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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2354/2453

第2354話:ソル君と打ち合わせ

 ――――――――――三四九日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、ユーラシアさん、いらっしゃい。今日も朝からチャーミングだね」

「おっはよー、ポロックさん」

「おはようぬ!」


 ギルドにやって来た。


「こんな朝早くからどうしたんだい?」

「昨日の西域に現れたドラゴンに関係する話なんだけどさ。ソル君に言っときたいことがあって。言付けてもらっとこうかなーと思ったんだ」

「ソールさんならもう来てるよ」

「マジか。働き者だなー」


 直接会えるのはラッキーだ。

 ギルド内部へ。

 お、ソル君パーティーとダンが依頼受付所におるやん。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「「「ユーラシアさん!」」」


 アンセリが飛びついてきたぞ?

 もちろんヴィルもだが。

 最近女の子にモテる気がする。

 いや、昔からか。


「どうしたの? ソル君達浮かない顔してるじゃん。ダンに嫌がらせされた?」

「そんなんじゃねえ。昨日のドラゴンのことでよ」

「ユーラシアさんに相談したいことがあったんです。すぐ会えたことはツイてましたよ。今いいですか?」


 ソル君達も昨日マウンテンドラゴンが西域に現れた話を聞いたのか。

 ソル君達はどういう見解かな?

 ちょうどいい。

 内緒話モード発動。


「突然のドラゴン出現に関しては、ソール達も異世界の関与を疑ってるんだ」

「まああんなことができそうで、やる動機があるのが『アトラスの冒険者』本部しかないもんねえ」

「やはり……」

「昨日デミアンとも話してよ。エルから意識を遠ざけるための陽動じゃねえかって結論になったな。ソールはどう思う?」

「オレ達も話を聞いて、すぐ同じことを考えました。一般人の住んでる地域にドラゴンを放つとは、何て危ない。勝手なことを!」

「まあまあ。ちょっとやりやすくなったよ」

「「「えっ?」」」


 ダンがニヤニヤしてやがる。

 ソル君達みたいに驚いてりゃいいのに。


「またトリッキーな策を思いついたんだな? 聞かせろ」


 やられたらやり返す。

 当然のことだわ。

 トリッキーでも何でもないわ。


「今のところ、ソル君達以外に『アトラスの冒険者』本部からの工作員が接触しに来たメンバーはいないかな?」

「いねえな」


 うむ、あちこちに接触してるとバレやすくなるしな。

 何人もにコンタクトを取るわきゃない。

 実績実力からして、ソル君を味方にできれば十分と向こうさんは考えているのだろう。

 好都合だ。


「今度工作員が近付いてきたら怒って。マウンテンドラゴンを送り込んできたのはお前達だろう。対応が早かったから人命に被害はなかったが、一つ間違えたらとんでもないことになっていたって」


 異世界『アガルタ』は当時結構な犯罪者扱いだっただろう旧王族も、死刑にせずに追放処分にしたくらいだ。

 平和で進んだ社会ということもあって、命が重いという考え方があるんじゃないか?

 ならば人命どうこうという文句は通りやすいと思う。


「大変な被害が出かけた。今のところお前達の世界からの関与を疑っている者はオレ以外にいないが、こんなことを今後も続けるなら手を引かせてもらうって」

「ははあ? お前達の世界からの関与を疑っている者がソール達に以外にいない?」

「そこ重要なとこね。こっちは向こうの世界についてはノーマークですよって、ミスリードさせときたいの」

「当然謝ってきますよね? 二度とドラゴンを転送させることはないと約束させることはできるでしょう」

「さあ、そこだ。黙っててやるから口止め料として何か寄越せと交渉するのだ」


 ダンが首をかしげる。


「……バレたってどうせ『アトラスの冒険者』は引き上げだろ? こっちとは関係なくなる。ノーダメージじゃねえか」

「違う。バエちゃんを通してそっちの世界に正式に抗議するって脅すんだよ。ドラゴンを送り込むなんてテロそのものだ。テロリストの一味と知れたらお前の浮かぶ瀬はなくなると」

「ひでえ」

「これは大してひどくないんじゃないかな?」

「ひどくないぬよ?」


 ひどい目に遭ってるのはこっちだとゆーのに。


「もらうもんは何でもいいけど、ソル君は賄賂で操れるやつだっていう印象を与えて欲しいんだよね。ちなみに今は何と引き換えに向こうの手先のマネしてるの?」

「特に何も。異世界との友好のためにって言われてるんですよ」

「大変よろしくないな。いや、そーでもないか。友好のためにドラゴンを転送させるとは何事だって突っ込んでやりゃいい」

「わかりました」

「で、銭金やもので転ぶやつだと思われると、多分エルをさらう当日の直接の手伝いを依頼されるはず」

「「「「!」」」」


 向こうの人員は最先端の技術装備に身を固めているといっても、レベルが低いことは否定できない。

 協力者として、こっちの世界の高レベル冒険者を欲しがるだろうことは想像に難くないのだ。

 今のところ詳しい計画を打ち明けられるとこまで信用されてないから、エルの拉致を手伝えって話が出ないだけ。


「工作員がその手の話を臭わせてきたら、そちらの世界の住人である精霊使いエルを捕らえることに協力しろとのことなのだろう? いくら出す? ってズバッと言っちゃって構わないからね」

「怪しまれないでしょうか?」

「よく考えればうまい話過ぎると思うだろうけど、もう疑えないでしょ。逆らったら向こうの世界でテロの一味認定されちゃうもん」

「ひでえ」

「実行までの時間もないしね」


 無乳エンジェル率いる侵攻部隊の一味も、最早ソル君を信じるしかあるまい。


「ところで向こうの世界が侵攻してくるのはいつなんだ?」

「エンジェル所長のライバルからの情報で、今月二〇日以降とは言われたな。けどそれ以上のことはわかんない。ソル君達のルートで聞いたら教えてよ」

「わかりました。でも悪ぶるのも骨ですね」

「おまけにエルを捕らえようとするやつらを土壇場で裏切るっていう、一番鬼畜なイベントを残してるしねえ。でもアンセリだってたまには鬼畜のソル君を見てみたいでしょ?」

「「見たいです!」」

「ほらほら、たまにはアンセリにサービスしてあげなよ」

「サービスするぬ!」


 アハハと笑い合う。

 これでソル君も迷わずうまくやるだろ。

 あたしの用は終わった。

 内緒話モードを解除する。


「じゃ、あたしは帰るよ。健闘を祈る」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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