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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2371話:センチメンタルナイト

「美少女聖女精霊使いユーラシアのセンチメンタルナイトです。リスナーのサイナスさんこんばんは」

『随分と毛色の変わった入りだね』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『肉が足りないんじゃないか?』

「いや、夕食はドワーフのところ行ってお肉三昧だったから、お肉成分が足りないことはないんだけど」

『じゃあどうした? ユーラシアらしくもない。特に美少女聖女精霊使いっていう間延びした表現が気持ち悪い』

「それなー。最近よく美少女聖女ってワードを使うんだけど、どーもうまくないとは自分でも感じてる」


 シシーちゃんに突っ込まれるくらいだしな。

 もっと的確な表現がないものか。


「美聖女がいいかと思ったけど、人間聞き慣れない単語はえっ? とか思って、あとの内容が頭入ってこないことがあり得るじゃん? おかしなところに突っかかると、あたしの説得力に影響しちゃいそうで」

『君が一つの単語に対して、そんな細かいところまで考えてることに驚きだよ。美少女か聖女か、どっちか外せばいいじゃないか』

「それもな? 物事は正確に伝えたいし」

『突如出現する正確性』


 アハハ、確かにどうでもいいことではある。

 美少女聖女についてはとりあえず保留、と。


「今月二二日に異世界人がエルを取り返しに来るっていう、比較的確度高いと思われる情報が入ったんだ」

『六日後か。結構早くないか?』

「早いね。あたしも意表を突かれたよ。でも向こうさんが一回目は試験的に、二回目が本番とか考えてると、ありそーな気がしない?」

『なるほどなあ』


 実際の無乳エンジェルの思惑はわからないけれども。

 ただ二二日ってのは実に絶妙な日だと思えてきた。


『ああ、『アトラスの冒険者』の終焉を肌身に感じてセンチメンタルナイトなのかい?』

「そゆこと。ナイーブなあたしの小さな胸が痛むの」

『お医者さんに診てもらいなさい』

「ありがちな返しは期待してなかったな。五〇点」

『精進します』

「ひょっとするとこっちの世界を混乱させる手を打ってくるかもしれないから、サイナスさんには知っといて欲しかったんだ。でもアレク達には内緒ね」


 アレク達は修行が足りない。

 知らせて浮き足立ってると、思わぬ綻びにつけ込まれるかもしれないのだ。

 不要な条件は排除すべし。


『了解だ。でも異世界がドラゴンを転移させてくるとかは勘弁してもらいたい』

「あ、魔物を召喚してこっちを混乱させることは、もう多分ないと思っていいよ」


 ソル君が『アガルタ』との連絡員に悪ぶって見せてると思うからね。


「今日のメインイベントは帝国北西部でした」

『絵か? イシュトバーン氏の』

「そうそう。仮面の冒険者ギルドマスター二〇歳実は美人の絵を描かせてもらった。だけどその前に、仮面さんのお父ちゃんを説得しろというエンターテインメントがあってさ」

『言ってたな。父親は反対してたのかい?』

「会ってみたら反対ってわけじゃなかったな。事情を聞かせろってことだったよ。もっともなことでした」


 モデルになることがどうこうと言うより、あたしから見て仮面女子がどうか、冒険者ギルドの先行きがどうかってことだった気がする。


『堅物なんだったか?』

「堅物っちゃ堅物なのかなあ? 強面で極端に無口な人なんだよ。結局今日一言も喋んなかったな」

『ええ? どうにもなんないじゃないか』

「いや、顔見りゃ何が言いたいかくらいはわかるから」

『ああ、君はそうだったな』


 何言いたいか察知するのは得意分野でございます。


「実直ではあるけど堅物って感じでもなかったな。現地ブラウンシュヴァイクをいい町にしようっていう気概のある人」

『ははあ、君とは波長が合いそうだな』

「うん。問題になってる海の魔物がいてさ。倒してくれってことで、すげえ美味かった」

『間がスキップされてるな。魔物を倒した描写が入ってないんだが』

「味の方が重要だからだね。サイナスさん、ウニって知ってる?」

『ウニ? 海底に生息しているトゲトゲの?』

「そう、それ。今日ランチ……やっつけたのはウニの魔物でさ。すげえ美味かった」

『だから間がスコーンと抜けてるって』


 ああ、ウニの食味を思う存分に語りたい。


「棘を飛ばしてくる嫌らしい魔物だったぞ? ブラウンシュヴァイクの海は魔物がいるんだ。漁師さんは魔物の魚も相手にしてるから、レベル一〇くらいの人はチラホラいてさ。魔物じゃないウニは、ブラウンシュヴァイクで名物になるくらい美味いそーな。魔物であっても仕留めて食べてやろうっていう人が何人もいて、ケガ人が出て問題になってたってこと」

『ユーラシアなら問題ないんだろう?』

「まあ。一流のグルメハンターのあたしなら傷一つつけずに倒せるから、おいしいとこが丸々昼御飯になるのでした」

『傷一つつけずにと昼御飯のギャップがえぐい』


 そお?

 そこんとこはイコールで結ばれる関係なんだが。


『食レポをどうぞ』

「ひっじょーに甘くてクリーミーだね。かといってスイーツみたいなわけじゃなくて、口の中は満たされた海。お肉とはまた違ったジャンルの食のチャンピオンだと思いました。イシュトバーンさんやルーネみたいな口の奢った人がガツガツ食べてるくらい」

『それほどか』

「うん。でも残念なことに鮮度が重要なんだそーな。ブラウンシュヴァイク以外では食べられないな。話聞く限り養殖もそんなに難しくなさそうなんだけどさ。あそこもカラーズと人口変わんないくらいの小さな町だから、養殖したところで市場がない」

『惜しいな』

「ウニはね。でもひょっとしたら真珠を養殖できるかもしれないと思ってるの」

『真珠って貝の中からたまに見つかるという宝石?』

「それそれ。賢いあたしは考えた。真珠って石じゃなくて、貝が作るものなんじゃないかと。魔道研究所に資金投入して、真珠の成分と貝殻の成分を比較して調べてもらってる」

『しかし現実主義者のユーラシアは、宝石に興味はないだろう?』

「よく知ってるね。でもおゼゼや商売には興味あるから」


 お高いピンク真珠をもらってしまっているのだ。

 お返しに真珠養殖のヒントくらいは教えてあげたい。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は聖火教の礼拝堂へ。

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