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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2401/2453

第2401話:セウェルス殿下は元気そう

「うーん、おいしい」

「茶の名産地だけのことはあるな」


 宮殿の応接間に通され、お茶を供された。

 ごくごく飲めるぬるめの温度という配慮が嬉しい。

 お父ちゃん閣下が満足そう。

 できる執事か侍女がいるなあ。


「やっぱズデーテンのお茶は美味いな。超すごいお茶以外では、ドーラのお茶は勝ってる気がしない」

「ドーラのお茶は高級品なのでしょう?」

「ドーラには茶農家が一軒しかないんだよ。えらく丁寧に作ってるからそりゃ高級品になるけど、将来茶農家が増えて量産するようになったらどーだろ?」

「そういうことですか」

「考えなきゃならんなー。農家の茶作りの様子を見学させてもらいたいくらい。許しをもらえたら、ドーラから茶農家の人連れてこようかな」


 それともドーラは効率よりも高級品志向で、今のテオさんとこの茶農家のやり方を独自に発展させた方がいいのかしらん?

 ドーラとズデーテンのお茶の栽培は、技術的に違うところがかなりありそう。

 超すごいお茶にシフトって手もあるけど、栽培は普通のより難しそうだしな。

 それにドーラより冷涼な帝国で売るなら、熱いお茶で勝負したいと考えるのは人情とゆーもんだ。


 さっきはえらい不機嫌な顔してたけど、お父ちゃん閣下の顔から険が取れてるわ。

 ズデーテンのお茶もやるなあ。


「ユーラシア君は産業の話が好きだね」

「ドーラはビンボーだから、必死で産業を興して外貨を獲得しないとっていう根底があるんだけどさ」


 とゆーか貿易を活発にして手数料で儲けないと、ドーラ政府が持たないというヤバさがある。

 行政府主導でインフラの整備もしたいけど、その前に統治機構だけでもしっかりさせなきゃならん。

 収入を多くして文官の数を増やして、オルムスさんの負担を減らすことが先決だなあ。

 ってのはともかく。


「いいものを手に入れられる社会にしたいんだよね。需要と供給が釣り合ってなくて、すげえ値段が上がっちゃうことがあるじゃん? 大して良くないものでも高くなっちゃったりとかをなくしたい」

「物価の安定は重要な政治事項だな」

「だよねえ。今年ドーラにたくさん移民が来てるでしょ? 塩が足んなくなっちゃってさ」

「なるほど、塩は急な増産が難しいかもしれないな。どう対策したんだい?」

「ドーラ近海を領域にしてる魚人に融通してもらってるんだよ」


 魚人と仲良しだってことをアピールしとこ。

 開拓地で塩の生産が始まるのは来年からになりそう。

 それまでは海の王国からの塩に頼ることになっちゃうな。


「品質が良くて希少なものがお高いのはいいの。標準的なものは標準的なお値段で手に入れたい。実現のためには世の中にものとおゼゼが多くなきゃいけない」

「うむ」

「ってとこまで行っちゃうと、政治家が考えることではないかもしれないけどさ。あたしが一生懸命やりたいのはそーゆーことなんだ」


 頷くお父ちゃん閣下とルーネ。

 あ、来たか?


「やあやあ、お待たせしました」

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 先代の辺境伯爵バルタザールさんとセウェルス殿下が入ってきた。

 バルタザールさんはにこやかな人だなー。

 

「ドミティウス殿、お久しぶりです」

「御無沙汰でした。バルタザール殿も御壮健なようで」

「何の何の。フルーツと茶、暖かな風土は健康の秘訣ですぞ。ズデーテンへようこそ」

「おおう、宣伝を挟んでくるなあ」

「ハハハ。そちらのお嬢さんが?」

「ドーラの冒険者ユーラシア君とその使い魔ヴィル、予の娘ルーネロッテです」

「いずれも可愛らしいお嬢さん達だのう」

「照れる」

「照れるぬ!」

「照れます」


 あれ、ルーネまで乗っかってきたぞ?

 バルタザールさんは陽気な爺ちゃんだ。

 全然複雑な人じゃないし、警戒する必要ないわ。

 セウェルス殿下の表情がやや硬いが、目の下のくまが消えてる。

 ちょっと太って健康そうになってるな。

 今の生活が身体に合ってて、いい影響を及ぼしてるんだろう。


 セウェルス殿下が言う。


「ユーラシア」

「何だろ?」

「すまなかったな」

「いや、いいんだよ」


 おそらく以前、『強奪』の固有能力を使ってあたしの『ゴールデンラッキー』を抜き取ろうとした件だろう。

 少しサッパリした顔になるセウェルス殿下。


「ずっと気になっていてな。不意打ちのようなマネは卑怯だった。オレは皇帝に相応しい器じゃなかった」

「かもね。殿下はジェスパーさんっていう武官覚えてる?」

「ジェスパー?」

「殿下と初等私塾で一緒だったって言ってた」

「ああ。あの態度のデカいジェスパーか」


 ラグランドで初めて会った時もえらそーな衛兵長だと思ったけど、セウェルス殿下に対しても態度がデカかったのか。

 笑える。


「今は在ドーラ大使付きの武官なんだ。殿下のこと心配してたぞ。聡明な方であったのにって」

「ハハッ、あのジェスパーに気にされるとはな」


 俯くセウェルス殿下。

 あたしと殿下が何を話しているか、お父ちゃん閣下もルーネもバルタザールさんもよくわかってないと思う。

 けどセウェルス殿下の顔が和やかになってきているのは理解しているのだろう。

 特に横から話しかけてこない。


「元気そうじゃん」

「ああ、おかげさんでな」

「よかった。ジェスパーさんには元気だって伝えておくよ」

「よろしく」

「お酒飲むのはやめちゃったの?」

「一時期医者にはやめろやめろと言われてたんだけどな」

「ハハッ、わしと晩酌程度ですぞ。美味い食事と美味い酒は健康の根源ですからな」


 お酒も急にやめるとイライラしちゃうのかもな。

 デス爺が健康なのもお酒のおかげかもしれないし……最近飲み過ぎのような気がしなくもないけど。

 セウェルス殿下にとって、ズデーテンでバルタザールさんとのんびり過ごすことはいいことだと思う。


「ズデーテンにはおいしいお酒があるんだ?」

「南の複数の島国で、それぞれ特徴的な果実酒やサトウキビ酒が名産でしてな。貿易でズデーテンに入ってくるのですぞ」

「魅力的だね。帰りに買っていこうかな」

「ほう? ユーラシア嬢もイケる口ですかな?」

「いや、あたしの世話になってるじっちゃんがお酒好きなんだ。お土産に持っていこうかと思って」

「ユーラシア君、話がズレてる」


 お父ちゃん閣下のカットイン。

 いよいよ本題か。

 お父ちゃん閣下はどうすべきと考えているんだろうな?

 お手並み拝見だ。

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