第2429話:お褒めの言葉&ダンとニルエと固有能力
――――――――――エンディングエピソードその一二:お褒めの言葉。
「へー、叙勲?」
「そうだ」
「へへえ、もったいねえです」
帝国はあんまり関係ないことではあるけど、ルーネが後継組織のメンバーってこともあるしな。
一応『アトラスの冒険者』の顛末について施政館に報告しようと思ったら、タルガのトサ様を呼んでくれと言われた。
トサ様を連れてきたら勲章の話になったのだ。
「トサ君のおかげで、辺境開拓民地区の市民権問題が急速な進捗を見せているのだ」
「わかる。トサ様偉い。そりゃ大威張りで勲章もらう価値があるわ」
「大威張りでもらえばいいぬよ?」
辺境開拓民に帝国市民権を持たない者が多いというのは、帝国にとって地味に大きな問題だ。
辺境開拓民地区の発展を妨げるだけでなく、帝国全体の治安を悪くする原因となり得るからだ。
でも市民権って難しい制度だなあ。
失う怖さで市民に法律を順守させるとゆー理屈はわからんでもないけど、そのせいで市民権なくした時の復活が難しくなっちゃってる。
おまけに市民権非保持者が多くなると、市民権保持者を税金他の面で圧迫しちゃうという謎仕様。
最初から市民権を持ってないなんてのはとんでもないわ。
辺境開拓民が市民権を持つよう促しているトサ様が賞されるのは当然だ。
「実際の叙勲は秋になるが、声だけでもかけておきたくてね」
プリンスルキウス陛下が力を入れている事業だけに、進捗が嬉しいんだろうな。
秋に叙勲するのは、社交界に話題を提供する意味もあるのかもしれない。
トサ様が謙遜する。
「トサ様は各集落に声をかけてるだけでさあ。実際に物事が動いているのは、『ホワイトベーシック』をもらえるというエサがあるからですぜ」
「かもしれんけど、トサ様の顔があってこその成果だよ」
「うん、三級精励勲章を授与する」
「おめでとう! どんなやつ?」
「非公務員の協力者に贈られるものだよ」
「ふーん……欲しいな」
「ユーラシア君は公務員じゃないか」
「あたしじゃなくてヴィルに」
「「「「えっ?」」」」
ビックリするようなことじゃないと思うが。
「あたしの働きはヴィルがいてこそだよ。ヴィルは公務員じゃないじゃん。勲章もらえる資格はあると思うけど」
「……一理あるな」
「悪魔は勲章を欲しがるものなのかい?」
「欲しいぬよ?」
「悪魔は認められることが嬉しいんだよ。以前あたしが勲章もらった時、ヴィルバアルガルちゃんの目がキラッキラしてたじゃん? どの悪魔も勲章もらえば喜ぶね」
これは間違いない。
「悪魔が欲しがるのは名誉と尊敬であっておゼゼじゃないんだ。副賞の年金なしなら財政が痛むことないでしょ?」
「それはそうだが」
「人間以外の協力者に授与する勲章を新設することをお勧めしまーす」
プリンス陛下とお父ちゃん閣下が考えている。
今後悪魔を協力させやすくなると計算しているのかも。
個人的に対魔王戦争突入阻止に効果のあったソロモコのフクちゃんや、長年魚横丁の発展に尽くしたネコ様は勲章もらってもいいと思うけどね。
悪魔じゃなくても、天使や神様も勲章もらったら喜ぶんじゃないかな。
天使は尊敬されるの好きだし、神様はミーハーだもん。
「ヴィルにも勲章を授与しよう」
「やたっ! よかったねえ」
「嬉しいぬ!」
「じゃ、トサ様送ってくるね」
◇
――――――――――エンディングエピソードその一三:ダンとニルエと固有能力。
カトマスのマルーさん家に遊びに行ったらダンもいた。
ニルエとの親交を深めているんだなあ。
言い方が正しいかわからんけど、相性の角が少しずつ取れてきた気がする。
時間が経ったらきっともっといい関係になるよ。
で、図らずも固有能力の話となったわけだが。
「基本的にはトータルで見て、持ってて損する固有能力はないねい」
「トータルで見てってのはどういうことだ?」
「部分的に見ればデメリットもあるってことじゃないかな。例えばエルマの『大器晩成』は強力な固有能力だけど、成長は遅いっていうデメリットがあるじゃん?」
「そうだねい。世の中にはレベルが上がらない欠点を抱えた固有能力もある」
「「えっ?」」
レベルが上がらないなんて固有能力もあるのか。
世の中広いな。
あたしの得意技パワーレベリングが通用しないじゃん。
結構ビックリだぞ?
「レベルが上がらない固有能力は、メリットもデカいのか?」
「薬の効きがいいね。逆に毒の効きは悪い」
「はあ? 何だそりゃ?」
「……わからんでもないな」
「おい、どういうことだよ?」
「レベル上がろうが関係のない職業だったら、薬効増強と毒耐性は明確なメリットじゃん? それにステータスアップ薬草の効果が高いんだったら、冒険者としてだってやっていけないことはない」
最初メッチャキツい。
冒険者向きの固有能力じゃないことは確かだけどな。
「前衛向け能力でも、ラルフ君とこのパーティーのゴール君の『ヘイトリベンジ』だったっけ?」
「ヘイトを自分に集め反撃する固有能力だねい」
「メリットばかりとは言えないしねえ」
「俺はそんなややこしい固有能力持ちじゃなくてよかったぜ」
うむ、使い方の難しい固有能力は付き合い方大変そう。
「以前ばっちゃんが、固有能力は血も関係するって言ってたじゃん?」
「その通りだねい」
「帝国の魔道研究所では親子鑑定ができるそーな」
「「「親子鑑定?」」」
「固有能力とその素因は子供に受け継がれることを利用して、魔道的に父子に血の繋がりがあるかないかを調べることができるんだって」
「マジか。帝国はすげえな」
「必ず親子かって言われると断定は難しいらしいんだけど、否定は簡単みたいだよ。帝国は爵位の簒奪にすげえ厳しくてさ。だからこそそーゆー技術が発達したんじゃないかなーと思う」
「ふん、帝国の魔道研究所には、素因まで明らかにする魔道具があると見えるねい」
マルーのばっちゃんの言う通りだな。
もっともあたしから見れば人は使えるか使えないかなので、血とかはどうでもいいわけだが。
「そろそろあんたは退場しろよ」
「え、何で追い出そうとするんだよ。ダンのいけず」
「ニルエが妬くだろ」
「そーゆーことだったか。こりゃまた失礼いたしました。またねー」
「バイバイぬ!」
ニルエが赤くなってら。
ニルエ可愛いよニルエ。




