる塔を壊しちゃったから」

「そっちを聞いた方が面白そうじゃの」


 女王も面白話を聞きたがるんだから。

 掻い摘んでほにゃらら。


「さすがはおんしじゃの」

「でもこれからは今までみたいにわけのわからんクエストをいきなり回されることがないから、寂しいっちゃ寂しいね。エンターテインメント的には」

「なあに、おんしならどうせおかしな事件に巻き込まれるであろう」

「あれ? そんな気もするな」

「ユーラシアなら間違いない」


 女王とエルがフラグを立てた。

 今後も楽しいことは次々起こりそう。


「そーだ。ノーマル人との交流を深めるために、転移先のビーコン置かせてもらいたいんだよ。商店街の近くが都合がいいんだけど、いいとこない?」

「うむ、案内しようぞ」


 帝国からの移民が多くなってドーラノーマル人社会が急激に膨張すると、亜人との関係が歪になるかもしれない。

 海産物取り引きの関係で一番交流が盛んなのが魚人だからな。

 もっと親しくして亜人差別撤廃に繋げたいものだ。


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその一七:ガリアの王宮にて。


『ピエルマルコ王は忙しそうだ』

「そーだろうなー」


 ガリアの王宮でプニル君に話を聞いている。

 今日はお土産にうちで採れたトウモロコシを持ってきた。

 芯ごとバリバリ食うとるがな。

 噛む力がメッチャ強いなー。

 気に入ってもらえたようだけど、芯って美味いのかしらん?


「忙しいってことは、ラブリーぽにょは戻ってきてるんだよね?」

『王妃となるベアトリーチェのことだな? うむ、帰っている。婚礼の準備で慌しいようなのだ』

「ぽにょ帰ってきたら結婚だって言ってたもんな。結婚式いつだか知ってる?」

『九の月の末と聞いた』

「マジか。メッチャ早いな」

『北国は冬が早いからな。出席者が帰りに雪で行き倒れても困るのだろう』


 おおう、いかにも北国らしい理由だなあ。

 ドーラでは考えられないことだわ。

 何たって今の王様の結婚式だ。

 おそらく各地の郷士卿が勢揃いになるだろうし、貴重な社交の場にもなるのだろうな。

 冬が訪れると地元に押し込められて身動き取れなくなっちゃうから、式を秋早い内にと考えると大急ぎになってしまうわけか。


「大変だなー。通常の執務もあるんだろうし」

『汝はまたここへは来るのか?』

「もちろん来るけど、どう考えてもしばらくはお邪魔っぽい。落ち着いた頃を見計らってになるかな」


 王様とぽにょは新婚旅行でサラセニアに行くかもしれない。

 サラセニアの様子も見ときたいから、あっちで会うってゆー手もあるな。


『我と話せるのは汝しかおらぬゆえ、会えないとつまらぬのだ』

「あれ、らしくないセンチメンタルなこと言ってるね」

『おやつも食べ損なうしな』


 アハハと笑い合う。

 ドーラも冬は作物はあんまりないけどな。


『我はリンゴが好きなのだ』

「りんご?」

『テテュス内海諸国で広く栽培されている果実だ。甘みと酸味が絶妙で、しゃきしゃきした食感がよい。皮は弱いが、比較的日持ちがするという特徴がある』

「へー。知らなかった。多分ドーラにはないものだな」


 テテュス内海諸国で広く栽培されているとすると、比較的寒い地域向きの植物のようだな。

 ドーラには合わないかもしれないが、ドーラにも寒いところはあるって話だ。

 いずれノーマル人居住域が広くなると植えたくなるかもしれない。

 日持ちがするというのもグッドな特徴だ。

 ぜひ覚えておこう。


「プニル君、面白いものを教えてくれてありがとう!」

『いやいや、お返しができなくてすまんな』

「何言ってんだよ。また遊びに来るね」

「バイバイぬ!」

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