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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2425/2453

第2425話:新しいインク&商売ネタ

 ――――――――――エンディングエピソードその五:新しいインク。


「……とゆーわけでした」

「「ふむふむ!」


 『ウォームプレート』と『クールプレート』を納品するために、イシュトバーンさん家から行政府へ行く途中だ。

 べつにイシュトバーンさん家を経由する必要はないのだが、これまでの習慣ってやつがあるじゃん。

 新聞記者ズにも自慢したいし。


「記者さん達にはこれあげる」

「何です?」

「ヴィルが拾ってきた異世界の新聞だよ」

「エンターテインメントだぜ」


 イシュトバーンさんが読んで大笑いしてたわ。

 あたしを魔人扱いするのは納得いかないけれども。


 無乳エンジェル率いる異世界の連中がエルを捕えにこっちの世界に攻め込んできたことは、パラキアスさんの言うように確かに新『アトラスの冒険者』の信頼性を低下させ得る事案だ。

 『アトラスの冒険者』の本部は異世界にあったんだから、同一視されそうだもんな。

 あたしの活躍の様子をエンタメ仕立てで記事にしてくれれば、そーゆー危険も減るだろ。

 時間が経てば異世界から来た連中の働きも記事にして、ドーラの発展に貢献しているのだってことをわからせられるだろうし。


「ユーラシアさん、魔人じゃないですか」

「だから魔人ばっかり拾うな。全く面白くないね」

「魔人は格好いいと思うぬよ?」

「あれ、ヴィルまでおかしなことを言いだしたぞ? こうしてくれる。ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 ハハッ、可愛いやつめ。

     

「『アトラスの冒険者』は完全に新体制なんですよね?」

「資本関係としては新体制だね。異世界とは縁を切って、独立採算制になる」


 もっともメンバーは旧体制の時と同じ人プラスアルファだから、何が違うのって人が多いかもしれない。

 いーんだよ、違いなんかわからなくたって。


「旧『アトラスの冒険者』は一〇〇年以上続いた歴史に終止符ですか」

「ドーラ植民地黎明期の頃からだもんねえ。でもあたしがなった時、『アトラスの冒険者』なんて知らなかったわ」

「そうなんですか?」

「ま、確かに今ほど知名度はなかったな。新聞記事になることも稀だったろ?」

「「確かに」」


 名前を知ってても、ふつーの冒険者と何が違うんだって人は多かったと思う。

 カトマスみたいに冒険者になることが推奨されてるような村は別だろうけど。

 あたしが新聞記者ズと付き合うようになってからじゃないか?

 『アトラスの冒険者』の一般的な知名度が上がったのって。


「ユーラシアさんが『アトラスの冒険者』になった頃のこと教えてくださいよ」

「今更かい。じゃあまた記事ネタがなさそーな時にでも話してあげるよ。今はドーラを落ち着かせる方が先だから、その手の記事優先でお願い」

「「わかりました」」


 今後も新聞とはいい付き合いをしていきたいからね。


「ところでヘリオスさんに聞いてます?」

「何を?」

「カトマスで新しいインクが発明されたんです」

「あっ、知らなかった」

「これまでのものより安いので、我々も期待してるんですよ」

「ヘリオスさんが試し刷りをしている段階で。早いと現在のインクのストックがなくなり次第切り替えです」

「オレも聞いた。今までのものと臭いが違って新鮮だって言ってたぜ」

「へー」


 インクでコストダウンを図るってことか。

 印刷方面でも進歩があるんだな。

 自分の知らないところでも、世の中が前に進んでいることを知れると嬉しい。

 ドーラの未来は明るいぞ。

 さて、行政府に到着だ。


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその六:商売ネタ。


「以上、今月分の『ウォームプレート』と『クールプレート』でーす」

「ありがとうございます。大評判なんですよ。再来月分から『クールプレート』はなしで、『ウォームプレート』のみの生産に切り替えていただけますか?」

「りょーかいでーす。そう伝えておくね」


 オルムスさんが言う。


「ユーラシア君、文官教授の件ありがとう。生徒も意外と真面目でね。数ヶ月でものになるだろうって話なんだ」

「そりゃよかった」

「実地に早く馴染ませた方がいいという教授方の意見でね。座学と平行して簡単な仕事もやらせるようになると思う」


 うんうん、あの語尾のおかしなニートどもを見た時にはとんだ産廃だと思ったが、思ったより使えるみたい。

 喋りがまともになれば大丈夫なのかもな。

 オルムスさんの負担が小さくなることを望む。


 貿易商ベンノさんが言う。


「最近、寒天なるものの照会がしばしばあるのです。どうやらドーラ産らしい、とのことなのですが」

「あっ、ごめんね。増産急いでもらってるけど、輸出できるほど出回るのは来年になってからだと思う」

「ふむ、サンプルか何かありませんかな?」

「今度ベンノさんが来る時までに用意しとくね」


 ホルガーさんも興味あるみたい。


「寒天とは何ですか?」

「それ自体にほとんど味がなくて、熱すると溶ける、冷やすと固まるっていう料理の材料だよ。ある種の海藻から作るらしいけど、詳しいことは知らない。海の王国で教えてもらったんだ」

「「「「ほう」」」」

「性質がスイーツ向けなんだよね。レイノス市内の『サナリーズキッチン』ってお店で寒天スイーツを商品として出してるから、興味あるなら食べてくといいよ。レシピ集が出版されたから、今後は寒天スイーツを出す店が増えると思う」

「扱いは全然難しくねえんだ。うちの料理人も面白い材料だって感心してたぜ」


 寒天はスイーツブームを牽引する材料かもしれない。


「他にドーラから輸出できるものはありませんかな?」

「手札が尽きたな。あたしの方からすぐ提案できるものがない」

「スキルスクロールの増産はムリですか?」


 チラッとパラキアスさん見たら首振ってる。

 まーあんまりドーラにスクロールの生産力があると思われても何だしな。


「ごめーん。ドーラの生産規模は小さくてムリ。そうだ、今後素材とかポーションとかは出回りやすくなると思うよ」

「ふむ。取扱量を増やしますかな」


 石板クエストがなくなる分、魔境や塔のダンジョンで探索を行う者が増えそう。

 自然と素材の売却や採取した薬草から作るポーションの類は増えるんじゃないかな。

 値崩れしない内に帝国の商人が買ってくれるとありがたい。


「あたしからは以上でーす。じゃーねー」

「バイバイぬ!」

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