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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2322/2453

第2322話:一人帝都で橋頭堡

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシア殿? あっ、姫!」

「御苦労なのじゃ!」


 ラグランドの首都ウォルビス中央府にやって来た。

 衛士が驚いてら。

 予告なしにいきなり来たからな。

 ついサプライズとかエンターテインメントを重視したくなってしまうから。


「あたし姫って呼ばれたことないな。呼ばれてみたい」

「ユーラシアさんは聖女じゃないですか。遠慮してくださいよ」

「それより姫は何故こちらに?」

「その姫ってあたしのことかな? オードリーのことかな?」

「オードリー様のことですよ!」

「オードリーのことぬよ?」


 アハハ、わかってるって。

 ヴィルとオードリーをぎゅっとしてやる。


「たまにはラグランドにも来ないと、オードリーが忘れられそうだからさ」

「衛士長を呼んでまいります!」


 すっ飛んでった。

 それにしてもラグランドは蒸し暑いな。


「姫?」


 ん? ウォルビスの市民かな?

 比較的ちゃんとした格好してるから、中央府の職員かもしれない。


「そうそう。オードリー王女」

「ええと、ミラクルフィフティーンユーラシアと悪魔ヴィル?」

「今シックスティーンだけどね」「ヴィルだぬよ?」

「そちらは不死身の公爵?」

「いかにも」

「うっかりさんたらマジで不死身の公爵って言われてるんだな。笑える」

「本物だ!」


 リキニウスちゃんにも触れてやれよ。

 将来のラグランド王だぞ?


「姫、お帰りなのですね? お待ちしておりました」

「うむ、待たせたのじゃ」

「おっと、人が集まってきちゃうな。あんたは中央府の職員かな?」

「そうです」

「市民の皆さんに挨拶しときたいんだ。台と拡声器貸してくれない?」

「今すぐに持ってまいります!」


 うっかりさん連れてきてるから何か起こると思ったけど、こういう展開になるのか。

 オードリーが帰ってきたぞと知らせていくのは重要だろ。

 オードリーに挨拶させたろ。

 将来の女王として必要なことだ。

 ただ今ラグランドの人がどう考えてるかがわからんから、ちょっと波乱要因ではあるな。


          ◇


『我が愛すべきラグランドの民よ。わらわは帰ってきたぞよ!』

「「「「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」」」


 おーおー、盛り上がる盛り上がる。

 オードリーは人気があるなあ。


『わらわのことを忘れないでくれていて嬉しい』


 やや俯くオードリー。

 あざといな。

 それともさっきあたしが忘れられそうって言ったのに対するあてつけかな?

 あるいはマジで忘れられるのが怖かったのかもしれないな。

 ラグランドはオードリーの故郷だから。

 

『今は帝都メルエルのお爺様の家に世話になっておってな。楽しく暮らしておる』

「姫様はラグランドにお戻りにならないので?」


 群衆の声にハッキリ答えるオードリー。


『まだ帰らぬ。しばらくは帝都に滞在する』

「「「「「「「「ええ……」」」」」」」」


 落胆する群集。

 あれ、随分とオードリーが帰国することを望まれていたんだな?

 ちょっと姿を見せれば満足するものかと思ってたから予想外だ。


「姫様、戻ってきてください!」

「そうだそうだ! 帝国なんかに行く必要はない!」


 オードリーを帝国に返したくないという声が大きくなり、群集皆を巻き込む。

 一つのうねりのようになってきた。

 よろしくないが……。


「姫を帝国から取り戻せ!」

「その通りだ! オードリー姫はラグランドの女王だ!」


 妙なボルテージ。

 元々反帝国感情の強い植民地だからな。

 オードリーがアワアワしとるわ。

 可哀そうに。


「ゆ、ユーラシア……」

「よーし、オードリーよく頑張った。あとは任せろ」


 震えるオードリーから拡声器を受け取る。

 期待されるのは嬉しいことだが、自分の考えてない方向に動いちゃうと怖いわな。


『皆さん、今日はあたしのために集まってくれてありがとう!』

「「「「「「「「違うわ!」」」」」」」」


 ハハッ、総ツッコミだ。

 お約束通りにありがとう。


『オードリーに戻ってきて欲しいという皆さんの思いはよーくわかります。何故ならオードリーはラグランドの王女にして象徴だから』

「王女様を返して!」

『今はその望みを聞けない』

「どうして!」

『オードリーはまだ何の力も持たない。今ラグランドに戻ったところで何もできないことがわかっているから』


 悲痛な声が上がる。


「姫様の代わりに働きますから!」

「そ、そうだよ。オードリー様に苦労なんかさせないよ!」

『王を継ぐ者オードリーの代わりは誰にもできない』


 バッサリ。

 じゅうろくさいのうるわしきせいじょのしんりにみたされたこえよ、あわれなるみんしゅうにとどけ!


『ラグランドの情報網が大変に優れていることは知ってます。でもそれだけじゃ足りない』


 辺りを見回す。


『オードリーの婚約者リキニウスちゃんは帝国の皇子だぞ? オードリーほど帝国の上流階級に食い込んでる存在がラグランドにいるか?』

「「「「「「「「……」」」」」」」」


 痛いほどの沈黙。


『ラグランドの発展のためには、最高の教育と最高の人脈が必要です。オードリーならその二つを満たせる可能性が高い。しかもタダで』


 頷く人がいる。

 熱が冷めてきた。

 こうなれば理屈は通じる。


『今後一〇〇年待ったって、これだけ帝国が譲歩してくれるタイミングがあるかわからないんだぞ? オードリーは故郷を思い、一人帝都で頑張り橋頭堡となっているのだ。それなのにオードリーの後ろ髪を引くやつがあるか! 一〇歳に満たないオードリーが耐えているというのに、いい歳の大人が耐えられないなんて恥を知れ!』

「ひ、姫様……」


 おーおー、泣いてる人おるがな。

 別にオードリーは帝都で孤独なんて感じてないけどな。

 すげえ生活を楽しんでいますとも。

 安心してください。


『オードリーの帝都での生活は心配しなくていい。何故ならばオードリーの庇護者たる不死身の公爵と婚約者リキニウスちゃんがいるから。オードリーと不死身の公爵、リキニウスちゃんに拍手!』

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」

『時々は皆さんに甘えにラグランドに帰ってくるよ。その時は温かく迎えてあげてくださいね。お終い』

「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」


 こんなところだろ。

 あれ、何でうっかりさんとセグさんが泣いてるの?

 わけがわからんな。

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