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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2431話:フラグを立てに来た

 ――――――――――エンディングエピソードその一五:フラグを立てに来た。


「ブハラシア三つ子国か」

「三つ子国というのは通称だがな」


 様子を見に&オードリー王女の現況を知らせにという二つの目的で、帝国の大植民地ラグランドにやって来ている。

 最も大きな目的は総督のジェロンさんと話をすることだ。

 ジェロンさんはかつて植民地大臣を務めていたほどの人だ。

 世界情勢に詳しく、また現在の植民地総督という立場もあって、あちこちの国について教えてもらったり意見を聞いたりするのに一番都合がいい。

 

 二つの目的って言ったのに三つじゃないかじゃないかって?

 細けえことはいーんだよ。


「同じくらいの面積の島三つでできてるんだね」

「ああ。しかしそれぞれの島で考え方や得意分野が全然違って、対立してるんだ」


 これまであまり関わりがなかった外洋の国について、地図を見ながらジェロンさんに教えてもらっているのだ。

 地図だけ見てたってわかんないことは多いからね。

 通貨単位統一を進めるにあたって、情報が必要になりそうだってこともある。

 『アトラスの冒険者』石板クエストの無茶振りがなくなったから、積極的にフラグを立てにいかないとという、切実な理由もあるんだよな。

 切実の意味?

 辞書を引けばいいじゃん。


「それぞれの島が独立したりはしないんだ?」

「統治機構が違うから独立しているようなものなんだがな。しかし建国神話だかブハラシアの常識だかで、三つの島で一つの国だって意識は国民の間であるんだ」

「連邦だけど統一された窓口がないってことだな? どこか一つと仲良くしようとすると、他二つに反感を持たれちゃうか。面倒な国だなー」

「まさにその面倒という理由だな。労力以上のメリットが得られないから、我が帝国も過去あまり関わってこなかったんだ。しかし通貨単位統一事業を進めようとすると、障害になりそうな国の一つではある。陛下もどうやって連絡しようか、頭を悩ませているのではないか?」

「あれ? そーゆーやつはあたしに仕事が回ってきそうだな」

「ハハッ、ユーラシア嬢ならどうする?」

「通貨単位統一するから貿易が盛んになるぞーって一方的に伝える。ブハラシア国内のゴタゴタは知らんから、お前らで何とかしろって言う」

「ほう、一刀両断か。面倒見のいいユーラシア嬢にしては冷たい対応に思えるが」


 ジェロンさんの言いたいことはわかる。

 ブハラシア三つ子国は、地理的にはいい位置にある島国だからだ。

 放熱海以北で貿易が活発になると恩恵の大きい国なんじゃないかな。


 なのに国内で揉めてて、絶好の機会をふいにするようなバカばっかりなら処置なしだわ。

 何とか国をまとめようとする勢力が出てくることを期待する。

 もし努力が見えるなら手伝ってやってもいい。


 ジェロンさんが地図上のある国を指差す。


「コースミオリッカ。文化の発達した国だ。放熱海以北では我が帝国に次ぐ人口があると思う」

「ふんふん。帝国のライバル?」

「ライバルでもないな。いい関係を築いていると思う。互いの都に大使館を置きあっているから、興味があったら訪ねてみるのも面白いんじゃないか」

「そーする」


 通貨単位統一委員会に参加してくれるんだったら、当然理事国になるだろう。

 大使館があるなら連絡は大使館に伝えるんだろうな。

 もう伝えてるか。

 あたしの出番はなさそう。


「コースミオリッカには、帝国から過去皇女が嫁いだこともあるんだ」

「そーなんだ? 遠い国なのにねえ。あれ? じゃあルーネがお嫁にいくこともあり得る?」

「年周りのいい王子が二人ほどいるね」


 何と見知らぬ国にピット君のライバルがいるかも?

 その王子達のルーネとの相性を見たいもんだ。

 でもお父ちゃん閣下は遠くの国にルーネを渡したがらないかもしれないな。

 実際に縁談が持ち上がったらどーするんだろニヤニヤ。


 いずれにせよ文化の発達した国ってジェロンさんが言うくらいだ。

 ルーネを連れていつか見物に行きたいな。


「フリワール帝国。かつては我がカル帝国と覇を競った大国だった」

「地図で見ると今は小さい国なのにねえ」

「現在帝国東方領となっているところは丸々フリワールの領土だったんだ」


 カル帝国の初期には、東に強力なライバル国があったと聞いた。

 それがフリワールだったんだな。


「でも今は随分離れたところに国があるんだね?」

「征東帝の東方遠征でフリワールは滅びたと思われていたんだ。ところが皇族の一人が逃げ延びて、植民地だった地にフリワール帝国を再興した。それが現在のフリワールだ」

「歴史は面白いなあ」

「我が帝国も当時禍根を断つべきだったかもしれないが、占領したばかりで浮足立っていた東方領経営に専念し、結果としてフリワールは現在に至るまで生き残っている。当然カル帝国とは国交がない」

「ファーストコンタクトが難しいと。これもあたしに振られそうな案件だな。覚えとこ」


 向こうさんはカル帝国を恨んでるだろうけど、プリンスルキウス陛下は過去の因縁くらいに思ってるはず。

 わざわざ遠征軍を組織して征服しようなんてことは、フリワールが絡んでこない限りはやらないだろ。

 ジェロンさんは本当に外国のことをよく知ってるなあ。


「ゲートシー。現在は僻地の小国に過ぎないが、未来には重要になる気がするな」

「どういうこと? 有用な資源でもあるの?」

「いや、過去唯一放熱海を越えて南に渡り、その情報をもたらした探検隊は、行きも帰りもゲートシーを拠点にしたんだ。ゲートシーを経由するルートは最も放熱海を越えやすい可能性が高い」

「おおう、そーゆーことか」


 将来放熱海を挟んだ南北貿易が始まるとすると、キーになる国かもしれない。

 ジェロンさんの視点はさすがだなあ。


「気の長い話ではあるがね」

「未来は掴もうと考えてると案外近い気がするんだよ」

「ハハッ、国というものはどれもこれもそれなりに興味深い点があるものだ。しかし外洋でどの国に私が注目しているかと言われると、先の四ヶ国だな」

「うん、ジェロンさんありがとう」

「どういたしまして」


 ジェロンさんセレクトの四ヶ国は、きっとあたしにも関係してくる国なのだろう。

 確かな予感がある。


「じゃ、今日は帰るね」

「うむ、陛下によろしく」

「バイバイぬ!」

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