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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2377話:真の意味でドキドキ魔境ツアー

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 朝に続いて再び魔境にやって来た。

 連れてきたメンバーを見て、オニオンさんが首をかしげている。


「そちらは?」

「ドーラ名物レベル上げあーんどドラゴン観賞ツアーに御参加の皆様だよ」

「レベル上げ、ですか。……年齢がお高めだと思いますが?」

「魔境は広いから歩くと疲れちゃうかもね。クララの飛行魔法で案内するから無問題!」

「いえ、そういうことではなく」


 いや、まあオニオンさんの言いたいことはわかる。

 ルーネがニコニコしながらついてきたのはともかく、先のない老人がレベル上げてどうすんだっていうことだろう。

 まったくオニオンさんは地味に失礼なんだから。


「帝国で長いこと文官を務めていらした方々なんだ」

「文官? それこそ何故?」

「ドーラは致命的に文官の数が少ないじゃん? とゆーか大臣レベルの仕事できる人がオルムスさんしかいない」

「はい、わかります。ドーラ最大の弱点かもしれませんね」

「おゼゼがないことと双璧の弱点だね」


 双璧ってこーゆーふうに使う言葉じゃないことは知ってるけど、何となく難しい言葉を使ってみたくなるお年頃だから。


「文官を育てて役に立って欲しい。でも文官仕事を教えられる人材がいるくらいなら、行政府で働いてもらいたいじゃん?」

「もっともなことです」

「だから帝国で文官してた方々を招聘して、先生やってもらおうって企みだよ。もちろん行政府の許可も取ってるの」

「なるほど、素晴らしいアイデアですね!」

「で、ドーラ政府にはおゼゼがないから、報酬の代わりにレベル上げとドラゴン観賞で納得してもらってさ」

「理解しました」


 安心召されましたか?

 ドーラには足りないものが多いけど、ないものはないなりに工夫が必要なんだよね。

 パワープレイを工夫って言うな?

 細けえことはいーんだよ。

 

 じっちゃんAが言う。


「我らもいつお迎えが来てもおかしくないでの。その前にドラゴンを一度見てみたいと思ったのじゃ」

「おおう、御老人は肝が据わってるなあ。魔境連れてくると大騒ぎして神様ヘルプ言いだす若者に見習ってもらいたい」

「ユーラシアさんのドキドキ魔境ツアーは安心安全ですけれども、相当刺激は強いですよ。大丈夫でしょうか?」

「お三方とも心臓は丈夫そうだから大丈夫だと思う。いざとなったらクララがいるし」


 つまり蘇生魔法があるし。

 安心安全の蘇生魔法。


「さて、行こうか」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよいい子、悟る三人、破天荒の弟子出撃。


          ◇


「はーい、皆さん下を御覧ください」


 クララの魔法で魔境トレーニングエリアを遊覧飛行しながらガイドする。

 オーガ帯を見回していたら、一発目の獲物として適当なやつがいたぞ。


「大きな魔物か」

「首が三つもあるの」


 皆さんにとっては大きな魔物か。

 魔境の魔物の中ではちっちゃい方なんで、メッチャ新鮮な感想だったわ。


「有名な魔獣ケルベロスだよ。三回攻撃してくるので、それなりに強いでーす」

「「「おお!」」」


 ハハッ、ゲストのお三方大喜び。

 やはり有名どころがはウケがいいなあ。


「ユーラシアさん、あれ、背中が光ってますよ?」

「本当だ。やったぜ! 背中が光っているケルベロスは『エナメル皮』という、少し珍しい素材が取れまーす。倒すよ」


 『エナメル皮』を得られる機会はあんまりないんだよな。

 うちのパーティーにとっては『逆鱗』よりもよっぽど入手難度が高い素材だ。

 フワリと着地してレッツファイッ!

 ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・改×二! バタリと倒れるケルベロス。ウィーウィン!


「何と見事な技だろう」

「力が湧き出るようじゃ!」

「リフレッシュ! どーだろ? もう四、五くらいはレベル上がってるはずだから、身体が軽く感じるんじゃないかな?」

「本当じゃ! これは素晴らしい!」

「今年二〇歳の孫を久しぶりに高い高いしてやろうかの」

「その孫あたしより年上じゃねーか」

「わっちよりは年下だぬ」


 アハハと笑い合う。

 楽しいなあ。

 アトムが『エナメル皮』を剥いで戻ってきた。


「次行きまーす」


 再びクララの『フライ』で獲物を探す。

 上からだと背中光ってるケルベロスがわかりやすいな。

 覚えとこ。


          ◇


「おお、あれがドラゴンかの?」


 翼をバサッとしているいかにもな魔物がいる。

 見た目ドラゴンっぽいからな。


「あれはワイバーンだよ。竜種ではあるけど、所詮亜竜だからタフネスはあんまりない。攻撃は結構苛烈でドラゴンに近いけど」

「なかなかに恐ろしげだの」

「一人で倒そうと思うと五〇近いレベルが欲しいね。パーティーだと比較的楽に倒せるんだ。戦闘に入りまーす。向こうに攻撃ターンを渡さないから大丈夫だよ」


 フワリと着地してレッツファイッ!

 ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・改×二! まあヒットポイントは少ないからどうってことないな。ウィーウィン!


「ラッキー! 卵をドロップしました。ニワトリの卵とは比較にならない、大変な滋養と旨みのある卵でーす。ドーラでは高級食材とされていまーす。今日のお土産としてお持ちください」

「ありがたや。いただきますぞ」

「しかし魔物が簡単に倒れてしまって、面白みがないの」

「ユーラシア式ドキドキ魔境ツアーは安心安全をモットーにしておりますので」


 何かじーさんばーさん達が贅沢なこと言い出したぞ?

 ちょいちょいと肘をつつくルーネ。


「遠くにいるあれ、クレイジーパペットですよね?」

「よしよし、ルーネ偉い。でも残念ながら見送りだな。お年寄り三人はまだちょっと『フレイム』に耐えられないから」


 耐えられるようになったとしても、どーも老人が炎で炙られる様はあたしの精神衛生上よろしくない。

 火葬を思い浮かべてしまう。

 あたしの精神衛生上よくないということは、あたしの感情を吸っているヴィルにも悪影響だ。

 結論、スルー。


「私が単独で倒してきていいですか?」

「その手があったか。えーと、他の魔物に絡まれることもなさそーだな。よし、行ってらっしゃい。ダンテ、ルーネについてって『実りある経験』かけてあげて」

「イエス、ボス!」


 あたし達は高みの見物だ。

 頑張れルーネ。

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