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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2383話:反射率の問題

 フイィィーンシュパパパッ。

 朝御飯のあとにも農作業を少しして、塔の村にやって来た。

 四日後の異世界が攻めてくる日に、塔の村で何ぞイベントがあるって話だったから確認しとかないと。


「さーて、デス爺はどーこだ?」

「あそこだぬ!」

「あれ? どーしたんだろ。あんまり眩しくないな」


 ハゲ頭のツヤがない気がする。

 疲れが反射率に反映してるのかな?


「おーい、じっちゃーん!」

「何じゃ、騒々しい」

「どしたのじっちゃん。元気がないみたいに見えるんだけど」


 内緒話モード発動。


「ソールに聞いたのじゃ。今月二二日に、エルの母親が一隊を率いてエルを奪いに来ると」

「そーなんだよ。あたしが聞いた別ルートの話でも二二日だって」

「早いではないか。『アトラスの冒険者』は今月一杯なのじゃろう? ギリギリに来るという話ではなかったか?」

「想像に過ぎないけど、失敗したら今月中にもう一回っていう頭が向こうさんにあるんじゃないかな。とすると、二二日に来るで間違いなさそう」

「ふむ、そうか」


 で、聞いておかねばならんことがある。


「問題の二二日に何かのイベントがあるって聞いた」

「お主は知らなかったか。ゴーストアイドルの初ライブじゃ」

「ゴーストアイドル?」


 全然想像してないワードが突然ポンと出てきたぞ?

 何だそれ?


「お主も関わっとるじゃろ。海の王国が船を沈めたせいで、四六人の芸能志望の少女達が犠牲になった事件」

「沈没は昔の事件で、あたしは関わってないじゃん。その件で海の王国とエルが揉めたやつのことかな? で、ゴーストアイドルとは?」

「四六人の少女達は、ゴーストになってまでもデビューしたい。舞台に立ちたい。脚光を浴びたいと言うのじゃな」

「何とビックリ」


 あたしの知らんところでもドラマがあるんだなあ。

 今頃になってそんな昔の伏線を回収するとは。

 『精霊使いユーラシアのサーガ』はドラマチックなお話になるわ。


「今後はゴーストアイドル『ヨモツヒラサカ四六』として活動するそうじゃ」

「今後はってどゆことよ。一度きりのライブってわけじゃないの? ゴーストって未練がなくなったら消滅しちゃうのと違うん?」

「ここには『永久鉱山』の塔があるじゃろ? 存在のための魔力を補給できるから問題ないという結論じゃ」

「ふーん。よくできたストーリーだなあ。まーいーや。ゴーストアイドルなんてそんじょそこらにいるもんじゃない。ドーラの観光資源として働いてもらおう」

「お主はドライじゃの。しかし異世界からの侵攻とライブの特急準備で頭が痛いのじゃ」


 だから頭皮からてかりが失せていたのか。

 まあ日が重なるのは、異世界の侵攻軍がわざとそうしたんだろうけど。


「じっちゃんも大変だなあ。これ、ドワーフから納品された転移の玉一〇セットだけど、チェックしてくれる?」

「お主には老人をねぎらおうという気持ちがないのか」


 あるってばよ。

 あたしの敬老精神は大したもんだぞ。


「じゃーん! 帝国の男爵様からもらったお酒、お土産だよ」

「おお、これはすまんな」

「近衛兵長さんが、ペルレ男爵家領ハムのすごくいい酒だって言ってた」

「ハム? 知らんの。どこじゃ?」

「地図だとここ」


 ナップザックから地図を取り出して見せる。


「帝国本土の東端か」

「そーだね。より東の方が帝国領になってからは停滞気味の地域みたいだよ」

「何故そんな地方男爵に酒をもらうのだ?」


 美人絵画集第二弾とガラス産業と『かわいいあくま』シリーズがほにゃらら。


「……ってわけなんだ」

「メッチャ可愛いぬよ?」

「あたしの方もおっぱいピンクブロンドには画集第二弾のモデルになってもらってるからウィンウィンなの」

「ふうむ、地方にまで……お主は随分と帝国に食い込んでおるのじゃの」

「『アトラスの冒険者』のおかげだねえ。今後のドーラの展開においてキーになるような外国のクエスト、皆あたしのところに回ってきてたみたいで」


 おっぱいさんがそーゆー感じに振ってくれたのだ。

 おっぱいさんが影のMVPなんだよ。


「特に帝国との関係は最重要じゃん? 政府だけじゃなくてさ。あちこちの有力者と関係を持っておこうと思うんだ」

「もうドーラ~帝国間が争いになることはないのじゃな?」

「少なくともプリンスルキウスが皇帝の内はないと思うね。プリンスはドーラに国力がないことも、手を出せばしっぺ返しがあることもよーく知ってるから」

「ふむ、平和が一番じゃな」

「でもなー。いずれドーラ国内で紛争がある確率は高いと思うぞ?」

「お主はそう見るか。やはり人口が増えるからか?」

「まーね。ドーラの発展に移民は絶対必要なんだけどさ。行政府に力がないから、揉めた時誰も抑えらんないっていう構造的な欠陥があるじゃん?」


 人口が少ない間は協力して魔物に当たらなければ共倒れだった。

 しかしこれからは、西域以外で魔物の脅威はほぼなくなるだろう。

 西域でも碧長石を使用した魔物除けで魔物の圧力は激減するんじゃないか。

 結果人口は増え、人間同士の軋轢は増加する。


「今も帝国からの移民が聖火教徒を白眼視する傾向にあるんだよ。聖火教徒から新『アトラスの冒険者』を募って、つまんないことでゴタゴタすんなって方向に持ってくけど」

「人間は愚かじゃの。どうにかならんのか?」

「おゼゼが降ってきて行政府が急に力を持つってことがない限りムリだよ。でなきゃ産業興して貿易を発展させて、ドーラはいい国だってムードを作っといてさ。行政府が本当に力を持つまで騙し騙し持ってくしかないんじゃないの? それがうまく行かなきゃバルバロスさんの言うような自主自立の集落が乱立するか、どっかの誰かが王様になって血を流しながらドーラを統一するかどっちか」

「ユーラシアは先が見え過ぎるのう。その力はよき方向に使うのじゃぞ?」

「うん」


 御心配なく。

 あたしは聖女だからね。

 しかも商売人のあたしは、ドーラが一つにまとまってる方がビジネスチャンスが大きくなると囁いてるし。


「二二日のこと、エルと打ち合わせしときたいんだよね。どうせピリピリしてるだろうから」

「もうすぐ出てくると思う」

「先にパワーカード屋で『ホワイトベーシック』買っとこうかな。エル来たら引き止めといてよ」

「うむ、わかった」

「じゃねー」

「バイバイぬ!」

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