第236話:知恵を授けたった
フイィィーンシュパパパッ。
ほこら守りの村から帰宅後、幼女占い師マーシャのアドバイスに従い、急いで自由開拓民集落バボにやって来た。
またここに来ることになるとはなー。
人生行ったり戻ったり。
「あっ、精霊使いさん!」
「ちょっとよろしくない事実が判明したんだ。村長呼んでくれる? 村人集めて」
何事かと集まってくる村人達。
「はい、注目。いいかな? あたしがこの前来た時に、バボの今後の基本方針を大雑把に決めました」
「西域街道まで村域を広げ、行き交う人々が多くなるだろうから宿場として発展させようということですな?」
「そうそう」
「よろしくない事実とは?」
村人達が不安そうだ。
しかし事実は変わらん。
「バボが盗賊村だということは、どうやらかなり広まっているようなんだ。あたしの最も信頼する占い師によると、このままでは人が寄りつかないそーな。早急に対策を打たなきゃいけない」
あたしの頭の中で『最も信頼する占い師』と『肥溜めガール』がイコールで結ばれている間に、村人達の間にざわめきが広がっていく。
「た、対策ったって……」
「どうすりゃいいんだ!」
「なあ、やっちまったことはなくならねえし……」
「やっぱりバボはダメなのか……?」
動揺する村人達。
落ち込むんじゃないよ。
簡単なことなんだよ。
村長が不安げな顔で話しかけてくる。
「精霊使い殿、どうすれば……」
「村の名前を変えよう」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
それだけじゃ何のことかわからないか。
説明を加える。
「あたしの名前使っていいから。近くにあった盗賊村バボは精霊使いユーラシアによって滅ぼされました。この村は最近できました。バボとは関係のない、清く正しく美しい村です。これでいこう」
徐々にその意味するところが村人達の間に浸透していく。
つまり盗賊村があったということは変えられない。
ならばそれを認めた上で、新しい事実で上書きすべし。
最近生まれ変わった村という意味で言えば、ウソとは言い切れないしな(力技)。
「この村ってほとんど周りの集落と交渉ないんでしょ? じゃあわかりゃしないよ。街道沿いにして新しい村の名前で客引きして洞窟コウモリ料理を名物にすれば、絶対に口コミで客は増えていくから」
「お、おう」
「どうせ村域広げる工事もやるんでしょ? 外から見れば十分新しい村に見えるって」
「だったら今整えてる準備を、続けてやっていける!」
安堵した村人達。
よしよし、やる気を取り戻したな。
これで健全な発展を目指すモチベーションを維持できるだろう。
だが釘は刺しておかねば。
クララが『ユー様悪いこと考えてる』と評する笑顔で話しかける。
「ただし、あたしが助けるのはここまでだよ。もう一度やらかしたら次はないと思って」
おーおー、村人全員の背筋の伸びること。
『ビシッ』って音が聞こえたような気がするよ。
「何か質問あるかな?」
「新しい村の名前はどうしたらいいだろうか?」
「村の皆さんで考えて。訪問者にとって覚えやすい名前がいいと思うけど」
村人にとって馴染みやすい名前の方がいいか。
まあ凝り過ぎてややこしいんじゃなければ何でも。
「今のままじゃ旅人が寄りにくい気もするんだが、どうすべきだろう?」
「やっぱ頑張って街道まで整地するのが先だな。逆にチャンスだよ」
「チャンス?」
「街道ありき、旅人を呼ぶぞっていう考えの下に村造りができるからさ」
「そ、そうか!」
街道沿いに整地された場所があれば、開けたイメージを出せるから立ち寄りやすいと思う。
ウマやウシ連れてきた客にとっても便利だし、人目につくところに看板も出せるしな。
最初は難しいと思うけど、茶屋、弁当屋、宿屋、道具屋なんかを揃えて幟一杯立てれば、旅人だって立ち寄るに決まってるわ。
「売るものが何もないんだが」
「それなー。最初売れるものが少ないのはしょうがないけど、最低限食べ物と飲み物は何とかしよう。ムダにするともったいないから受注生産で。宿泊客に必ず明日の弁当が必要か聞いて注文取るの。村に寄っただけで泊まらない旅人にも、三〇分以内に弁当を出せる体制を作って。その三〇分におゼゼを落とさせる工夫をするのだ。地下の遺跡ダンジョンにチドメグサや魔法の葉なんかの薬草が生えてるよ。あれ売ろう」
「地下の遺跡に入ってみたんだが、どの辺にコウモリがいるかわかんねえんだ」
「案内するよ。二、三人ついて来て」
村人三人を伴い、クララの『フライ』で井戸口から地下遺跡内へ進入する。
「洞窟コウモリが多いのは一番奥、すごく温かくて植物の繁茂してるところだよ。奥に行くまでにインプとオオゴミムシが結構出るけど、少し慣れれば間違いなく倒せるようになる。初め真ん中の大きな広間にかなり強い魔物がいて、魔道の仕掛けのせいでこっちの物理攻撃が通らなかったんだ。でももうその強い魔物はいないし、厄介な仕掛けもないよ。ちょくちょくここへ来て狩ってれば、すぐレベル上がると思う」
頷く三人の村人達。
レベルさえあればお仕事は楽だわ。
そーだ、『アトラスの冒険者』やパーティーメンバーじゃなくても、ギルドカードでレベルって見られるのかな?
ギルカを起動してみる。
「ちょっとこのパネルを触ってくれる?」
あ、ちゃんと表示されるじゃないか。
全員レベル一か二だ。
ふつーの村人ならまあ。
「ここに表示されるのがレベル、強さの基準ね。一般的に中級冒険者がレベル一五以上、上級はレベル三〇以上って言われてる。洞窟コウモリは、こっちのレベルが低いうちは向かってくるから、剣で狩りやすいよ。でもある程度レベルが上がると逃げちゃうんだ。そうしたら飛び道具使ってね」
「なるほど、参考になる」
「わかったぜ!」
ついてきた三人の村人がしきりに感心している。
「ちなみに精霊使いさんのレベルはおいくつなんで?」
「今六二だよ」
「六二!」
驚く村人達。
冒険者になって二ヶ月弱でここまできたのは、我ながらでき過ぎだと思う。
考えてもいなかったことだ。
でもなあ。
「いや、あたしなんかレベルは高いけど、大して経験積んでるわけじゃないから。世の中にはもっとすごい人いるんだよ」
これは本音だ。
まあすげえ人にはどうやったって敵わないわ。
親しくしておきたいものだね。




