表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2370/2453

第2370話:決戦は六日後?

 フイィィーンシュパパパッ。

 魔道研究所と肉狩りのあと、チュートリアルルームにやって来た。

 その後異世界『アガルタ』からの報告がないか、確認しにだが。

 バエちゃんはいつもと変わらぬのん気な顔だなあ。

 癒されるわ。

 

「あら、ユーちゃんヴィルちゃんいらっしゃい」

「こんにちはぬ!」

「お土産のお肉だぞー」

「やったあ!」

「ハハッ、踊り狂うがよい!」


 小躍りからクネクネダンスの流れるような連続技を披露するバエちゃん。

 見事だなあ。


「今からドワーフの集落に行くんだ」

「えっ? もう夜になるじゃない」

「夕食がてらだよ」


 新『アトラスの冒険者』用の転移石碑や転移の玉の注文を、ドワーフに出していることを説明する。


「異種族との交流が必要なの? 大変ねえ」

「大変でもないよ。ドワーフはメッチャ器用なんだ。安心して仕事を依頼できるの」

「そうでなくて。だって異種族でしょう? 常識や価値観の違いがあるでしょうに」

「なくはないね。スカした態度を取ろうとするんだよ。腕の安売りはしねえ、みたいな。でもドワーフはお肉とお酒には勝てないの」

「アハハ、何それ?」

「お肉は異種族にも通用する正義ってことだよ。ミートイズパワー! ミートイズジャスティス!」


 頷くバエちゃん。

 お肉つおいってのは大体その通り。

 あれ、急に顔が神妙になったな。


「マリボイラ副評議長から連絡があったのよ」

「本人から?」

「ええ、本人がここまで来て直接教えてくれたわ」


 マリボイラさんには、異世界『アガルタ』のエルを取り返しに来る部隊がいつ攻めてくるかを教えてもらうように頼んでいたのだ。

 今月二〇日以降になるという話だったが?


「いつになるって?」

「二二日だって」

「六日後か。あれ? 思ったより早いな」


 もっとギリギリになるかと思ってた。

 いや、失敗したらもう一度っていう算段なのかもしれない。

 とすると一回目の侵攻として、早めを計画しているというのは信憑性がある。

 もっとも二二日に来るというのが、絶対に正しいとも言えないわけだが。


「エンジェル所長が自ら隊を率いて、二〇人規模じゃないかって」

「隙を突こうとするのかと思ったら、顔の割れてるエンジェルさんが自分で来るのか。これも意外っちゃ意外」

「二〇人だと所長の忠実な直属の部下だと思うわ。『アトラスの冒険者』関係の」

「ふーん、ありがとう」


 ある程度向こうの世界式の荒事に慣れてる面々と思った方がいいな。

 正攻法で来るっぽい。

 あるいは自分が姿を見せておいて、例えばソル君とかの協力者にエルを捕まえさせるつもりかな?


 バエちゃんが不安そうに言う。


「ユーちゃんは、間違いなくエンジェル所長がそちらの世界を攻めるって考えてるのね?」

「まあねえ。エンジェルさん自ら来るかは変更があるかもしれんよ? けど今更方針は変わんないでしょ。エンジェルさん、そっちの世界でかなり追い詰められてるんじゃないの?」

「ええ。所長が悪いわけでもないのに可哀そうで」


 無乳エンジェル自身が旧王族と関わりを持ち、忌み子とも言えるエルを産んだこと。

 エルを隔離しておいたにも拘らず逃がしたこと。

 異世界の法律は知らんけど、『ユーラシア』の常識から言えばともに罪にはなりそうにない。

 しかし向こうの世界を巻き込む大騒動になっていることもまた想像に難くない。


「ねえ、ユーちゃん。エンジェル所長は娘さんと一緒にそちらの世界に住むのがいいような気がするの。どう思う?」

「バエちゃんもそーゆー考えになったか」


 しかも無乳エンジェルもセットでか。

 正直驚きだ。

 バエちゃんこっちの世界に来たことないはずだから、伝聞だけでしか知らないだろうにな。

 こっちはおいしい魔物が食べられるいい世界だよ。


「エンジェルさんはそっちに住んでてもいずれ噂なんか消えちゃうと思うけど、エルに関してはこっちの世界にいるべきだと思う。とゆーかエンジェルさんが精霊使いエルをそっちの世界に連れ帰る展開は、こっちの世界が面白くない上にそっちはえらいことになるぞ? あたしは推奨しない」

「……戦争がなければ『ユーラシア』はいい世界だと思うの」

「確かになー。戦争をなくすために『ユーラシア』の名を持つ聖女が働いてるようなもん。無給で」


 アハハと笑い合う。

 『アガルタ』に比べれば足りないものの多い世界だ。

 ただしあたしにとっては、世界の行く末に関わる余地があるとも言える。

 きっといい世界にしてみせる。


「まーでも大きな戦争が起きて混乱する未来は当面なくなったんだ」

「そうなの?」

「こっちの世界の神様や予知の天使がそう言ってるから、多分間違いないな」

「よかった」

「こっちの世界はまだいい世界じゃないかもしれないけど、今後どんどんよくなるよ。今、世界の通貨単位を統一しようっていう試みをしてるんだ」

「取り引きが多くなれば争いも起きにくいということね?」

「そうそう。世界の北半分は今後二、三年でまとまりそうな雰囲気になってきてるんだよ。何とあたしが通貨単位統一委員会の委員長なの」

「すごいじゃない!」

「お飾りだけどね。実務は力量のある人がやってくれる。で、統一通貨単位の名前は『ユーラシアギル』だよ」

「世界の名前ね? 素敵ねえ」

「あたしの名前だよ」


 放熱海より南のシンカン帝国にも関わりが出てきてるしな。

 あたしこそが世界の王だって気になってくるなあ。

 『アトラスの冒険者』廃止後も楽しみがたくさん残ってる。


「……エンジェル所長をそちらの世界にってことは可能なのかしら? ユーちゃんから見てどう?」

「十分可能だと思うね」

「そっちの世界に対して迷惑ではないのかしら?」

「迷惑では全然ないよ。ドーラは人口少なくて移民が欲しいんだし。特にそっちの世界の進んだ文化を知ってる人が来てくれるんだと嬉しい。技術者だと万々歳」


 異世界の人たくさん捕まえて飼い馴らしたい。

 あれ? 魔物や悪魔でも似たようなこと言ったかもしれないな。


「ユーちゃん、カレー食べたくない?」

「食べたいね」

「四日後の夜どうかしら?」

「わかった。お肉もたくさん持ってくるよ」

「やあん!」


 チュートリアルルームで食べる最後のかれえになるな。

 寂しいといえば寂しい。


「じゃあ今日は帰るよ」

「またね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ