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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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2312/2453

第2312話:戦闘メンバーを二つに分ける

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルクララルーネをぎゅっとする。

 いい子達だね。

 ついて来たサボリ君が生温かい目で見とるわ。

 カルテンブルンナー公爵家領の北側、未所属領域との境の柵のところに転移して来た。

 が?


「ユーラシア君、待ってたぞ」

「ウルリヒさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ルーネロッテ嬢と近衛兵君も来てくれたか。歓迎する」

「メッチャ人多いね?」


 何千人もいるんじゃないの?

 近くの村人総動員っぽい。

 領兵も必要最小限を残してそれ以外全部が来てるようだ。

 魔物退治をレクチャーするだけのつもりだったのに、思ったより大きなイベントになる気配だぞ?


「祭りみたいなものだ。ユーラシア君がいる今日、魔物は怖くない、美味いものだという意識を植えつけておかねばならん」

「そーゆー意図があったのか。村人盛り上がってるもんねえ。全員に行き渡るようにお肉を確保するの、案外大変かも」

「ハハッ、案外か」

「草食魔獣が多いから十分可能だね」

「住民達には、タダでいくらでも肉を食えるチャンスだ、こぞって参加してくれと声をかけてあるのだ」

「ウルリヒさんは人の動かし方をわかってるなあ」


 あたしは張り切って草食魔獣を狩ればいいとゆーことだ。

 解体・精肉・調理要員はいくらでもいると思っていいな。

 お昼が楽しみだわ。


「ところで兵隊さん達の表情はえらく真剣だね。どーしたん?」


 とゆーか悲壮に近い。

 領兵はある程度の対魔物訓練を受けているはずだが、やはり大規模な魔物退治ともなると経験がないからか。

 魔物退治はあたしとニッチモサッチモが担当するから、領兵は村人が魔物に襲われないように見といてくれればいいよ。

 もっとも草食魔獣メインなら、これだけ人がいれば襲ってくることはないと思うけど。


「真剣にもなるだろう。職がかかってるからな」

「どゆこと?」


 今日はあたしがこうやって魔物退治するんですよのお手本を見せるくらいのつもりでいたんだが。

 何故に職がかかる?

 ウルリヒさんが説明してくれる。


「領兵の数の上限は、その領の人口や面積で厳密に決められている」

「前に聞いたわ」

「港町キールが当家の領地ではなくなったから、このままだと領兵を一割ほど解雇しなければならなくなる」

「あれ? 未所属地域の編入・管理要員配置許可が下りるって話じゃなかったっけ?」

「それはあくまで臨時措置なんだ」


 つまりこのままだと、数ヶ月後には領兵を解雇しなくちゃならなくなる。

 あたしもしょっちゅう来るのは面倒だから、今日中に何とかしろってことだな。

 了解。

 ウルリヒさんが地図を取り出す。


「目の前の平原を全てと、この東端部まで領地に繰り入れることができれば解雇はしなくてもすむ」

「かなり広いな」

「ユーラシアさん、どうします?」


 解雇者なんて出したくない。

 どーすべ?


「……ルーネは『薙ぎ払い』と『煙玉』は買ったんだっけ?」

「はい。バッチリです」

「ニッチモサッチモと領兵の小隊長さんクラスの人集めてくれる?」


          ◇


「非常事態です。急いで土地を確保せねばなりません」


 神妙な顔の領兵達とニッチモサッチモ。

 領兵小隊長の一人が発言する。


「戦闘員全員で手分けして魔物を倒していくしかないのではないか?」

「いや、魔物はうちのパーティーとニッチモサッチモとルーネで全て倒すつもりでいまーす。領兵さん達は村人を指揮して、柵を押し上げてくれる? 村人に魔物被害が及ばないように、一応注意してね」

「少人数で魔物を倒しきるのはムリだろう?」

「魔物を倒し慣れてない人に任せるのはもっとムリだわ。魔物退治だけに専念させてもらえば、さっきのメンバーで目標領域の魔物を全て倒すもしくは追い出すことは可能。魔物の亡骸の処理と運搬と調理はよろしくお願いしまーす」

「もちろん構わないが」

「「ちょっと待ってくれ!」」


 ニッチモサッチモだ。

 何だろ?


「俺達も魔物を倒したことなんてねえ!」

「不可能だ!」

「自信持て。あんた達は魔物を倒すためのレベルと装備とスキルを持っている。ないのは経験だけだ。作戦説明するぞー」


 先ほどのウルリヒさんの地図を広げる。


「大勢で柵を持って移動していれば、草食魔獣ならそう襲ってきたりはしません。もし魔物がパニック起こして向かってきた場合は、領兵さん達で応戦してね」

「「「「了解だ」」」」

「戦闘メンバーを二つに分けます。ニッチモサッチモとルーネのパーティーにヴィルをつけます。この辺で一番強い魔物はアールファングだそうなので、その程度なら四人で『薙ぎ払い』撃ってれば勝てます」

「御主人。わっちは『薙ぎ払い』を撃てないぬよ?」

「これ装備してね」

「はいだぬ!」


 『薙ぎ払い』が付属している『サイドワインダー』の他、数枚のパワーカードを渡す。


「人形系の魔物が出た時以外は『薙ぎ払い』撃ってりゃオーケーです。人形系が出たらルーネに任せてもいいけど、はい」

「スキルスクロール?」

「人形系魔物にダメージを与えることのできるバトルスキル『ビートドール』のスクロールだよ。習得しといてね」


 これでニッチモサッチモも人形系を倒せる。

 時間さえあれば勝手に強くなってくだろ。


「うちのパーティーは真っ直ぐ北進して、モガム川まで確保することを目標としまーす。ルーネ隊は北西に魔物を追う感じで進んでね。東端部はあとだ。まず平原を征服するのだ!」

「「「はい!」」」「はいだぬ!」

「不意打ちさえ食らわなければ問題ないと思うけど、物事何があるかわからん。あんた達は飛べるし、ルーネは『煙玉』でパーティーを逃がすこともできる。不測の事態が起こったら、まず引いて態勢を整えなさい。逃げちゃってもいいからね」

「「「はい!」」」「はいだぬ!」

「ヴィルは困ったことが起きたらあたし達を呼びなさい」

「わかったぬ!」


 全員上級冒険者級のレベルは持っている。

 よっぽどヘマしたってやられることはないはずだ。

 甘やかし過ぎのような気もするが、心配なものは心配なのだ。

 まあルーネとレベルカンストしているヴィルがいる。

 少々ニッチモサッチモが調子に乗っても大丈夫だろ。


「よし、解散! ただちに作戦行動を開始する。昼食時に会おう」

「「「「「「「おう!」」」」」」」「おうだぬ!」

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