第2350話:突然ドラゴン
シシーちゃん達と昼食をいただいた。
おにくおにくと大喜び、ペペさんを彷彿とさせる食べっぷりだった。
頼むから困ったちゃんにはならないでおくれ。
いよいよ幼児教育は大事だな。
午後時間があったので、ギルドにやって来たら……。
「こんにちはー」
「あっ、ユーラシアさん、ルーネロッテさん! いいところに来た!」
「何事?」
ポロックさんが慌ててる。
おかげでチャーミングって言ってもらえなかった。
損した気分だ。
「ドラゴンが現れたらしい」
「ドラゴン? どこに?」
「西域だ。自由開拓民集落クルクルの近く」
西域で最強って言われている魔物は、レベル二〇で互角と言われているマッドオーロックスだ。
ドラゴンはノーマルなやつでも、一人で相手にするんじゃレベル六〇あっても厳しいぞ?
強さが全然違うんだが。
デカさも違うけど。
「危ないな。誰が報告してきたの?」
「ネクストジェネレーションズの四人だよ」
後輩ズか。
ボニーがクルクル出身だしな。
「先輩!」
「おおう」
ボニーが飛びついてきた。
ついでにヴィルとルーネも。
何なんだ、あんた達はまったく。
「ボニー落ち着け。クルクルの近くにドラゴンが現れたことまでは聞いた。詳しい状況教えて」
「うちのメンバーと一緒にクルクルで昼食を取っていたんだ。そうしたら村人が駆け込んできて大きな魔物が出たと。クルクルより少し東の森で」
「マジでドラゴンなんだ? 西域にドラゴンなんて考えにくいんだけど」
「私も本物のドラゴンは見たことないけど、レベルが八〇以上あるから……」
「マジもんっぽいな」
ドラゴンじゃないかもしれないけど、『サーチャー』持ちのボニーがレベル八〇以上と確認してるならヤバいやつだ。
街道も危ない。
早めに対処しないと。
「村人は街道から西へ避難させた」
「よし、グッジョブ」
「今デミアンさんとダンさんが現地に行ってくれたんだ。カトマスから飛行カードで飛んでくつもりだと思う」
「デミアンとダンが行ってるのか。じゃあ任しときゃ大丈夫だろ」
「それが一体じゃないんだ! 少なくとも三体はいる!」
「え?」
どーして西域でドラゴンが複数体出るなんてことがある?
「原因が知りたいけどあとだな。ヴィル、クルクルに飛んでくれる?」
「わかったぬ!」
瞬時に掻き消えるヴィル。
「先輩が行ってくれるのか? 私も!」
「ダメ。ギルドで待ってなさい」
「何故だ!」
「ボニーが行ったって役に立たんもん。役に立つことやってくれる?」
「役に立つこと?」
「西域にドラゴンなんてどう考えたっておかしいだろ。ドラゴン退治したって、原因を断たなきゃまた出ちゃうかもしれないんだぞ? 後輩ズの皆と当時の状況を整理して、違和感あることなかったかピックアップしといてくれる?」
「う、うん」
「で、マウさんとかピンクマンとか、何か意見ありそーな人の見解を聞いといてくれると助かるな」
「わ、わかった」
「じゃーねー」
転移の玉を起動して一旦帰宅、うちの子達と合流だ。
◇
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
クルクルにやって来た。
飛びついてきたヴィルにルーネとクララもぎゅー。
「クルクルの集落内からじゃどこにドラゴンいるかわからんな。クララ、お願い」
「はい、フライ!」
フワリと飛び立つ。
東って言ってたな。
ゆるゆると東へ。
「おーいるいる。マジでドラゴンだな。でも見たことない図体大き目のやつだぞ? メッチャ暴れてるな」
「ユーラシアさんでも見たことないドラゴンですか?」
「うん。ドーラの魔境にはいないやつだよ」
暴れるのだってエネルギーがいるのだ。
いくらドラゴンが好戦的な魔物ったって、あんなにむやみと騒いだりしないものなんだけどな?
かなり違和感がある。
クララが言うにはマウンテンドラゴンだそうな。
ノーマルドラゴンの一種だ。
特にどうってことはない。
「全部で四体だ。一体ずつ倒すよー」
「「「「了解!」」」」「了解だぬ!」
着地してレッツファイッ!
ダンテの実りある経験! ルーネに経験値をサービスしてやるつもりだな。マウンテンドラゴンのストンピング! アトムが受けてスタン! あたしの雑魚は往ね! 問題なくウィーウィン!
「リフレッシュ! よーし、問題ないな。次もこの調子で行きまーす。もしあたしがスタン食らったら一旦『煙玉』使って退却してね」
頷くクララとルーネ。
アトムが『逆鱗』を毟りに行った。
うちの子達はしっかりしとるわ。
「「ユーラシア!」」
「おおう、ダンとデミアンか。いらっしゃーい!」
「いらっしゃいぬ!」
『逆鱗』を回収してる間にダンとデミアンが飛んできた。
ツンツン銀髪のふてぶてしい男ダンがニヤニヤしながら言う。
「あんたは必ず来ると思ったぜ。トラブルを嗅ぎつける嗅覚が尋常じゃねえからな」
「たまたまギルド行ったら、ドラゴンが出現したって聞いただけだわ。トラブルが起きてるから大喜びだったわけじゃないわ」
「だから首突っ込みに来たんだろ? わかってるわかってる」
「その通りだけれども」
笑うな。
トラブルメーカー扱いすんのはマジでやめろ。
「いや、美少女精霊使いがすぐ来てくれたのは助かった。悪くない」
「一体ずつ倒してきゃどうってことないな。何か気付いたことある?」
「見たことのないドラゴンだな」
「あれマウンテンドラゴンって言うんだって。あたしも初めて見た」
「マウンテンドラゴンか。ドーラでは出現報告のない種だな。悪くない」
何が悪くないんだかわからんけれども、ドーラでは出現報告がないらしい。
何でそんなもんがいきなり四体も出る?
「むーん? こんなんが出ちゃう心当たりある?」
「ねえな」
「ない。しかしマウンテンドラゴンの暴れようを見ると、パニックを起こしているんじゃないかと感じる」
あたしも思った。
怒ってる感じじゃないのだ。
どういうことだろうな?
「状況からして召喚のように思える。しかし現れた直後なら魔力の残滓を感じたろうが、今からではわからんな。悪くない」
「詮索はあとでいいじゃねえか。まず倒そうぜ」
「ダンの言う通りだな」
後輩ズが気付いたことをまとめてくれてるはずだ。
レポートを見ながら検証した方が早い。
「あいつスタンさせる攻撃使ってくるんだよ。ダンとデミアンとアトムで盾役やってくれる? あたしが仕留めるから」
「「了解だ」」




