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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2424/2453

第2424話:魔人聖女&おにくびみらー

 ――――――――――エンディングエピソードその三:魔人聖女。


 家でうちの子達とまったり過ごしていた一時。

 あたしの機嫌はあんまりよくなかった。

 あたしの機嫌が悪いとヴィルにまで被害が及ぶので、いいことだとは思っちゃいないが腹も立つ。


「ひどくない?」

「相当ひどいぬ!」


 賛同してくれたのはヴィルだけだった。

 あとのうちの子達は薄情なのか、ある程度納得してるような表情だ。

 何がって、ヴィルが拾ってきた異世界『アガルタ』の新聞の記事がだよ。

 あたしに取材もせず、勝手に書くんだから。

 

「『魔人ユーラシア来襲!』だよ? ウルトラチャーミングビューティーな美少女聖女精霊使いなのに、言うに事欠いて魔人とは何だ。厳重に抗議したい」

「実際に抗議したらすぐ謝ってきやすぜ」

「アハハ」


 まーとにかくヴィルは偉かった。

 新聞を拾ってくるなんてメッチャ気が利いてる。

 おかげで『アガルタ』の様子がよくわかる。


「ユー様、新聞を売るために見出しの煽りは必要ですよ」

「うーん、この記事はセーフなのかなあ?」

「オーバーキルだったね」

「キルしてないわ。大体極大魔法撃ったのはダンテだわ。だのにどーしてあたしが魔人扱いなんだか」

「魔人扱いが気に入らぬのであるか?」

「え?」


 バアルが心底不思議そうな顔をしている。

 何故だ?

 バアルの価値観も独特とゆーか、把握し切れてないところがあるからな。


「魔なる人であろう? 吾が主に相応しい称号だと思うである」

「バアルの考えもユニークだな。いや、あたしは聖女じゃん? 魔人と聖女って対極じゃない?」

「魔人聖女でいいではないか」

「すげえパワーワードきたぞ?」


 何だ魔人聖女って。

 美少女聖女より語呂がいいのがやりきれない思いを増幅させる。


「ボスにピッタリね」

「どの辺がピッタリなんだ。納得しかねるわ」

「すぐに姐御ってバレてるのが驚きでやすね」

「うん、それはあたしも思った」


 『アトラスの冒険者』は攻めてきた二〇人だけじゃなくて、結構大きな組織なのかな?

 それとも亜空間超越移動ステーションには、『アトラスの冒険者』メンバーの情報が開示されてるのかな?

 だとすると向こうへの転送魔法陣を使用し得る可能性と、レベルや精霊連れであることからあたしと判別するのは難しくなかったと思う。


 しかし全部新聞報道されるのはすごいなあ。

 国の危機って捉える向きから、情報統制しても当然だろうに。

 オープンで素敵な世界だわ。


「情報が開かれてるのはいいことだね。あたしは好き」

「エンジェル所長のアタックに対するリベンジと書かれているのもナイスね」

「メッセージが伝わったみたいでよかった。にこっが効いたな」

「『凄惨な笑みとともに』って書かれてやすぜ?」

「もー、だからそれは取り消せ!」

「取り消さんぬ!」


 アハハと笑い合う。


「『臨時措置であるが、転移転送と亜空間超越移動を即時凍結』、『亜空間超越移動については永久に禁止の見込み』か。これが確認できたのは嬉しいな」

「それよりもここ、気になりますね」

「まーね」


 『シスター予備官イシンバエワ・ダーダネルスの背信か?』とあるのだ。

 あたしはバエちゃんと結託していたんじゃないし、バエちゃんだけから情報を得ていたわけでもない。

 でもそーゆーシナリオの方がわかりやすいんだろうな。

 バエちゃんと無乳エンジェルに責任を押しつけて切ろうとするのは計算の内だ。

 やはりこっちの世界に連れてきてよかった。


「さて、今日は寝よっか」


          ◇


 ――――――――――エンディングエピソードその四:おにくびみらー!


「おにくびみらー!」

「「「「「「「「おにくびみらー!」」」」」」」」


 ソロモコにやって来てお肉パーティーだ。

 久しぶりにフクロウの仮面被ったわ。

 ここは潮風が心地良いから、気温ほど不快感はないな。


「……っていう経緯で、『アトラスの冒険者』はなくなっちゃったんだ」

「そうですかホー」


 ぶっちゃけフクロウの悪魔フクちゃんと話をしたかったから、ソロモコくんだりまではるばる来たのだ。

 でもソロモコで食べるお肉は最高だな。

 ちなみに仮面のないヴィルには隠れてもらっている。

 またフクちゃんに会いに来る機会はありそうなので、ヴィル用の仮面も作った方がいいな。


「残念ですホー」

「フクちゃんも残念に思ってくれるか。優しいなー。『アトラスの冒険者』楽しかったからなー。それはそれとしてフクちゃんに頼みがあるんだ」

「何ですか?」

「『かわいいあくま』シリーズってのを展開しようとしててさ……」


 ペルレ男爵家領の産業で、悪魔の認知度とイメージをあげる試みがどうのこうの。


「魔王のとこにもこの話を持ってこうと思うんだ」

「素晴らしい試みですホー!」

「フクちゃんもモデルとして協力してくれる?」

「もちろんですホー!」


 悪魔は自己顕示欲が旺盛だこと。


「ありがとう。これあげる」

「これは……『アトラスの冒険者』の転移の玉?」

「そうそう、あたしの使ってたやつ。フクちゃんは曰くつきのものを集めてるって言ってたから、興味あるでしょ?」

「ありがとうございますホー!」


 喜んでもらえてよかった。

 魔力を集める有用な材料でできてることは知ってるが、旧『アトラスの冒険者』の転移の玉を持ってるのはあたしだけじゃないしな。

 研究する時に不足はあるまい。


「もう一つフクちゃんが欲しそうなものを見せてあげよう」

「何ですホー?」

「かつてサラセニアの国宝だった『齧られた宝玉』だよ」

「えっ?」


 ハハッ、目がまん丸になったフクちゃん可愛いな。


「将来ドーラにバアル美術館を作りたくてさ」

「バアル美術館?」

「バアルの持ってたお宝を基にした美術館だよ。帝国をはじめとする外国から観光客を呼び寄せるための材料だね。この『齧られた宝玉』はバアル美術館の収蔵品にしようか、それともフクちゃんにあげて代わりにフクちゃんのコレクションを時々借りて展示しようかって迷ってるとこ」

「ボクのコレクションでしたら貸します!」

「じゃあフクちゃんにあげた方が得だな。これドーラの事業になるから、あたしの一存じゃ決められないんだ。いずれそうなるって思っててね」

「はいですホー」


 よし、用終わり。

 腹も膨れたし帰るか。


「皆、じゃーねー」

「「「「「「「「うんばー!」」」」」」」」

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