第237話:探し物は何ですか
自由開拓民集落バボの地下の遺跡ダンジョンは、広くて歩きやすいしさほど暗くもない。
以前遺跡中央部六芒星の広間にいたトロルメイジを倒しちゃったから、他に強い魔物もいないし。
冒険者的にはごく初級のダンジョンと言える。
ドーラ西域は、ちょっと村の外に出れば魔物に遭遇する機会もあるだろうしな。
洞窟コウモリの狩場としてだけでなく、少しレベルを上げておくとか戦い慣れしておくという目的にも使えるダンジョンだ。
村人達にはちょうどいいと思う。
インプとオオゴミムシを狩りながらずんずん奥へ。
こいつら腹の足しにならないからつまらんなあ。
倒しても充実感がないというか。
トロルメイジのいた大広間までやって来た。
「ここにトロルメイジっていう、魔法攻撃がなかなか強力なボス的な魔物がいたんだ。六芒星のそれぞれの頂角のところに台があるでしょ? 六つの台のそれぞれに一つずつ宝玉が乗っかってたの」
「あ、あの宝玉はここにあったものでしたか」
「うん。多分その宝玉と六芒星のせいで、おかしな力場ができてたんだと思う」
「あの魔物ぶん殴っても全然ダメージ与えられねえ。こっちもダメージ受けねえってやつだな?」
「それそれ。大昔にここの主であったエルフかなんかが、防御のために作った仕掛けなんじゃないかな。間違ってももう一度宝玉置いちゃダメだよ。また攻撃効かなくなっちゃうかもしれないから」
「あ、姐御!」
あれ、普通の人間いるのにアトムが声かけてくるの珍しいな。
「どーしたアトム」
「これ、黒妖石でやす!」
「えっ!」
何と宝玉が置かれていた台に使われていたのは、魔力を蓄えておくことのできる石・黒妖石であった。
考えられることだった。
魔道要素のない普通の石で作って結界が発動するわけがない。
あっ、ほこら守りの村のマーシャが言ってた、あたし達の探しているものとは黒妖石のことだったか。
やったぞ!
でっかい黒妖石に魔力を溜めておくことができれば、畑番の精霊カカシが魔力を分配することができる。
つまり凄草の栽培が軌道に乗る!
「これ買うよ! 一つ五万ゴールドで売ってくれないかな?」
「「「五万ゴールド!」」」
人口三〇人程度の村にとっては小さくない金額だ。
五万ゴールドあれば冬越しがずっと楽になるに違いない。
村人が恐る恐る話しかけてくる。
「随分な大金ですけど、こんな石の台が高価なものなので? 宝石でも貴金属でもないんでしょうに」
「簡単に言うと、あたし達の作りたい魔道の仕掛けを作るのに必要なんだ。でもそんなことやってる人ほとんどいなくて、誰も欲しがらないからこの石売ってないんだよ。あたし達はこの石の大きいやつが欲しくて探してたんだ。あたし達にとっては五万ゴールドの価値があるから」
「俺達だけで返事はできませんが、村の衆誰も反対しないと思います」
「そう? よかった! ありがとう」
一つを台座から外し持っていく。
うおお、かなり重い!
「五万ゴールドは今のあたし達の全財産なんだ。残り五つの台もお金できたら必ず買いに来るから、このまま取っておいて」
「わかった」
「ありがとう。洞窟コウモリの住処はまだ先だよ」
さらに先へ進む。
いやあ、まさかここででっかい黒妖石が手に入るとは。
嬉しいなあ。
占い師マーシャ様々だよ。
「何だか段々暑くなってきたんじゃねえか?」
「この先、植物を育てる温室があるんだよ」
「温室?」
「うん。昔この地下遺跡を使ってた存在が使っていたものだね。一見の価値があるよ」
突き当たり右側から差し込むまばゆい光。
洞窟コウモリランドに到着だ。
「こ、これは!」
「夢みたいだ……」
「光を集める仕掛けと湯の温度で、一年中植物が育つようにしてあるみたいなんだ。花の蜜を狙った洞窟コウモリが群れをなしてるでしょ? やつは肉食じゃないクセに、案外血の気があるから襲ってくるんだよ。ほら、来た!」
インプとオオゴミムシを狩ってたから、村人達のレベルも少し上がっている。
戦わせてみるか。
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あとは村人に任せよう。洞窟コウモリの攻撃! 村人Aがダメージを受けるがカウンター! 洞窟コウモリの攻撃! 村人Bがダメージを受けるがカウンター! 洞窟コウモリの攻撃! 村人Aがダメージを受けるがカウンター! 勝った! 狩れた!
「よーし、おめでとう! あんた達の狩った獲物だよ」
「や、やった」
「今は苦労したけど、一ヶ月もやってりゃコウモリ逃げちゃうほうが心配になってくるから。さあ、もう少し狩っていこうか」
バカめ、群れで来たぞ?
『リフレッシュ』してからレッツファイッ!
ダンテの実りある経験! あたしの発手群石! ウィーウィン!
「す、すげえ。一網打尽だ……」
「お土産にちょうどいいくらいかな。群れは危ないから、あんた達が戦う時は一匹ずつにしてね」
「そうだな」
もう一度ギルドカードを起動する。
「さっきのカードだよ。もう一度触ってくれる?」
全員レベル四になった。
「見た? 皆確実に強くなってるよ。今はそこのオレンジ髪の精霊が、戦闘になるたび経験値が倍になるスキルかけてたからレベルアップが早かったけど、これからはサービスがないからね。地道に頑張ってちょうだい」
「「「おう!」」」
「おっ、気合いが入ってるね。さあ、帰ろうか」
レベルが上がるってのはワクワクするもんだ。
クララの『フライ』で村に戻る。
◇
「だったらこの台は差し上げてもよろしいのだが。あなた方は十二分にこの村に尽くしてくれたのであるし」
黒妖石の話を聞いた村長は言い、多くの村人も頷く。
他の村と付き合いが始まると、お金は必ず必要になるから取っときなさい。
ニワトリを飼いたいね。
「いや、ありがたいけど、これは真っ当な商売だからいいんだよ。ある人にとって必要だという価値を有するものなら、対価を請求しなくちゃいけない」
「ですが……」
「でも困ってる人につけ込んで吹っ掛けるのはやめてね」
「精霊使い殿がそう言われるのであれば」
村人を代表して村長が五万ゴールドを受け取る。
いやあ、いい取り引きをした。
たしかなまんぞく。
「お金ができたら残りの台も買い取りに来るよ」
「わかりました。お待ちしています」
「この村の発展を祈ってるよ。じゃーねー」
転移の玉を起動し帰宅する。




