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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2320/2453

第2320話:草食魔獣の味にちょっと詳しくなった

 ――――――――――三四五日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」


 朝から皇宮にやって来た。

 心なしかサボリ土魔法使い近衛兵がツヤツヤしている気がする。

 いいことでもあったかな?


「昨日はありがとう」

「やっぱり美少女と一日行動するのは楽しかった?」

「それもあるけど」

「お肉の方だったか。色んな草食魔獣のお肉を食べ比べられるのはよかったね。ヒポポタマウスっていうデカいネズミいるじゃん? あの肉本当は醤油ベースのタレにつけてから焼くとおいしいんだよ」

「それもあるけど」

「まー皇宮の隅っこじゃ潤いがないから、たまにピクニック行くと楽しいわ」

「ピクニックって言うな! 誰かに聞かれたら昨日サボってたと思われるだろうが!」


 何を焦っているのだ。

 毎日サボってるようなもんだろーが。


「初めての魔物退治合同訓練の時だって、四つもレベル上がるなんてことはなかったよ」

「レベルの方か。うーん、あたしは最近レベルは自分で上げるべきっていう考え方になってきてるんだけどね」

「おかげで近衛兵長のウケがよかった」

「むーん? 近衛兵長さんはあたしのレベリングを知ってるはずなんだけどな?」


 サボリ君は戦闘の面ではほとんど何もしてなかったわ。

 どうしてウケがいいんだ?


「何だかんだで精霊使い君は魔物倒すたびに解説してくれるじゃないか」

「見てるだけでもためになるってこと?」

「おかげで草食魔獣の味にちょっと詳しくなったよ」


 アハハと笑い合う。

 どこかで役に立つ知識だといいね。


「レベルは低いより高い方がいいのはその通り。サボリ君は確実に成長した」

「もっともだね。人形系の魔物の重要性がわかった」

「でしょ? あれいないところには全然いないんだけどさ。もし狙って倒すことができるなら、経験値も魔宝玉も大儲け。楽勝で生活が成り立つ」

「ドーラの冒険者の生活が目に浮かぶよ。昨日のカルテンブルンナー公爵家領北の東端部はどうだい? 人形系の魔物しかいないようだったじゃないか」

「ひっじょーに有望だね。でもまだわからんな。危ないのかもしれない」

「君の言っていた、人形系のヤバいやつが湧くかもしれない?」


 こっくり、それもある。


「参考までに、どんなふうにヤバいんだい?」

「じゃ、ヤバいランクが低い方から。ヴォルヴァヘイムにも生息してる泣言地蔵ってやつ。ヒットポイントは六〇~七〇。『ダンシングウインド』っていう強い風魔法を先制で連発してくるから、サボリ君が一対一で対決すると死ぬ」

「そんなに強いのにヤバいランクが低いのか」

「風耐性の装備とダメージ与える手段があれば、サボリ君くらいのレベルでも何人かで勝てる気がするから。ここからヤバいランクが跳ね上がるぞ? 『魔物図説一覧』に載ってない、あたしが謎経験値君って呼んでる跳ねる人形系魔物ってのがいるんだ。一〇分の一くらいの確率で自爆するの。威力は油断してノーガードで食らうとレベル六〇ある前衛でも死ぬくらい」

「ヤバいね」

「同じくらいヤバいやつにウィッカーマンってのがいる。『メドローア』っていう耐性対策取りにくい高威力の魔法を連発する上、イビルドラゴン並みのヒットポイントがあってダメージ食らうと逃げちゃう。こっちのパーティーが五人以上でも逃げちゃう」

「倒せないじゃないか。そんなの」


 あたしも最初倒すのムリなんじゃないかと思ったけど。


「不可能ではないんだな。でもウィッカーマン倒したことのあるパーティーはうちだけだと思う。で、こいつのレアドロップが帝国の国宝鳳凰双眸珠ね」

「昨日少し聞いた話か」

「さらに体感でウィッカーマンの二、三倍は強いっていう赤い人形系がいてさ。これも『魔物図説一覧』に載ってないやつ。ヤバい魔法を三連発で撃ってくるし、ブラックデモンズドラゴンの倍くらいのヒットポイントがある。あれ倒せたのはラッキーだったな。で、こいつのドロップがドーラ独立の時に帝国に献上した聖地母神珠ね」

「それで地母神ユーラシアにちなんだ名がついてるのか」

「『聖』っていう接頭語がいいよね。でもこれ美少女地母神珠とどっちにしようかっていう話があったんだってよ。語呂がいい方にしたって言ってたけど」

「ええ? 誰が名付けたんだい?」

「イシュトバーンさん。絵師の」

「何となくわかる」

「何となくわかってしまうぬ!」


 わかられてしまった。

 アハハ。


「人形系魔物を育成して倒せれば儲かるだろうになあ」

「あ、サボリ君は知らなかったか。皇宮の地下の魔物飼ってるところでは、人形系魔物も飼育してたんだぞ?」

「そうなのか?」

「うん。でも育てた人形系じゃどういうわけか魔宝玉ドロップしないんだって。経験値もダメなんじゃないかな」

「既に出たアイデアだったのか」

「飼育実験自体を破棄するみたいなこと言ってた」


 そーいやあの泣言地蔵はどこで捕まえてきたやつだったんだろ?

 発生させたやつなのかな?

 帝国すごい。


「昨日のウルリヒさんとこの領地北の東端部さ。ずっと人形系が出続けるなら儲けられるけど、そうとも限らんじゃん?」

「環境が変わることもあり得るのか」

「例の世界樹折っちゃったケースだと、人形系パラダイスだったのは一〇日間くらいだったんだ」

「ふうん、出現条件が難しいのかな」


 あの時は挿した世界樹の枝が魔力を吸い、急激に成長したという環境の変化があったけれども。


「ところで今日は何の用だったかな? ルーネロッテ様は剣術道場に出かけているが」

「うっかり元公爵ん家だよ。何でもラグランドに問題ありだそうで」

「おいおい、穏やかじゃないね」

「大したことじゃないんだ。ずっとオードリーが帝都にいるじゃん? 王女を人質に取られているんじゃないかっていう思いがあるらしいの。ラグランド総督ジェロンさんから、ちょっと雰囲気がよくないっていう報告が入ったんだって。だからオードリー連れてラグランドへ御機嫌伺いに行ってくる」

「やっぱり君の行動は世界平和のためなんだなあ」

「そこは実に聖女っぽいって続けてくれないと」

「聖女っぽいぬよ?」

「よしよし、ヴィルはいい子だね。ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 ヴィルをいい声で鳴かせて近衛兵詰め所にとうちゃーく。

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