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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第2319話:欲張り過ぎなんじゃないか

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『今日は帝国東方領で魔物退治だったか?』

「うん。正しくはまだ帝国領じゃないところの魔物退治して、公爵ウルリヒさんの領地に組み入れるっていうお仕事」

『楽しんできたんだろう?』

「まあ。でも思ったよりは大変だったな」

『ん? 先方の魔物退治要員に冒険者の戦い方を教えてやる、みたいなニュアンスじゃなかったかい?』


 それがな?


「あたしも皆のお昼御飯用のお肉を確保すりゃいいやくらいのつもりだったんだ。ところが領兵さん達が皆悲壮な顔してんの」

『魔物の脅威でか?』

「違くて。未所属領域を公爵領に組み入れるのは、キールっていう港町を帝国直轄領にするのとバーターだって話を以前したじゃん?」

『覚えてる。これは跳躍話法なのか撹乱話法なのか?』


 どっちかというと撹乱話法かな。

 撹乱の意図はないけど。


「で、キールの引き渡し手続きが終わったから、今日魔物退治の運びとなりました。ちゃかちゃーん」

『ここまで問題なし』

「ところが領兵の数って、領地の面積と人口で厳密に定められてるんだそーな」

『まあ兵士の数を制限しておかないと乱の元だしな。領兵で対処できない事態が起きれば国軍の派遣を要請するんだろう』

「帝国ってちゃんとしてるよねえ」


 戸籍すらないドーラとはえらい違いだ。

 見習うべきところが多いけど、軍に関してはな?

 戸籍についてはいずれ検討すべきだろうけど、このまま税金なしでいくなら戸籍もいらないよーな。


『ドーラに比べればな。ははあ、港町を手放した分、かなりの面積を公爵領に編入しないと、クビになる領兵が出てしまうのか』

「ピンポーン! サイナスさん正解!」

『クビがかかると領兵も必死になるだろうなあ』

「魔物退治も慣れてないだろうから余計にね」

『港町を引き渡す代わりに未所属領域を領地化するというのは、ユーラシアのアイデアだったんだろう?』

「そこ気付かなくてもよくない?」

『君の引き起こした災厄じゃないか』

「だから気付かなくてもいいとゆーのに」


 乙女のウィークポイントを刺激するな。

 まったくえっちなやつめ。


『で、どうなった?』

「ウルリヒさんったら完全にお祭り仕立てでさ。村人大勢とお昼御飯はお肉フェスティバルなわけよ。お肉だからカーニバルかな? すげえ楽しかった」

『そうでなくて』

「味の方だったか。コーナーターパンっていうウマみたいな魔物の肉が意外なほど美味しかったな。アールファングはコブタマンに肉質が似てるって言うけど、雄は臭みがあるんだよね。飼育するんでも注意が必要な気がする」

『そうでもなくて』


 どうだったろ?


『責任は取ってきたんだろうな?』

「何の責任だ。あたしは提案しただけだとゆーのに。決めたのはウルリヒさんだわ」

『最終決定者に責任があるという理屈か』

「その理屈は多分世界中どこへ行っても通用するんだぞ?」


 という責任逃れ。

 違うとゆーのに。

 あたしの責任じゃないわ。


「とまあ村人はお肉祭りなんだけど、放っとくと領兵の一割がクビになっちゃうらしくて」

『一割もか。えらいことだな』

「結構広い面積を制圧して、領地に組み入れました。クビになる領兵は一人もいなくてすみそうです。やったね!」

『どうやったんだ?』

「あたしの得意な力技だね。領兵と村人何千人かで柵を持って追い立てるじゃん? そーすると魔物やっつけるのがうちの子達とニッチモサッチモとルーネしかいなくても、魔物密度が上がるからバサッとイケるんだよね」


 以前聖火教の礼拝堂近くの魔物狩りをした時のやり方を、規模大きくしたような感じ。

 平べったい土地なら有効なやり方のような気がする。


「肉食魔獣みたいな危険な魔物がいないからできる方法ではあるね」

『お待ちかねの面白話だが』

「えっ? 待ちかねてたの? エンタメ思考だね」


 イシュトバーンさんみたいなフリだった。


「二隊に分けたんだ。向こうの隊はニッチモサッチモとルーネとヴィル。四人で『薙ぎ払い』撃ってれば人形系の魔物以外には苦戦しないという腹づもりだった」

『困ればヴィルで連絡してくるだろうということか』

「まあそう』

『何が起きたんだ?』

「向こうの隊が結構な数のゴブリンの群れに当たっちゃってさ。ゴブリン弱いけど小ズルいんだよね。ニッチモサッチモが罠に引っかかったって」


 ゴブリンに引っかかったのがあたしがいた時でよかった。

 何も知らんで後ろ盾もない時にニッチモサッチモがゴブリンと初めて遭ったんじゃ、かなりの苦戦を強いられたに違いない。

 経験は力なり。


『かなり大変なんじゃないか?』

「大変ではないな。ルーネとヴィルが冷静に立ち回って、空から『薙ぎ払い』を連発してゴブリンを追って、巣穴まで敗走させた」

『巣穴か。逃げ込まれると厄介だな』

「そこでルーネはあたし達のところへ連絡してきたんだ。巣穴に複数の出口があるからチェックして巣の広がりを推定して、ダンテの極大魔法で吹っ飛ばしました。ちーん」

『最後まで力技だなあ』


 まだ最後じゃないんだけどね。


「ルーネは不満だったみたいなんだよね。あたしならゴブリンをやっつけなくても口八丁で何とかしたんじゃないかとか、ゴブリンを巣穴に追い込んでから何もできなかったとか」

『欲張り過ぎなんじゃないか? というか口八丁で何とかするなんて、君でも考えなかったろう?』

「状況次第ではあるけど、ムリだったと思う。人間側は占領して領地化したい、ゴブリンは占領されたくないって関係じゃん?」

『うむ。唯一ゴブリンと交渉できるだろうユーラシアがムリだと言うならムリだ』


 あたしは実際に会ってないからどんなゴブリンだかわからん。

 けど、いきなり総力戦仕掛けてきたみたいだからなー。

 聞く耳持たないやつはさすがに説得できない。

 ライオンと同じ。


「あと人形系の魔物だけがいる面白い地区があったんだ。魔物が湧くとこ初めて見た」

『ふうん? 魔力濃度の関係かい?』

「多分ね。詳しいことは宮廷魔道士かなんかに調べてもらわないとわかんないな」


 今日はそんなとこか。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はラグランド。

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