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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2421/2453

第2421話:三つの質問

「情報が全部筒抜けではないですか!」


 塔の村へやって来た。

 悲鳴に似た声を上げる無乳エンジェル。

 塔の村に配置されていた異世界人も転移の玉が起動しないことに気付き、あっさり降伏していた。

 あたし達の完全勝利だ!


 ゴーストアイドルライブ会場の片付けがあらかた終わった正門前の広場で、異世界人とやじ馬を集めて話をしている。

 デス爺はともかく、パラキアスさんまでおるがな。

 まーどうなってるか気にはなるわな。

 無乳エンジェル含め異世界人達が混乱してるけど落ち着け。


「『アガルタ』の技術が進んでることはわかってまーす。でも『アトラスの冒険者』は優秀だから、出方がわかれば封殺できるよ。情報の勝利」


 異世界人達が悪夢だ信じがたい絶望だみたいな顔してるけど、そんなことないって。


「こっちは『アガルタ』に比べりゃ遅れた世界だけど、悪いとこじゃないよ。少なくともエルはこっちの生活を気に入ってるし」

「エル……と名乗っているのですね」

「『アガルタ』での名前は捨てたんだ」

「へーカッコいい。こっちの世界で新しい生活を始めるつもりだったから?」

「恥ずかしいから」


 え、恥ずかしい?

 名前がってこと?

 何ぞ?

 本筋じゃないから今は突っ込まないけど。


「『アガルタ』の神様に唆されてエルを取り戻そうとしてたんだろうけど、エルがそっちの世界に戻ったらロクなことになんなかったぞ? 実際に現在のエルに会ってみて実感する人もいるでしょ? 旧王族を支持する一派に大々的に持ち上げられちゃう。大体エルの持つ固有能力の一つは『運命の申し子』だから、ピンチになるほどカリスマ性が増すんだぞ? 多分政権がひっくり返ることになってた」

「神様のことまで……」

「そっちの世界のレス何とかさんって神様、こっちの世界の女神様にモーションかけてるんだ。『アトラスの冒険者』のクエストであたしはこっちの世界の女神様と友達になったから、ある程度情報が入ってくるの」

「ええっ? 神様から情報が漏れているとは……」

「神様は、担当の世界をどんだけ繁栄させるかってのが仕事の成績になるんだそーな。『アガルタ』は進んだ世界だから他所の世界に技術を流出させたくなくて、『アトラスの冒険者』廃止を機に亜空間超越移動を禁止したかった。エルについても同じ。進んだ『アガルタ』の知識や技術がこっちの世界に流れるんじゃないかと恐れて、取り返せーって有力者の夢の中に現れて煽ったんだ。全て神様の都合。エルを取り戻すことで社会が混乱することは考えてなかったぞ?」


 声が出ない異世界連中。


「だからそっちの世界のやりようが読めたんだ。エルを取り返しに来た時に帰れなくしちゃえば、優れた人材が一網打尽だっていう」

「三つわからない点があります」

「何だろ? あたしにわかることなら答えるよ」

「ユーラシアさんはどうやって『アガルタ』へ渡ったんですか?」

「変な話なんだけど、『アトラスの冒険者』のクエストで手に入れた『地図の石板』から、『この転送魔法陣を使う資格を満たしておりません』って言われる謎の転送魔法陣が出たんだ」

「あっ、管理者用の転送魔法陣?」

「そうそう。手に入れた時は何だかわかんなかったよ? でも段々情報が増えて使い方も知って。使うタイミングとしては今日だなとゆーことで」


 唖然としている異世界人達。

 あたしだってどうやってバアルが異世界行きの『地図の石板』なんか手に入れたのか知りたいくらい。


「次に『アークセコイア』を魔法で破壊したとのことですが、あれには特別な回避装置がついています。絶対に攻撃魔法など当たらないはずですが」

「あのたっかい塔は『アークセコイア』って言うんだ? 『ミラージュフィールド』ってもんがあることは知ってた。あたし達はこういうものを持ってるんだ」


 バアルに持たせていたパワーカード『デスマッチ』を見せる。


「戦闘が終了するまで誰も逃げられない……場に干渉する装置ですか。道理で」

「あんな塔に実際にこのカードが通用するかはわかんなかったよ? 『デスマッチ』が有効でも、魔法攻撃を無効化する結界が張られてたら壊せなかったし。壊せたのはラッキーだったな」

「最後の質問です。『ユーラシア』側の目的は何だったのですか?」


 『ユーラシア』側の目的とゆーか、あたしの目指すところだったけど。


「エルをこっちの世界で確保し、可能なら進んだ世界『アガルタ』の人を捕まえて、こっちの世界を発展させることだよ。作戦は成功し、おかげで有能な人材をガッポリ得ることができました!」

「『アークセコイア』を破壊するのが目的ではなかったのですか?」

「方法論的な目的の一つではあったよ。でもエルをこっちの世界にとどめておくことの方が重要じゃん? エルの希望でもあったし」


 無乳エンジェルを見つめる。

 エルは『ユーラシア』に馴染んでいる。

 そしてあたしの大事な友達なんだということが伝わっただろうか?


「あたしが『アガルタ』に逆侵攻したことを向こうの神様が知ったら、ビックリして亜空間超越移動を即禁止すると思ったんだ。エンジェルさんは今日がダメでももう一回くらい攻めてくる気でいたかもしれないけど、あたしが『アガルタ』に辿り着いた時点でおそらくその手は消えたな」


 意気消沈する異世界人達とすげえ満足げなパラキアスさんが対照的。

 一人の異世界人がポツリと呟く。


「『アークセコイア』が壊され、亜空間超越移動が廃止じゃ、どうやったって帰れない……」

「過ぎ去った過去はどうでもいいのだ。道は未来にしか続かない。我々はドーラの仲間だ!」


 どっと沸くやじ馬達に釣られて、異世界人の顔もほころぶ。

 思考は建設的でなくてはな。


「こっちにいるのが塔の村の村長デス爺だよ。今後の生活のことはじっちゃんに聞いてね。本日はこれまで!」


 エルが無乳エンジェルに駆け寄る。

 あっ、母親が酒臭いことに気付いたな。

 笑える。

 まあ最初ギクシャクするかもしれんけど、時間が解決するよ。


 ダンが言う。


「面白かったぜ。最高だ」

「そお? ダンも異世界人達が馴染むように協力してよ」

「おう、わかったぜ」

「あたしもう一ヶ所行かなきゃいけないところがあるんで帰るね」

「バイバイぬ!」


 今となっては唯一となった転移の玉を起動して一旦帰宅する。

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