表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2328/2453

第2328話:世界の王たるあたしのために

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日は結構働いたから眠い。ぐう」

『面白い話を披露してからにしてくれ』

「面白い話で疲労してしまうぐう」


 いや、でも最近はサイナスさんとの夜通信が終わってからグッスリ眠るパターンだからな。

 中途半端だとリズムが崩れるかもしれない。

 あたしの日常はムリヤリイベントやハプニングが割り込んでくるとゆー特徴がある。

 生活のリズムを保とうとする姿勢は大事なんじゃないかな。

 気持ちの問題だけど。


「ところで開拓地の北に面積広げたとこ、問題ないかな?」

『ん? いきなり跳躍話法かい?』

「でもないけど、昨日帝国東方領で似たようなことしてきたじゃん? 何となく気になっちゃった」

『おい、フラグを立てようとするなよ』

「フラグちゃうわ」


 わざわざトラブルにしようとすんな。

 あたしの主人公補正はかなり丁寧に仕事するんだから。


『ああ、安眠のためか』

「何となく気になる程度のことで安眠できないと思われるとは、あたしの睡眠欲も舐められたもんだね」

『今一つユーラシアらしくないノリだな』

「そお?」


 確かに『それでもあたしの睡眠欲は勝つ』とか、異種格闘技戦風のセリフの方があたしっぽかったかも。


「変なとこ掘り下げるのは、何か問題あったから?」

『でもないな。第二次掃討戦獲得地は一般解放はされた。ただし原則として魔物と戦える人と同行の時のみで』

「ふうん? まだ魔物出る?」

『残ってると考えるべきだろうな。今日は出たって話を聞かなかったが』


 森は遠くまで見通せないから、全部倒せたか自信ないんだよな。

 ただ危険な肉食魔獣がいる地区ではないんで、大した問題にはならなさそうだが。

 踊る人形が残ってて低レベル者がバッタリ出遭ったケースくらいかな?

 逃げられないのは。


『一応今月一杯は警戒強めの態勢でいる予定だ。魔物が見られなくなったら、来月からは自由でってことになるかな』

「ふんふん、わかった」

『で、今日のメインのエンターテインメントは?』

「おねだりするなあ。ラグランド行ってきました」

『ああ、帝都で育てられているオードリー王女をラグランド人に見せて、宥めてくるってイベントだな?』

「うん」


 オードリーがずっと帝都に在住しているから、ラグランド人が不安に思っているというやつだ。

 わからんでもない。


「案の定、オードリーがラグランド人の前に姿を現して挨拶したら、姫様戻ってきてくださいーって大人気。あたしも姫様って呼ばれたい」

『そうだろうな』

「今の『そうだろうな』は、オードリー姫大人気の方かあたしも姫様って呼ばれたいの方か、どっちだろうな?」

『そういうのいいから』

「うっかり元公爵とリキニウスちゃんも同行してたんだ。うっかり元公爵は高い階段からすっ転げて無傷だったことがあって、ラグランドでは『不死身の公爵』って呼ばれて知名度高いの。あたしも『不死身のウルトラチャーミングビューティー』って呼ばれたい」

『そういうのいいから』

「オードリーの婚約者なのに、リキニウスちゃんが完全に空気だった。あんなに可愛い男の子なのに可哀そう。あたしだったら存在感空気なんて耐えられない」

『そういうのいいから』


 全部『そういうのいいから』で返されちゃった。

 どういうのがよくないんだろ?


『君の見る限り、ラグランドは特に問題なさそうってことか』

「今はね。対応が早くてよろしかったです。時々オードリーがラグランドに顔を出す必要はあるだろうけど、そっちは問題ない」

『ん? そっちは、とは?』

「サイナスさん鋭いね。ラグランドの雰囲気がよくないって報告を施政館に寄越したのは、総督のジェロンさんっていう人なんだ」

『そりゃ総督の役割だろうけど、問題があるのかい?』

「ジェロンさんは以前に植民地大臣を務めたこともある、職業外交官っていうより政治畑の人でさ。ラグランド総督に赴任したのが皇帝選の真っ最中で、それ以降の帝都や施政館の情報をあまり持ってないんだよね」

『……』


 考えてる考えてる。


『……つまり君を呼んで話を聞きたいから、ラグランドと王女の問題にかこつけて報告を施政館に寄越した? どうせ君が派遣されるから?』

「という側面があったってことだね。もちろんオードリーがラグランドに顔を出すことも必要ではあった」

『ふうん、面白い』


 サイナスさんも、人間関係や思惑がややこしくなってるやつが好きな人なんだよな。

 自分に全然関係のないことなのに、まったく不可解だこと。


「ジェロンさんは、皇帝選に落選したお父ちゃん閣下のメンタルがどうかってことを心配してたみたいだね。結局のところ」

『大丈夫なんだろう?』

「そりゃそーだ。通貨単位統一だって具体化しつつあるんだし、世界の王たるあたしのためにお父ちゃん閣下が働いてくれないと困るもん」

『セリフの傲慢ぶりがえぐい』


 アハハ。

 ちょっとした会話のアクセントだよ。

 でも八割方本音だ。

 有能な人はあたしのために働くべきなのだ。


「ジェロンさんはさすがに植民地大臣だっただけあって、世界各国や植民地のことをよく知ってそうなんだよね。またしょっちゅう相談しに行きたいなと思った」

『有用な人材とすぐ知り合えるのがえぐい』

「えぐくないわ。『アトラスの冒険者』になって一番の利点は、いろんな人と知り合えたことかなあ? いや、お肉に不自由しなくなったことのメリットの方が上かな?」

『隙あらば肉に脱線しそうなのはいかがなものか。今日の他のイベントは?』

「あとは細かいことだな。ラグランドと昨日の公爵領北の魔物狩りについて施政館に報告でしょ? ヴォルヴァヘイム近くに聖風樹の苗を植えて、オードリー達を帝都のうっかり公爵邸へ送って、セレシアさんとこで完成した服を受け取って、イシュトバーンさん誘ってギルドに行って、ぴー子にエサやってかな」

『マジで忙しいんだなあ』


 確かに。

 今日は大したことやってるわけじゃないんだけど、あちこち行ってると疲れるもんだ。

 あ、話が終わりに近いせいか、段々眠くなってきたわ。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は弧海州植民地。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ